海外ETF投資の配当金と税金(その2)
今回はこの前の続きで、海外口座を通してETF等を購入した場合の配当金についての税金取り扱いを説明しようと思います。
海外口座を通してETF等を購入した場合に、国内証券会社の場合と大きく異なるのは、海外証券会社は日本国のために配当金の税金を源泉徴収してくれないことです。したがって、配当金収入がある場合は原則として確定申告により税金支払いを行う必要があります。
ここで、例外規定から先に触れておきます。サラリーマン等、所属会社が源泉徴収と年末調整をしてくれる立場におられる方は、このような副収入の合計が年間20万円以下の場合は、その副収入を申告する必要はありません。したがって以下は、この例外規定に該当しない方にのみ関係する話となります。
海外ETF等の配当金を申告する必要のある方は、これを配当所得として申告します。この際に例えば信用取引の支払金利といった配当金を得るための必要経費等を相殺することができます。前回ご説明しました配当金受け取りの際にUSで支払う非居住者の源泉課税額は、外国税額控除として支払税金額から控除することができます。
国内証券会社を通した場合と違って、源泉課税(10%)で課税関係を終わらせることができないので、かなりまとまった投資額で海外口座を利用していて所得が多く税率水準が高い場合は、国内証券会社を通すよりも課税取り扱いが不利になるものと思います。
この点だけ考えれば、国内証券会社で買える海外ETF資産は国内証券会社を通して購入する方が一般に有利なケースが多いと言えるかもしれません。他にも、購入手数料や為替手数料など、他の要素もあるので一概に有利不利を決めることはできないかもしれませんが。
このような要素があるので、海外証券会社を通した投資の場合は、配当の他にも多額のキャピタルゲインディストリビューションが出たりするオープンエンドやクローズドエンドの投資信託よりもETFの方が一般に税効果は高い(無駄な税金支払いが極力避けられる)ものと思います。逆に言うと、海外証券口座での投資では、税効果の不利を補って余りあるほどのアクティブαを稼げる見込みがなければ、ETFでなく投資信託を選ぶことのメリットはなかなか見出せないものと思います。
上記については、下記のリンクも参考になると思います。(残念ながら英語のサイトですが、言わんとするところは中ほどの表だけ見ても十分把握できると思います。)
http://finance.yahoo.com/etf/education/06
確定申告自体は慣れてしまうと以外と簡単に思えてくるものなのですが、経験がないとかなり大きなハードルに感じてしまうかもしれません。しかしながら、現状では配当金で確定申告をかわしても、資産の売買で確定申告の必要性が生じうる申告制度になってしまっています。またUS証券口座開設等によって広がる投資のキャパシティは、今まで紹介しました通り非常に魅力的です。ぜひ、このような点に怯まずに、多くの方が海外投資の世界に踏み出して欲しいと思います。
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コメント
VMAXさん、こんにちは。
私も昨年より、海外口座(IB,Firstrade等)を利用して海外ETF投資を本格的に始めました。
そこで今回、昨年のETFからの配当金を確定申告しようと考えています。
この際に税務署に提出する(計算に使用する)書類(IB,Firstradeのステートメント?)は何を使ったらいいでしょうか?
もし、よろしかったら毎年VMAXさんがやられている方法を教えていただけると助かります。
よろしく、お願いします。
投稿: うー | 2008年1月18日 (金) 20時24分
うーさん、どうもです。
肩透かしになってしまうかもしれないのですが、私は簡単な明細書(証券会社別の年間配当金額内訳程度を示した書類)を作成、提出して、それだけで税務署を通ってしまっているんですよね。
IB、firstradeともに、インターネットの画面上で確認できる配当金額を用いて、申告額は計算しています。
当然、もっと詳しい計算明細書等も作れますし、そのまた元になる各証券会社の配当記録の画面コピーやペーパーなどのソース情報も、税務署に言われたら提出するつもりでいるのですが、私自身は一度も、それらの提出を税務署より要求されたことがありません。
譲渡所得の場合は、申告書上も明確に添付書類として明細を提出するように書いてあるので、そういった記述に従ってより詳しい明細を作成、提出するようにはしているのですが。
うーさんの状況、税務署で通じる話かどうか定かではないので、参考程度にしていただいて、不安であれば管轄の税務署に聞くのが一番かと思います。
それでは、ご参考になりましたら幸いです。
投稿: VMax | 2008年1月18日 (金) 21時34分
ご存知でしたらご教授お願いします。
外国株式の配当でも、1銘柄年間10万円以下の小額配当なら申告不要というのは適用されるのでしょうか?その場合でも、住民税は必ず申告必要なのでしょうか?
投稿: ハルウラヂミール | 2008年1月27日 (日) 16時58分
ハルウラヂミールさん、
ご質問の件ですが、日本の証券会社を通じて保有している外国株式か、そうでないかが分かれ目になると思います。
日本の証券会社において外国株式を保有していれば、10%の源泉徴収がなされているはずで、それのみで課税関係を終わらせることができると思います。
外国の証券会社を通じて外国株式を保有して、証券会社源泉徴収により日本国に税金が渡っていない場合は、原則として総合課税の配当所得として申告が必要だと思います。(例外として年間20万円までの副収入の場合の申告不要の取扱があります。当エントリーの本文をご参照ください。)
ちなみに、10%の源泉徴収率のうち、7%が所得税、3%が住民税だったはずです。源泉徴収されていれば、ご質問の場合は、所得税、住民税共に特に何もしなくても良く、逆に源泉徴収されていなければ、所得税、住民税での考慮が必要になるはずです。
なお、上記について、当方は根拠法令まで把握、確認していません。納税取扱に不明がある場合は、左のサイドバーに載せている「外貨建て資産投資の所得・相続・贈与税」の書籍で確認するようにしています。
いまのところ、この本の記述や法令解釈で明らかに間違っている点等、当方は知りませんが、当方も当書籍も税制取扱に関して完全に責任を持つことは出来ないと思いますので、不安な場合は所轄税務署に確認する等、必要な手当てを講じていただきますよう、よろしくお願いいたします。
投稿: VMax | 2008年1月27日 (日) 17時36分
VMAXさん、こんにちは。
今年から国内口座の株、投信の売却損と配当金で損益通算が出来るようになったようです。
ところで国内口座の株、投信の売却損と海外口座(ETF等)の配当金との損益通算は出来るのでしょうか?
ご存知でしたら、教えて頂けると助かります。
宜しくお願いします。
投稿: うー | 2009年12月22日 (火) 14時30分
うーさん、こんにちは。
コメントどうもありがとうございます。
ご質問に関しては、自身の現実的ニーズに直面していないので調べておらず、明快なことはコメントしずらい手元状況です。
ちょっと無理そうな気はするのですが…
明確に答えられるようになることがあればまたコメントしようと思います。が、たぶん、ご覧になっている方に詳しい方がおられるような気がします。それにも期待しましょう。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: VMax | 2009年12月23日 (水) 10時27分
VMAXさん、こんにちは。
以前、株、投信の売却損と海外口座(ETF等)の配当金との損益通算について質問しました。
どうやら海外ETF(国内口座、海外口座)の配当金も、今年から申告分離課税が選択できるようです。(外国税額控除の併用も出来るようです)
従って、株、投信の売却損との損益通算も出来るようです。
また、損益通算をしない場合でも申告分離課税+外国税額控除により、去年(総合課税+外国税額控除)までより大幅に節税が可能となるようです。
これにより、配当金の税金に関しては国内口座、海外口座で差がなくなったようです。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
情報元ソースは
http://carlos.cocolog-nifty.com/today/2010/02/post-ef67.html
http://nakatatarou.blog110.fc2.com/blog-entry-585.html#comment289
投稿: うー | 2010年2月10日 (水) 22時52分
うーさん、コメント及び情報どうもありがとうございます。
当方これから、確定申告作業を行うつもりです。海外口座の配当については、もし申告分離課税区分で申告可能であれば、外国税額控除と合わせ、課税額を大幅に減らすことができると思いますので、この方面で当方も研究して見ようと思います。
その結果、上記の内容で申告して内容が確定する等、望ましい結果が得られれば、その内容を当ブログで報告できるのではと思っています。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: VMax | 2010年2月11日 (木) 12時45分
VMax本人のコメントです。
当方の確定申告が確定し、申告内容に基づく還付金が振り込みされました。注目の海外口座の配当について、申告分離課税区分での申告を行ってみましたが、それが申告どおりに受理されたことになります。
海外口座保有による投資を行っている方にはうれしい情報かと思いますので、コメントを残します。
なお、当事例はあくまでも当方の一例であって普遍的に通用する税務公式見解や結論ではないかもしれませんので、その旨を踏まえたご理解をいただければと思います。
投稿: VMax | 2010年4月17日 (土) 15時26分