小型高配当株というバリュー
「バリュー株優位」の題目で、以前、大型株に対する小型株優位、グロース株に対するバリュー株優位、低配当株に対する高配当株優位という一般論について紹介しました。
また、EFAに投資する代わりにEFVに投資することにより、米国を除く世界株式ポートフォリオをETFで構築し、かつバリュー株寄りに寄せることが可能なことをお示ししました。
今回は、世界株式ETFではなかなか難しかった小型バリューの組み合わせで、かつ高配当株の優位性を利用するETFをご紹介したいと思います。
もともと低配当株に対する高配当株の優位性も結構有名だと思いますので、このあたりのことを詳しく知りたい方はその類の書籍を当っていただければと思いますが、これもある意味グロース株に対するバリュー株優位の一形態だと思います。
ぱっと見では、力強く成長していき、配当余力は分配せず、会社内での設備投資や新規市場開拓等の更なる成長原資にしていくグロース株(成長株)の方が長期的にずっと高いパフォーマンスを示しそうなものですが、実際は全くの逆で、地味に高配当を長期的に続ける株式を配当金再投資で投資していったほうが、たとえ税金控除後の配当金再投資であっても、長期的にはずっとよいリターンを示す傾向にあるというのが一般論としての過去の歴史です。
これが、DRIP投資(配当金再投資による投資方法)が指向されるゆえんでもあります。
ここでも、「バリュー株優位」でも書きました、「世界中の学者が考えても誰もが納得できる理論で説明しきれない現象の論理的正解を求めるよりも、とりあえず過去の世界中の資本主義市場において継続的に起こり続けている現象は将来も起こり続ける蓋然性が高いと考え、その方向にポートフォリオをいくぶんでも傾けることによって超過リターンをねらってしまおう」というスタンスで、US証券口座で買えるETFを紹介したいと思います。
下記のリンクをご覧ください。
http://quicktake.morningstar.com/etfnet/Snapshot.aspx?Country=USA&Symbol=DLS&fdtab=snapshot
このDLSというETFに投資することにより、米国除く世界の小型かつ高配当株にベットすることができます。
このWisdomTreeという会社は比較的新しい会社で、ETFとしての歴史も短いので、過去のトラックレコードでこの投資アイディアの優位性の実現を確認することはなかなか難しいのですが、このETF自体がインデックス運用のETFで、そのインデックス自体のバックテストにより過去の優位性を確認することができます。
http://www.wisdomtreeindexes.com/index-details.asp?indexid=43#backtest
もちろん、実際のトラックレコードではなく単なるバックテストですので、その信頼度は多少劣りますが、市場で小型株優位、高配当株優位が持続する限り、将来もそれなりに似たような結果になることが期待できると思います。
最後に、この高配当株優位という現象に対する解釈の私見をとりあえず書いておきます。実際は大半の企業というのは、自らのビジネスの優位性のありかを知っているようで、実はよく知らないということが結構普通に起こっています。なので並の企業は、フリーキャッシュフローを、実際にはシナジーが発生せず、強みも発揮できない分野に進出することに利用し、高確率で多角化に失敗していくというのが、マーケティングやブランディングの世界でよく言及されたりする典型的現象です。また世界的投資家のウォーレン・バフェットもこれに類する現象を「横並びの強制力」というふうに呼んでおり、その中で、「競合先のやることは事業拡大でも買収でも何でも無批判に真似してしまう」愚かな一般企業の習性を指摘しています。
すなわち、「自らの強みを知り」、「その強みにフォーカスし続け」、「多額のフリーキャッシュフローを毎年生成し」、「その成果を強みの無い無意味な事業拡大等に費消せず、株主へ高配当で還元し続ける」一部の賢い企業を、高配当株投資は効果的に抽出することにつながっているのではと考えます。
まあ、このあたりの解釈は、たぶん学者でも誰もを納得させる理論で説明しきることはできないでしょうから、話し半分に聞いていただくこととして、過去の統計的な優位性の存在の方を重視、確認いただくのがよいと思います。
なお、個人的にWisdomTreeのETFはほんのちょっとしか保有しておらず、その理由は、
歴史が浅く、これから10年20年と継続して同じETFを良質な内容で安定的に提供し続けてくれるかどうかに確信があまりない。
日々の出来高が少なく、流動性が劣っているものが多い。
といったものです。
ですが、このようなブログを書いていることもあり、ここは人柱になってDLSを多少なりとも買ってみようかと思います。
また、この内容に類することで何か追加的に判明しましたら、この場で情報提供したいと思います。
(その後の人柱の結果は以下の通り後日まとめております。下のリンクをご覧ください。)
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コメント
こんにちは。wisdomtreeはジェレミーシーゲルがかかわっているので、彼に何かあったらその後どうなるかわからないような気がします。
投稿: 駒沢公園散歩人 | 2007年4月 7日 (土) 20時55分
駒沢公園散歩人さん、コメントありがとうございます。最近ブログを始められたようですね。私も参考にさせていただきます。
WisdomTreeについては、それぞれのETFがジュレミーシーゲルの個人芸で成り立っているわけではなく非常にロジカルな仕組みで成り立っていると理解していますので、私個人は彼の心配は全くしていません。
それぞれのETFが狙う市場のアノマリー的なものが市場でいつまで通用するのかといった心配の方が先に来るものと思います。
さらには、これらよりずっと心配なのが、WisdomTreeのETFを誰も買わず出来高がさらに細り、ついには上場廃止になってしまうことです。たぶん、これが一番現実的で将来あり得る不利益事項です。
WisdomTreeのETFに投資する時点で、個人的にはその最悪ケースも想定しています。(だからこそ、あまり手を出していないのですが)
まあ、それもまた経験です。そのような話題がありましたらまたこの場でその顛末を報告できると思います。
それでは、今後ともよろしくお願いします。
投稿: VMax | 2007年4月 7日 (土) 23時38分
VMAXさん、通りすがりのコメントに詳細なお返事ありがとうございました。なるほど、wisdomtreeの最大のリスクはETFの上場廃止ですか。ピンクシート銘柄のようですしね。それではこちらこそどうぞよろしくお願いいたします。
投稿: 駒沢公園散歩人 | 2007年4月 8日 (日) 04時24分