« グローバルな自国株式は国際分散投資を代替するか? | トップページ | 世界の株式市場拡大 »

2007年7月 7日 (土)

インデックス運用における銘柄入替とコバンザメ投資

インデックス運用に対する非難と言うか誹謗の1つに、インデックス投資は銘柄入れ替え時のコバンザメ投資の餌食になって損だから、インデックスファンドやETFに投資しないほうがよいという主張があります。

今日は、これについて多少書いて見ようと思います。

この手の話に対する個人的な意見は、「この主張も、かならずしも物事の本質を的確に捉えた主張ではないので、あまり真に受けないほうが良い。」というものです。

確かに、現象としてインデックスファンド等はインデックスの銘柄入れ替え時に、新規組み入れ銘柄を高値で買わされているように見えます。そして、その分だけコバンザメ投資家が潤っているようにも思えます。

でも、ちょっと待ってください。

最近、コバンザメ投資がうまくいかなくなっているらしいことが、あちこちから聞こえてきます。実際に、検証や分析をしたわけではありませんが、明らかにこのコバンザメ投資はうまくいかなくなる運命にあります。まずはそこから、お話したいと思います。

もし、銘柄入れ替えの情報が流れてから、その新規追加銘柄を買って儲かるなら、誰だってコバンザメ投資をしたいと思います。なので、コバンザメ投資が儲かるという話が広まれば、次からは銘柄入れ替えの情報が流れると、その瞬間に、その対象銘柄は吹き上がるようになります。状況がひどくなれば、情報を得てからでは株価が高くなりすぎてコバンザメ投資は全く儲からなくなります。なので、今度は銘柄入替情報が発表されるだろうタイミングを予測して、競馬の賭け方のように、採用される可能性が高いと見込まれる銘柄に分散して事前に買っておく行動に出る人が現れます。これで儲ける人も、同様の方法でフリーランチを目論む追随者の存在により、この方法でも高いリスクテイクなしには儲からないところまで行き着きます。フリーランチを望む人は多くとも、その望む人が多くいること自体によって、結果的にその機会ははかなく消えていく運命にあります。

では、フリーランチを狙うコバンザメ集団にとって無リスクで儲かる機会が消失した後でも、なおかつインデックス運用は、高値でこの新規採用銘柄を買わなくてはならない運命にあります。それはなぜでしょうか?

すなわち、コバンザメが得をしないのに、なぜインデックス投資が損をするのか?という命題です。

ここで、機関投資家の立場を考えて見ましょう。この人たちにとって、運用はお仕事であって、遊びではありません。ちょっとした遊び心でヘラクレス銘柄をポートに入れてみましょうというわけには、だいたいにおいていかないのです。通常は、厳格な投資に関する制限にがちがちに縛られていて、例えば2部市場に良い銘柄があるのだが、業務上、1部市場の銘柄しか買えないといった投資制限があるので全く手を出せないといったような状況があることが容易に想像できます。このとき、この2部銘柄が1部昇格を果たしたらどうでしょう。この運用者は、今まで買えなかった有望2部銘柄を、1部昇格後に晴れて買うことになるはずです。

すなわち、その銘柄は、会社の競合状況や金利状況その他の経営環境等に全く変化が無くても、1部上場したという事実のみで、新たな買い圧力を受けて、株価は上がりやすい状況になります。これは、いわゆるプレミアムの一種です。すなわち、1部上場銘柄は、1部上場銘柄であるという、ただそれだけの理由で、株価はそうでないときよりも高くなる可能性が高いのです。これを仮に上場・昇格プレミアムと呼んで見ることにします。

ここまで説明すると、もう結論は見えてきたと思います。

コバンザメ投資家が新規組み入れ銘柄でちっとも儲からなくなった後でも、インデックス投資がこの新規組み入れ銘柄を高く買わなければならない理由は、この上場・昇格プレミアムにあると思います。1部銘柄なら買うという存在が、このプレミアムを生み出すのです。

「1部上場銘柄だから買う」という新たな大規模な投資家群の中には、巨大資金の一部を日本に振り向ける外国人機関投資家も、もちろん含まれているはずです。インデックスファンドは、その「1部上場銘柄だから買う」という新たな一大勢力の一角でしかないのです。

実際、インデックスファンドではなくても、アクティブ投資の機関投資家も、この新規銘柄を買いたい場合は、この上場・昇格プレミアムを払って以前よりも高い価格で、この銘柄を買う必要が生じます。高値で買わなければならないのは、インデックスファンドだけではないのです。

「いや、しばらく待てば下がるだろうから、アクティブ運用であれば、そこまで待てば良いのだ。」と思う人がいるかもしれません。でも良く考えてください。「1部上場だから買う」という理由で買った、インデックスファンドをはじめとする投資家は、「1部上場でいる限りはその株を売る必要はない」のです。新たに、買い圧力により追加スプレッドを発生させた存在は、売り圧力をかける存在にはならないのです。待っても待っても、1部から降格、上場廃止等にならない限り、その発生したプレミアムが剥げるはずもありません。

なので、我々は普段自覚しませんが、1部上場銘柄を買う場合は、いつも1部上場銘柄プレミアムを支払っていると考えたほうがよいと思います。すなわち、インデックス投資家のみが新規採用銘柄を高く買う羽目になるというよりは、新規採用後に買う全ての投資家が、1部上場プレミアムの乗った株式価格でその後は売買のやり取りをする必要が生じると言ったほうが、真実に近いのではないかと思います。

このような構造は1部2部だけではなく、日経225採用非採用でも、全く同様な状況にあるはずです。

すなわち、上の「コバンザメが得をしないのに、なぜインデックス投資が損をするのか?」という命題の答えは、「コバンザメが得をしないのだから、インデックス投資も損はしない。ただ、新規採用銘柄は、その新たな血統書の存在によりその後、プレミアム付の高値で売買され続けるだけのこと。」ということになると思います。

このポイントに触れずに、プレミアムが乗る前の価格と比較して、あたかもインデックス投資家のみが高値でその銘柄を買わされるかのごとく錯覚させ、そして、その差額がコバンザメ投資家に搾取されているのでインデックス投資は不利だというふうに、市場に存在する力学を無視して、あたかも新規に生じたプレミアムスプレッドまでも、インデックス投資の損失幅であると錯覚させる論理に、私はとてつもない違和感を感じます。

このような論理を展開する人の中には、インデックスファンドやETFの足を引っ張ってやろうという輩もまざっているのではないかと思ってしまいます。

いずれにしろ、何であれ血統書つきは高いのです。だれもが、血統書付のぴかぴかの株は高値でしか買えないとすれば、そのスプレッドはインデックス投資が負担しなければならない損失などではありません。血統書付の品質保証が欲しい全ての投資家がその価値に見合った負担をする必要があるだけのことなのです。

識者が言うことだからと言って無条件に鵜呑みにしないほうがよいのではないかと、私は思います。

|

« グローバルな自国株式は国際分散投資を代替するか? | トップページ | 世界の株式市場拡大 »

コメント

 いつもながらのすっきりした論理説明に1行、1行、納得しながら読ませていただいています。

 世の中は最後に書かれているように、詳しい人の説明を丸呑みしようという風潮があり、また教科書が間違っていると思われるのに、検討もせずに教科書通りの説明しかしない風潮があるのはいかがなものかと思っています。

 そういう中で、主流の流れに身を任せず、十分に検討をされてから書かれている説明を見ると、すっきりした印象を受けるのは私だけではないかもしれません。

 最近、「疑う技術」
http://search.jword.jp/cns.dll?type=lk&fm=109&agent=9&partner=BIGLOBE&name=amazon&lang=euc&prop=1&bypass=3&dispconfig=2
と言う本を読んでみて、納得できない場合はいかに識者の言うことでも、また多数説でも丸呑みにすべきでないと、改めて感ずるところがありました。

 しかし、所詮初心者、説得力のある説明には完全に納得してしまうところがあり、ややもすると「アキレスと亀」の誤謬に気がつかない場合もありますが、そこは常に疑いの目で物事を見る習慣をつければ、やがては気がつくかもしれませんが。

 同じ説明でも説明を受ける対象者のレベルによって本当は違うが、わかりやすくするためには多少の不正確さは目をつぶろうというところもあるのは、本のように不特定多数に対する説明としてはやむを得ないのかな、と言う気もします。

 例えば山崎元氏の「投資バカにつける薬」も、まとまっていて面白いけど、「違うんじゃない」と思える部分もあります。でも、金融のことが初めての人にはそのような説明の方が無難かなというところもあるように感じますので、書いてあることが違うからと即、気色張るのもいかがなものかという気がしています。

 説明することを商売にしているだけに、相手を納得させる説明の難しさをどのように乗り越えておられるかの、説得技術には毎回、興味のあるところです。
 勿論、本論に興味があるのは至極当然のことでではありますが(笑)。

投稿: 浦島太郎 | 2007年7月 7日 (土) 17時46分

ほうほう
大証平均はすでにバブル後の高値を越してるらしいですね。
有名税みたいなものがあるんですね。

投稿: | 2007年7月 7日 (土) 18時30分

浦島さん、そして「」さん、コメントを残していただいてありがとうございます。

真剣に物事に取り組むと、専門家や識者の言っていることに、どうも納得できないことが多々出てきます。
やはり、そこでうやむやにせずに追求することで得られるものは大きいのではないかと思います。

権威ある意見に対して違和感を持ちながらも、偉い人や有名な人の言うことだからと、自分自身で考えないのもその人の自由ですが、それがもたらす結果に対して、権威も有名人も全く責任を取ってはくれません。

このブログも、権威や有名人の示すことが、必ずしも正しくないケースもあるかもしれないということに、多くの人が気づいていただくきっかけになれば良いと思います。

それでは、今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: VMax | 2007年7月 8日 (日) 18時19分

はじめまして、面白いテーマなのでコメントさせていただきます。

問題の本質はインデックス自体の下落にあるのだと考えています。たとえば日経平均の銘柄入替では新規採用銘柄だけでなく除外銘柄が出てきます。除外銘柄については除外の発表と同時にプレミアムがはがれ、これに連動してインデックスが下落します。入替日には、プレミアムなしの除外銘柄がプレミアム付きの新規銘柄に入れ替えられ、プレミアム付き銘柄のみで構成されたインデックスが連続性を持って再スタートします。このような過程では銘柄入替の発表ごとに除外銘柄のプレミアム分だけインデックスが下落していくことになります。このインデックスに連動させた運用は確実に損します。この損はコバンザメの餌食ではなく新規採用銘柄に先行投資していた投資家のものになります。
ただし銘柄入替もインデックスの質を維持するためのコストと考えると合理的なのかも知れません。なんだか日経平均はアクティブ運用みたいです。NT倍率に注目するのも面白いと思います。

投稿: 取れん怒信者 | 2007年7月14日 (土) 14時21分

取れん怒信者さん、はじめまして。

コメントありがとうございます。

この話題についてきれいにまとめていただいた感じですね。

個人的には、出口(除外銘柄)で起こることも、本質的に当エントリーで書いたことと同じになるのではないかと思います。

すなわち、フリーランチを求める群集の力で、除外される可能性のありそうな銘柄には正式発表前から売り圧力がかかり、株価は下がり気味となってしまい、もって安全にフリーランチを得ることが不可能なまでの事態にまで到達することが想定されます。(フリーランチ状態の消失)

なので、プレミアム喪失の憂き目にあわないためには、このフリーランチ獲得ゲームが始まる前から、可能性あり銘柄を外す必要があると思います。
そう考えると、例えば225であれば、225のうち、このゲームに巻き込まれそうに無い上位80%銘柄のみを投資対象とする等になってしまうのでは。
(今度は、日経225上位80%銘柄プレミアムがついてしまいますね。無限連鎖です。(笑))

こんなふうに考えていくと、結局は、225銘柄を対象とする市場参加者は、採用、廃止プロセスで結構確実にプレミアム分だけ損失し、その金額だけ市場に落としていくことになると思います。そして、それは採用、廃止のきざしもなにも見えないところから、買いと売りを執行していた、すばらしく先見の明のある人の超過利益となっていくのだと思います。

結局、血統書にお金を払わないですますのは難しいということですね。インデックス投資はこれだから不利だと考えるのはやっぱりおかしく、上位市場に生息する、インデックス投資家を含むすべての投資家は、結構公平に血統書に関する支払いをしており、全く持って妥当な状況にあるのではないかというのが、個人的意見です。

それでは、今後ともよろしくお願いします。

投稿: VMax | 2007年7月16日 (月) 10時03分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/202973/15666587

この記事へのトラックバック一覧です: インデックス運用における銘柄入替とコバンザメ投資:

« グローバルな自国株式は国際分散投資を代替するか? | トップページ | 世界の株式市場拡大 »