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2007年5月26日 (土)

タイミング投資をロードファンドでやる愚

私自身は、タイミング投資をやることは生涯無いと思いますが、その色気のある方に向け、ある種冷静な計算結果をお示しし、タイミング投資をする場合の明らかな注意事項を挙げたいと思います。

結論から申し上げますと、タイミング投資をロードファンドでやるのは可能な限り避けたほうがよく、それにハイウォーターマーク成功報酬が加わると、まさに自殺行為に近いと思われます。

では、実際の試算結果をお示しします。

対象市場の期待収益率(費用控除前):年10%

ロードファンドの購入手数料:3.15%、信託報酬:年2%、信託財産留保額:0.3%、ハイウォーターマーク成功報酬:20%、その他見えないコスト(カストディ費用その他):年1%

キャピタルゲインに対する税金:10%

以上の仮定のときに、対象市場が期待収益どおりのリターンを見せたとしたら、そのときの手取りリターンの結果は以下の通りになります。

(1年運用の場合)

((100-3.15)*(1+(0.10-0.02-0.01)*0.8)*(1-0.003)-100)*0.9=1.770101

(半年運用の場合)

((100-3.15)*(1+(0.10-0.02-0.01)/2*0.8)*(1-0.003)-100)=-0.77689

(3ヶ月運用の場合)

((100-3.15)*(1+(0.10-0.02-0.01)/4*0.8)*(1-0.003)-100)=-2.08872

すなわち、タイミング投資で3ヶ月勝負をし、その投資市場で期待リターンどおりの結果が得られたとすると、1回の勝負につき、2.08872%失うことになるわけです。

このようなタイミング投資を繰り返していくと、どんどん期待値に収束していきますから、平均的な人はこのような投資スタンスを取ると、毎年の運用成果は、

(100-2.08872*4)=91.64583%

の対年初資産残高になります。ざっくり毎年、1割弱の資産を失っていくわけです。

(例によって概算計算となっており、厳密には精緻な複利計算等を用いる必要があります。ただし、それにより物事の本質はほとんど変わりませんので、ここでは簡略計算を行っています。)

いや、自分は、平均的な人間より買いタイミングを図るに優れているので、投資資産の平均的なリターンよりも高いリターンが獲得できるはずだというふうに考える方もいるかもしれません。これが、オーバーコンフィデンスかどうかは神のみぞ知るというところですが、まあ、実際にそのような能力をもつ人が存在するとして、ベンチマークを負かすにはどれくらいの目利きが必要か、調べて見ました。

その結果は、

((100-3.15)*(1+(0.10*4-0.02-0.01)/4*0.8)*(1-0.003)-100)*0.9=3.334364

(100+3.334364*4)=113.3375%

という計算で、対象資産の期待リターン(10%)のおよそ4倍程度の期待リターンを示す(期待リターン年40%)機会をピンポイントで選択しつづける必要がありました。

まさにこれは神業です。そのような機会は5年や10年に1回とかそういったオーダーでしか起こらないと思いますので、しょっちゅうこのようなタイミング投資をしている人は、それだけで、不可能への挑戦をしていると言えると思います。

では、このタイミング投資をハイウォーターマーク費用のないノーロードファンドで行えば、どうでしょうか。明らかに、この不可能への挑戦のハードルは低くなるはずです。

((100-0.00)*(1+(0.10*2-0.02-0.01)/4*1.0)*(1-0.003)-100)*0.9=3.543525

(100+3.543525*4)=114.1741%

といった計算で、、対象資産の期待リターン(10%)のおよそ2倍程度の期待リターンを示す(期待リターン年20%)機会をピンポイントで選択しつづければ、ベンチマークに勝つことができます。

これでも普通は神業ですが、ハイウォーターマーク費用のあるロードファンドよりはずっとましです。

こういう、ある種冷酷な計算結果を知っていると、タイミング投資といった指向の投資行動はおのずと自重したくなります。

なるほど、賢く長期投資を行う人にタイミング投資で勝つのが難しいわけです。

では、戦地に赴く方々にご武運を。

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