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2007年7月 9日 (月)

海外証券口座の為替リスク(その2)

以前の表題のエントリーに対して、ひいさんから以下のようなご質問をいただきました。

「海外投資における為替リスクがよくわかりません。自分で具体的な数字を当てはめて計算してみたりしたのですが、たとえば例題1の場合、なぜ円対中国元の為替リスクが存在し、円対ドルの為替リスクが存在しないのか、理解できないでいます。
もしよろしければ、具体的な数字で仕組みを説明していただけないでしょうか?」

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_8f8f.html

ということで、リクエストにお応えして、実際の数字で、このエントリーが示すことを表現して見ようと思います。

ただし、中国元のレートはちょっと個人的に把握していないので、以前のエントリー例1をちょっと変更して、以下の例1ダッシュを実際に数値で計算しようと思います。

1’.米国証券口座を開設し、円をドルに換えて送金。そのドル資金でドル建てのイギリス株式ETFを購入。この投資にドル円の為替リスクは存在する?

直近の関係する為替レートは以下の通りでした。

1USドル=123.31円

1イギリスポンド=247.89円

1イギリスポンド=2.010300USドル

ここで、3番目のドルポンド為替レートは1番目と2番目のレートからも算出できます。すなわち、

247.89/123.31=2.010299

となります。

まず、日本円で100万円をUSドルに換えて米国証券口座に送金します。

米国証券口座残高=100万円/123.31=8109.642ドル

このUSドルで、その時点で100の株価がついているイギリス株式のETFを買うこととします。すると81.09642株買えます。

ここで円USドル相場が変わるとします。1USドル=130円と大幅に円安になったものとします。もし、ここで円ポンド相場が変わらないとすると、為替レートは以下のようになります。

1USドル=130円

1イギリスポンド=247.89円

1イギリスポンド=1.906846USドル(=247.89/130)

イギリス株式市場が全く変化がないとすれば、ドル建てのイギリス株式ETFの価格は以下のように変化します。

以前のイギリス株式ETFの価格×(現在の1イギリスポンドのUSドル換算値)/(以前の1イギリスポンドのUSドル換算値)

=100×1.906846/2.010300

=94.8538

なので、USドル建ての米国証券口座資産は、イギリスETFの株価×株数で、

94.8538×81.09642=7692.304USドル

となります。最後に、このUSドル建て資産を円換算してみましょう。

7692.304USドル×130円=1,000,000円

ということで、当初の円投資金額の100万円となりました。

円ポンドレートとイギリス株式市場の変動がない限り、円ドル為替がどう変動しようとも、イギリス株ETFの円資産価値に変動がないことがこの例でわかります。

要は、円ポンドレートが変化ない状況で、円ドルレートが動いたということは、ドルポンドレートも動いたということです。上記の例では、円ポンドレートが動かないが、1ドル=130円とドル高円安となっています。すなわち、円ポンドレートが変わらないのですから、3通貨のうち、USドルだけが強くなり、ドル高円安、ドル高ポンド安が起こったことになります。

例えば、円をのびたくん、USドルをジャイアン、イギリスポンドをスネ夫とすると、もし、ジャイアンが鉄アレイで腕を鍛え、より強くなったとします。すると、ジャイアンはのびたよりさらに強くなり、またスネ夫よりもさらに強くなります。でも、いくらジャイアンが鍛えて強くなろうとも、のびたとスネ夫の力関係は、それだけではなんら変わりません。

なので、のびたからすれば、スネ夫の力が相対的に強くなったのか弱くなったのかを把握するには、直接スネ夫と自分の力を比べればそれでOKなのです。スネ夫とのびたの相対的な力関係に変化がないならば、相変わらずスネ夫とのけんかに勝てる可能性は以前と変わらないはずなのです。

のびたがスネ夫とのけんかに勝てる可能性を把握するのに、スネ夫と自分との力関係の変化を見れば十分で、ジャイアンの強さの変化が関係ないように、イギリス株式に投資した成果が円ベースでどうなっているか把握するには、円ポンドレートとポンドベースの英国株式市場の2つの動きを見ていれば十分で、円ドルレートは関係ないわけです。

こんな感じですが、いかがでしょうか。

ご理解の参考になりましたら、幸いです。

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コメント

詳細な具体例で説明して頂いて、自分が何を勘違いしていたか良くわかりました。
自分は円対ポンドは別取引のレート(実勢レート)が存在し、それは以下のような計算で算出されるレートとは違うものだと思っておりました。
以下引用==================
1USドル=123.31円
1イギリスポンド=247.89円
1イギリスポンド=2.010300USドル

ここで、3番目のドルポンド為替レートは1番目と2番目のレートからも算出できます。すなわち、
247.89/123.31=2.010299
となります。
引用ここまで================

為替について全く無知であったのが良くわかりました。
このような勉強不足者の質問にも丁寧に解説くださったこと、本当に感謝いたします。
これからもVMaxさんのブログで勉強させていただきたいと思います。ありがとうございました。


投稿: ひい | 2007年7月 9日 (月) 20時13分

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