懐かしい名前
懐かしい名前といっても、良い意味ではありません。
今日の日経新聞朝刊に、懐かしい名前が踊っていました。「日経平均リンク債」です。来週より、みずほインベスターズ証券が本格的に販売し始めるそうです。
記事から推測すると、これはデリバティブが組み込まれた債券で、一定以上の将来の日経平均の下落時に損失を蒙る可能性がある代わりに、通常より高めのクーポンが得られるしくみになっているようです。
商品内にいわゆる日経平均株価指数のプットオプションの売りの仕組みが存在し、そのポジションから得られるプレミアム収入が、超過金利の源泉となっています。
これだけではなく、最近、とある大手銀行のHP上でも懐かしい名前を見かけました。いわゆる「デュアルカレンシー債」です。クーポンと元本が別の通貨を基準に支払われる、デリバティブが内包された債券です。しかも、その商品は円安時(お客にとって好ましい方向への変動時)に早期償還される、まことにありがたくないペイオフの形になっています。こういった複数の不利な条項の見返りに、おそらくクーポン金利が上乗せされているのではないかと思います。
これらの商品や仕組預金にある意味共通しているポイントは、商品中にデリバティブを用いた、とてつもなく評価のしにくい不利益事項が混入されており、それと引き換えに、金利レートやクーポン水準といった、わかりやすく目につきやすい利益事項を作り出していることです。
すなわち、デリバティブの価値や不利益事項と利益事項のトレードオフがフェアかどうか判断できない、情報や知識弱者なお客をはめ込むための商品形になっています。
前にも書きましたが、実際、私の経験から言うと、デリバティブ内包金融商品で、そのデリバティブ機能の理論価格の1.5倍程度のコストが、お客にチャージされていることが非常に多かったのです。すなわち、オプション機能の不利益事項を許容することによるデメリット評価額の3分の2程度のメリットしか、利益事項からは得られないしくみになっていることが多いのです。言い換えると、還元率が67%程度といってもよいかもしれません。
パチンコではこの還元率は90%程度と言われています。宝くじの場合は50%とも言われます。
これが意味することは、一般個人が銀行や証券会社の商品内でデリバティブ取引を行うと、その商品内で還元率がおおよそ67%しかないばくちをすることになるということです。
宝くじやパチンコを繰り返す圧倒的に多くの人が、ほぼ確実にお金を失っていくように、還元率の悪い賭けをし続ければ、いずれその期待値に収束していく確率はどんどん高まっていきます。デリバティブ内包商品を繰り返し購入するお客も、その行為を繰り返せば繰り返すほど、デリバティブを含まない金融商品を利用している人よりも、パフォーマンスがどんどん劣ってしまう確率が1に限りなく近づいていきます。
金融商品の中には、情報弱者や知識弱者からお金をむしりとるための商品設計となっているものが多くあります。しかも、そのような商品は、その目的を完遂し続けるため、どんどん手口と仕組みが高度化されていきます。最近、上のような懐かしい名前が再度踊っているのは、このタイプの商売をする新しい金融機関(銀行、銀行系証券)が増えてきていることと、おそらく無縁ではありません。
このような金融機関につかまらないように、上のような知識や考え方をお役立てください。
また、以前に仕組預金について書いたブログも以下にリンクしておきます。ご参考としてください。
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