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2007年5月 6日 (日)

日本経済のリスク・プレミアム

GWの真っ最中ですが、やっとやっつけるべき仕事もだいたいひと段落し、ずっと積みあがっている本を読み始めています。

それで表題の本を読んだのですが、非常に興味深い内容が数多くあり、様々な学びの得られる良い本だと思いましたので、ご紹介したいと思います。

この本の中で、行動ファイナンスの先駆研究者の研究を紹介しており、それによると、想定運用期間が短い投資家ほど近視眼的な損失回避の傾向が見られること、それにより、そのような短期的投資行動を取る投資家ほど、投資資産に大きなリスクプレミアムを要求しがちであるという研究成果が書かれていました。

すなわち、測定方法にもよりますが、例えばアメリカで株式が安全資産に対し6%もの超過リターンがもたらされるのは、その投資家の多くが短期投資家であって、より多くのリスクプレミアムを要求するからという主張でした。

どのように測定するのか本書からだけでは不明ですが、実際のデータからもこの短期投資家ほど大きなリスクプレミアムを要求する現象が確認できるとのことで、その測定結果もグラフ等で示されていました。

6%のリスクプレミアム水準はちょうど1年保有の投資家のリスクプレミアム水準と同程度のようです。これを踏まえると、我々長期投資家の安全資産超過リターンは、圧倒的多くの1年程度の短期投資家のリスク回避性向によってもたらされていると考えて良いのかもしれません。

我々は世の主流派である短期投資家の方々に感謝すべきなのかもしれませんね。

この話で、もう1つ面白いポイントがあり、それは著書の中でエージェンシー問題と呼んでいる問題です。世の機関投資家の運用者は本来の受益者に雇われた代理人であって、3年から5年程度の短期間で判断され、結果が悪いとクビになりかねないため、運用目的からしたら本来なら長期投資ができてリスクが取れるのにもかかわらず、短期指向、リスク回避指向が強くなり、必要以上に債券その他の安全資産の比率が増えてしまう傾向にあるとのことです。これに限らず、代理人が介することにより本来の目的から外れていってしまうことを総称して、エージェンシー問題と呼ぶそうです。以前、これに類する話を当ブログでもちょっと書きましたね。

ここからは個人的意見ですが、こういったことを踏まえると、機関投資家の作るポートフォリオをそのまま無批判に真似ることにもちょっと問題がありそうです。

個人であれば、例えば、勤め人としての給与のうちの貯蓄可能部分が将来にわたって日本円のキャッシュインフローとして見込めること、現状の日本円金利では日本債券資産からのリターンは無視できるほど小さいこと等から、資産運用ポートフォリオ中に日本債券資産を持たないという判断も十分あり得るものと思います。

そもそも、伝統的な日本債券ファンドは通常、その殆どが日本国債で占められており、唯一存在する金利リスクによる変動は、超低金利の現在においては、資産下落の方向にしかほとんどその時価変動の動きが期待できません。すなわち、現状の日本債券にはポートフォリオのボラティリティを下げる役目しか期待できず、他資産の下落と日本債券資産の上昇による相殺といった分散効果を期待することは非常に難しい状況です。

このような状況では、ポートフォリオ構築の際にも、現状ではリターンがとてつもなく低く他資産との相殺効果も小さい日本債券を入れずに、ポートフォリオのボラティリティを下げる方策もやはり考えてみるべきでしょう。そういった意味で、証券会社のバランスファンドの設計なんかもなんだか芸が無いように見えます。

もともと唯一の正解の無い世界の話です。重要なのは、長期投資を指向しながら、一時的な急落で怖くなって安全資産に逃げ込んだりといった結果にならないよう、長期継続可能な水準にまでポートフォリオのリスクの水準を下げること、そのために分散投資のポートフォリオ設計を指向することだと思います。

このプロセスの中に、機関投資家の短期指向がゆえの偏向を混入させる必要はないものと思います。ポートフォリオ設計の際にも、個人ゆえの利点を最大限に生かすことができるはずです。

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