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2007年3月15日 (木)

自信過剰と株式投資

行動ファイナンスが論じる、投資に際しての人間が持つ自信過剰に関する示唆は実はとても有益です。

これについてよく例に出されるのは、車の運転技術に関しての質問です。

「あなたは平均的な人よりも車の運転が上手だと思うか?」

という質問をすると、50%をはるかに超える人が、Yesと答えるそうです。すなわち、現実は平均以下の技術しかない多数の人が「自分は平均以上」と考えているわけです。

この、ある意味幸せというかおめでたい人間の一般的な性質は、人の人生をよりよいものにするのに多大な貢献をしているはずです。誰だって自分を有能な人間でかつ価値ある人間だと思いたいですし、たとえそれが一人よがりの身勝手な判断であっても、「自分は価値のない人間だ」と思いながら人生を過ごすよりも、ずっとハッピーでかつ前向きであり、またそのような前向きな解釈と態度により、結果的に高確率で価値ある人生を送れることに繋がるだろうからです。

しかしながら、投資の世界においては、この人間が種の保存等のために獲得してきた、例えばリスクをことさらに嫌悪する特質等といった、様々の利点がじゃまになります。この人間が生来もつ自信過剰の特質も、おそらく人間の種の繁栄に多大な貢献をしてきた特質であろうと思いますが、投資に際してはリターンをことさらに減らす原因となり得ます。

投資のプロであるファンドマネージャーが、長期的にことごとくベンチマークに敗れていっている現実がありながら、自分の銘柄選択や売買タイミングの直感的な判断等によりベンチマークに勝つことができると思うのも、ある意味この自信過剰の一種であると思います。

またFXで毎月100%や50%のリターンが出せるかもしれないと考えて無駄にお金を無くすのも、リスク無しに毎年10%のリターンが得られるという投資話にひっかかるのも、自分だけは大丈夫、自分だけはだまされないといった自信過剰のなせるわざかもしれません。

ここで、投資の神様と祭り上げられるほどの世界的に優れたリターンを稼ぎだした人たちが、年間どれほどのリターンをはじき出してきたかご紹介しますと、分野はそれぞれ異なれども、実はそのリターン水準は年20%~30%程度であることが多いのです。

これは通常の株式投資の分野である、ピーター・リンチ、ウォーレン・バフェットもそうですし、ジョージ・ソロスをはじめとする、ヘッジファンドの伝説を支える神様たちのパフォーマンスもだいたいこの水準です。

単純な算数ができる人ならば、あるいはエクセルが使える人ならば、年利20%から30%で何十年も回すことができたら、実際どんな資産が構築できるかはすぐに計算できます。

はっきりいって1人で使いきることはちょっと難しいほどの資産が構築できてしまいます。だから、ウォーレン・バフェットは伝説の人なわけです。しかしながら、実は、株式自体が過去10%といったオーダーの年率リターンを示すビークルなのですから、実際は世界一の投資の神様でさえ、ベンチマークプラス10%から20%以下でしか資産を回せないわけです。

この状況で、例えばFXで月利10%から20%のリターンを上げ続けようとすることは、おそらく通常の人にとっては不可能への挑戦に近いものになります。

投資の世界で勝利するには、こんなホームランは実際、必要ないのです。株式等の長期的に無リスク超過リターンの見込めるビークルに長期投資するだけで十分すぎる資産が構築できることを、過去の歴史は示しています。

それでも多くの人は、早期に破格の成果を得ることを目指して、複利の効果が得られる人生の時間を無駄に費やします。

これは、私自身の自戒でもあります。間違いなく、投資を始めた時点でこの知識が腑に落ちていれば、とっくの昔にフィナンシャルフリーダムを達成できていたはずです。

これを読んでいただいた方の幾人かでも、このような投資に関する回り道を回避してくれたら、私にとってこれ以上の喜びはありません。

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