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2007年3月27日 (火)

ドルコスト平均法について

いわずと知れたドルコスト平均法について、これを国際分散投資で用いる場合の私見について、今回は触れて見ようと思います。

ここで、ドルコスト平均法とは、通常、株式や投資信託等の資産を毎月やその他定期的な時間間隔で一定金額ずつ買っていく投資方法で、このようにすると上下変動の激しいリスク資産について、一株、一口あたりの平均購入金額を低く抑え、もってリターンを高めることのできる可能性のある投資方法です。

しかしながら、すべてのケースで平均購入金額を低く抑えることが出来るわけでは当然なく、その株式や投資信託が一本調子で上がり続ける場合には、投資のタイミングが遅れるため、リターンもかえって小さくなってしまうというデメリットがあります。

したがって、ドルコスト平均法が有効な資産の動きは、

長い間底練りをする資産

ボラティリティが高く、しかも往来相場を示す資産

であって、逆にドルコスト平均法が裏目に出るケースは

一本調子に資産があがり続ける場合

になります。

問題なのは、「将来の資産の動きは、未来を占う水晶玉を持たない一般の人にとって読みきることは難しく、そのような人はドルコスト平均法は裏目に出てしまう場合があり、また逆に将来の動きが読みきれてドルコスト平均法のデメリットが回避できる人はそもそも、ドルコスト平均法といった投資法は必要ない」という、ある意味での自己矛盾が存在しているということです。

また、例えば、世界株式が、概念的な無リスク金利より+3~5%程度の無リスク資産超過収益率を持つものと仮定し、そして上下対称の10%程度の年率ボラティリティがあると想定して見ます。

すると、今1,000万円の資産があって、これを毎年100万円ずつドルコスト平均法で投資すると、最初に1,000万円全額を一時に投資するのと比べると、明らかに投資リターンの期待値は下がってしまいます。1年後に投資される100万円は期待値として1年間の平均収益率を失い、2年後に投資される100万円は期待値として2年間の平均収益率を失います。

ここで、10%のボラティリティの存在があるではないかという指摘があるかもしれませんが、ボラティリティは上下対称でぶれる可能性がある特性を持っていますので、平均や期待値を求める場合は上下の可能性が相殺してその影響が消えることになります。

すなわち、正のリターン期待値を持つ資産に対し、ドルコスト平均法を用いて投資時期を全体的に遅らせると、確実にリターン期待値は減少します。

では、なぜドルコスト平均法は非常にポピュラーであって、一般的に支持されている投資法なのでしょう?

1つには、もともと給与生活者等の投資を想定して、毎月給与のうち一定額をドルコスト平均法で投資するといった事例を想定しているものと思われます。もともと一時に投資できる資金がなければ、遺失期待利益額自体も存在しないわけで、そのデメリットもそもそも存在しないわけです。

では、まとまった資金があるケースで、なぜドルコスト平均法での投資が選ばれたりするのでしょう?これは私見ですが、行動ファイナンスが指摘する「後悔回避」と呼ばれる人間の性質が色濃く影響を与えているものと考えます。すなわち、投資可能額全額を一時に投資して、最大期待リターンを得られるポジションを得ることのメリットよりも、その一時投資の直後に市場が急落して、「ああ、この急落後に資産が買えていたら・・・」と後で後悔するのが嫌だという発想により、このような好ましくないシナリオで後悔するような行動をあらかじめ避けようとする人間の性質が投資法の選択に影響を与えているわけです。

これも行動ファイナンスが指摘するポイントですが、人間は利益の好ましい影響よりも、同額の損失の好ましくない影響の方が2倍大きく感じるらしいことが指摘されています。このような人間の感じ方が、期待リターンを最大にするよりも、期待リターンをわざわざ下げても損失ケースでより後悔しない選択を選びがちにさせているものと思われます。

なので、このような人間心理の罠に陥って、よくよく考えてみると意義が感じられないドルコスト平均法投資の用い方をしていないかを考えて見るのも、場合によっては有意義かもしれません。

ちなみに、私は投資用に割り当てた資産はいつもその瞬間に全額投資しています。国際分散投資の場合、正直言って、急落を待っていたりすると、最悪半年一年と投資できず、10%のオーダーのリターンを取り逃したりしますので。期待リターンが高く、分散が効いていてリスクの小さい、現代投資理論に沿ったビークルに投資する場合ほど、一般にドルコスト平均法による投資の意義は小さくなっていくのかもしれません。

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