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2007年3月21日 (水)

勝率と期待値

今回は趣向を変えて、確率的、数学的なお話です。

ここに、丁半2分の1ずつの確率の賭けがあります。この賭けに勝ったら掛け金が2倍になり、負ければ掛け金を失うものとします。

この賭け事に、1度負けるごとに投資額を2倍にしていく方法を取れば、絶対に負けないという主張する人がいます。

確かに、

一回目で勝ち⇒1を賭けて2を手にする(2-1=+1)

二回目で勝ち⇒1を賭けて1を失い、2を賭けて4を得る(4-2-1=+1)

三回目で勝ち⇒1を賭けて1を失い、2を賭けて2を失い、4を賭けて8を得る(8-4-2-1=+1)

四回目で勝ち⇒1を賭けて1を失い、2を賭けて2を失い、4を賭けて4を失い、8を賭けて16を得る(16-8-4-2-1=+1)

・・・疲れてきましたのでこの辺で止めておきますが、このような賭け方をすると、いつかは必ず勝ちが舞い込むはずで、そのときは必ず掛け金合計より+1だけ多いリターンを得ることができます。

はて、そもそも丁半2分の1ずつのまさにゼロサムの賭け事ではなかったのでしょうか?なぜそのような賭け事に必勝の策が存在するのでしょうか?

実はこの賭け方は必勝法にはなっていません。例えば最初の掛け金が1万円だとすると、仮に10回負けたとすると、その次の掛け金は1024万円です。

20回連続負けたとするとその次の掛け金は、104億8576万円です。

だれもが資金量に限りがあり、負け続けたときに資金が尽きて資産のすべてを失い負ける確率が、非常に小さい確率ながら存在するのです。

すなわち、

(資金が尽きる前に勝ちが来る確率)×(+1)+(初めて勝ちが来る前に資金が尽きる確率)×(-資金が尽きるまでの総負け額)=0

という等式が成り立っており、無限に資金があるわけではないすべての人にとって、やはりこの賭け方でも所詮、ゼロサムゲームはゼロサムゲームなのです。

でも、この賭け方によって、賭けの性質にひとつ大きな変化が見られます。それは、資金が尽きて破産する事態にならない限り、必ず勝てるという形に賭けの形が変化しているところです。すなわち、最初の勝ちが来るまでを一回の賭けとして見ると、勝率がとてつもなく高くなっています。

勝率がとてつもなく高いけれども、賭けによる勝ち金額が、負けのときの負け金額よりもとてつもなく低いので、期待リターンを計算するとその期待値はゼロとなり、勝ち負けの帳尻が合ってしまっていて賭ける意味のない賭け事になっています。

こうやって例を挙げて示すとその賭け方の無意味さは明らかで、議論の余地もないものと思われますが、実際、人間は結構この心理的な罠にはまってしまう傾向にあります。

まず、本屋に行って株式や投資関係の棚に行くと、「株式投資でXX勝X敗」といったタイトルが目に付きます。人が期待値よりも勝率に反応する心理を知り尽くしたタイトルです。

例えばシステムトレードをやられる方はよくご存知の通り、勝率を高めようとすると得てして勝ちの際の利益額が小さくなり、システム全体として儲かりにくいシステムになりがちです。トレンドフォローのシステムでは実際、勝率は30~40%程度であったりすることが多く、勝率をわざわざ下げても、勝ちの際の利益額が負けの際の損失額を大きく上回るように設計するのが、システムトレードを設計する際の重要事項であったりします。

株式投資でも、「下手なナンピンすかんぴん」なんて言い回しがありますが、延々と倍々投資でナンピンをしていけば、その銘柄が倒産しない限り必ず勝てそうな気はします。でもそれは、その銘柄が万一倒産してしまったら、総資産がふっとんでしまう投資手法であることを意味しているのかもしれません。まさに最初に挙げたゼロサムゲームの賭け方に近い投資方法になっているように思います。

実は、このようなことは投資の初心者のみが行うものでもなく、有名なヘッジファンドであるロングタームキャピタルマネージメントが破綻した理由も結構似たようなものです。それは「どんな国の債券もデフォルトする可能性がある」ことを踏まえずに特定の2国間の国債の鞘を抜くポジションに集中投資しすぎてしまったという理由です。

行動ファイナンスの観点からは、人は負けるのがことのほか嫌いで、だから勝率に異常にこだわり、高い勝率と引き換えに確率的には低くても負けの際に致命的となる戦略をとってしまいがちです。

あなたは、高い勝率を得る代わりに大きな危険を背負ってはいませんか?

冷静にその期待値を計算することと、それでも発生の可能性がある負けに備えて必要な分散を心がけることが、賭け事に限らず投資においても必要なことだと思います。

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