エージェンシー問題
昔、「日本経済のリスクプレミアム」の本の紹介の際に、「エージェンシー問題」という用語が出てきました。代理人が介することにより本来の目的から外れていってしまうことを総称して、エージェンシー問題と呼ぶとのことでした。
この間、「勝者の思考」という本を読んでいたら、また別のエージェンシー問題について記述がありました。
世のアナリストは、今は企業の3ヶ月決算のスケジュールに合わせて、企業評価をしなければならないそうです。なので、必死に企業評価レポートを書き終えたら、すぐに次の3ヶ月決算がやってきて、首がまわらなくなるとのことです。
世のアナリストがこんな状況だと、企業の3ヶ月後が買いか売りかといった、非常に短期の評価しかしなくなるので、投資対象に対し、長期的な投資評価ができなくなってしまいます。また、本当に長期を見据えた会社の施策が、3ヶ月といった短期でなんの成果も見られないため、評価されずに見過ごされてしまうことが起こってしまう可能性が高まります。
米国では、このような四半期決算でもまだ足りずに、ハーフクウォーター(半四半期)決算の流れにあるようです。まさに自殺行為です。
これも、アナリストがプロであるからこそ、企業の四半期報告に対するアナリストとしてのアウトプットが求められ、アナリストの本来目的である、将来の投資成果向上のための買い/売りの長期評価が、かえって出来なくなってしまっている例だと思います。これもやはり、エージェンシー問題の一種だろうと思います。
プロがプロであるがゆえに、最大の投資成果を得る目的に逆行してしまうような例は他にもいろいろ考えられると思います。
何だか皮肉ですね。
個人は、こういったリターンに必ずしも結びつかない仕事に煩わされること無く、将来の長期的リターンに結びつくと思われることのみに集中できるメリットがあるわけです。プロのエージェンシー問題がゆえの偏向や短期的指向等にとらわれず、グローバルな投資機会を上手に捉えて行きたいものです。
今回ご紹介の本自体は、いい仕事をしていい人生を送るために必要なことという視点でまとめられた本ですが、思考を立体化することの必要性を説く章で、著者の経済ジャーナリストとしての経験に基づく、中国、インド、ロシアといったBRICsのインプレッションも事例として提示されていました。この新興国関連に興味がある方も、この本を読む価値があると思います。
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