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2007年8月 6日 (月)

年金制度の構造的問題(その1)

年金制度の構造的な問題について、金融視点で書いて見たいと思います。年金支払記録の問題も重要ですが、年金制度自体の問題はもっと重要で、もっと着目すべきだと、個人的に考えます。また、年金制度を金融商品視点で見ることにより、その欠陥とそれが必然的にもたらす破綻の可能性が、よりくっきり見えてくると思うからです。

まず、このサイトをご紹介します。

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/kaikaku/04kaisei/dl/34.pdf

このサイトで、「国民年金は払い損ではない」という風に述べられていますが、そこには、このような場面で典型的に使われる、だましのトリックがあります。

年金給付の2分の1は国庫負担というのがそれです。例えば、2005年に20歳の人は、払った保険料に対して、1.7倍の年金がもらえます、なので払い損ではありませんという主張が、このサイトで展開されています。

でも、半ば明らかなことですが、国庫負担と言っても、結局は私たちの払った税金がその原資です。所得税、消費税はもちろんのこと、法人税でさえ、結局はそれがなければ、株式配当として株主の利益となって、我々国民の財布に入るはずだったのですから、なんら例外にはなりません。

すなわち、2005年に20歳の人は、払った保険料に対して1.7倍の年金がかえってくるといっても、税金も含めた支払貢献額はざっくり言って保険料支払額の2倍なのですから、実際の貢献総額に対する年金としての返還額は、平均的には1.7/2=0.85倍なのです。

実は、今の若者にとっては、国民年金は、40年の支払期間と20年以上の平均受取期間を有する超長期のビークルなのにもかかわらず、資金の15%を失う、いわば殺人的投資ビークルになっているわけです。

いや、この損失はたった15%ではないかもしれません。平均投資期間30年超でマイナス15%リターンってだけでも殺人的ではありますが、この国庫負担の一部が国債だとすると事態はさらにひどくなります。国債は次世代への税金ですから。すなわち、半分の国庫負担はすべての世代に公平に負担が回っているわけでは必ずしもなく、より若い世代に偏って負担がつけ回されている可能性が高いのです。

なので、本来ならストレートに、「今の人口構成では、若者には平均投資期間30年以上の元本割れの超長期投資で泣いてもらって、その分をお年寄りのため回すような年金制度になっている」と、国や社会保険庁は正しく言うべきなのです。

それをあたかも、「半分は他人の負担だから、払った保険料の1.7倍もの年金がもらえます」というような詐欺的表現をして、この明らかな構造を気付かせないまま、若者に保険料を払ってもらおうとしているわけです。

さらに、年金支払いの半分を国庫負担にしているのは、このような詐欺的な表現で、いかにも若者もこの年金制度で損はしていないと思わせるためだけではありません。

次回は(もしあればですが)、その点について書いて見ようと思います。

(なお、上記の記述は、制度の本質的な部分をわかりやすく表現するため、意図的に簡略化して述べています。したがって、正確性に欠ける部分も多々あるかと思います。あらかじめ、ご了承ください。また、個人的には、国民の義務は全て正しく果たす主義ですので、こんな殺人的ビークルにも正しく保険料を払うという、いわば奇特な人間が書いているという点もご注意ください。すなわち、上記はあくまで制度論としてその将来を憂う一国民として書いており、年金に対して何ら特定の行動を推奨していないということを意味します。また、感情論、道徳論といったものを意図的に脇に置いていることにもご了承いただければと思います。感情論、道徳論では、制度を維持し続けることは不可能に近いと考えるからです。)

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コメント

年金を払った人は、年金170-保険料100-税金100=30の損失。払わなかった人は、年金0-保険料0-税金100=100の損失。
払った人は損ですが、払わなかった人はもっと損をする、という気がしますがいかがでしょうか?

ただし、払わなかった人はその資金を運用ができるので、差し引き70%の運用ができる自信のある人は払わない方が良いかもしれません。

投稿: top13 | 2007年8月 7日 (火) 02時02分

top13さん、コメントありがとうございます。

続きものの次の内容を先に書かれた感じですね。(笑)

おっしゃることは正しいと思います。

その続きの、実は払わない方が有利な人は、(運用に自信がある人だけではなく)山ほどいること等を、次回にはお示ししようと思っています。

それでは、今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: VMax | 2007年8月 7日 (火) 06時29分

確かに運用に自信がある場合は払わない方が効率がよくいいかもしれません。

ただ企業年金の上乗せ部分などを除くと国民・厚生・共済で200兆円ほど残高がありうち日本国債が8割程度を占めています。みんなで有利な運用(国内株・外国株・不動産)をすればあっという間に池の中の鯨になりそうで怖い感じがしますがどうでしょうか。(国債の売り浴びせは金利上昇による価格下落を招き、株の買い集めはリスクプレミアムの減少につながる)

みんなで急にやるとやっぱり難しいような気がします。

投稿: ROM人 | 2007年8月 7日 (火) 16時32分

ROM人さん、いつもお世話になります。

いただいたコメントについて、今のところ、実質的に制度から逃れることができるのは第1号の人だけで、サラリーマンや公務員はなかなか難しいと思いますので、みんなでいっせいにというのはやはり現実的にあり得ないように思います。

また、将来のエントリーでも関連する内容を書こうと思っておりますので、続きはそこでご参照いただけたらと思います。

以上、よろしくお願いいたします。

投稿: VMax | 2007年8月 8日 (水) 00時41分

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