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2007年8月10日 (金)

年金制度の根本的問題(その3)

その1、その2で、今の国民年金において犠牲になっている若者たちの悲惨な構造をお示ししてきましたが、ここでその若者たちにとっての、国民年金加入か否かの有利不利を、金融商品の視点で見てみたいと思います。

繰り返しになりますが、

100を保険料で支払い、

100を税金で支払い

170が年金支払いとして戻ってくる。

のが、彼らに対する国民年金制度の取扱いです。明らかにマイナスリターンビークルですが、支払いのうちの半分は税金として国に質に取られてしまっています。なので、国民年金加入か否かを考える場合は、どちらの場合にも必要となるこの税金の部分は、必要経費として除外して考えることとします。そのとき、このサイトの20歳の場合の例により、

http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/kaikaku/04kaisei/dl/34.pdf

保険料支払額が1200万円、年金受取額が2100万円となります。

保険料支払月が40年で480ヶ月、年金受け取月数が22年1ヶ月で265ヶ月として計算すると、単純な割り算で、毎月保険料が25,000円、毎月年金額が79,245.28円となります。(ここでは、保険料も年金額も毎月支払い、かつ定額と仮定してみます。)

この数値から、いわゆる内部収益率、すなわち、毎月保険料をどんな利回りで回していくと、毎月年金額が払えるようになるかという数字を求めると、実はこの数字は年率でたった1.77%程度なのです。

ちょうど、今の10年物日本国債の利回り水準に近い水準です。

すなわち、年1.77%程度以上で運用できる自信がある人は、税金部分を捨てても、国民年金には加入せずに自前運用した方が有利ということになってしまうわけです。

参照サイトから、この計算例は賃金上昇率2.1%、物価上昇率1.0%のときの例となっています。すなわち、物価上昇率+0.77%くらいの運用ができるなら、若者にとって国民年金の存在価値は無く、国民年金未加入で自前運用するインセンティブが生ずるということになってしまいます。

なので、簡単に想像がつくとおり、収入や資産が大きくリスク許容度も大きい方は、ほんのちょっとのリスク資産のポートフォリオへの味付けで、インフレ率+0.77%程度の運用などは軽々達成できてしまうでしょうから、明らかに国民年金を非加入で済ませるインセンティブが生じてしまいます。

また、それだけではなく、どちらかというと生活が苦しい方々にとっても、国民年金非加入にするインセンティブが生じ得ると思います。それは、高利の借金の返済は、高利の運用をすることと、経済的には全く等しいからです。

すなわち、事業用資金にしろ、家のローンにしろ、勤労時代の大半をネット資産マイナス状態で過ごし、その金利負担が非常に大きければ大きいほど、国民年金保険料を払って税金除きで1.77%程度の名目リターンを得るよりも、国民年金を未加入にして、3%や5%、あるいは10%の利子を支払わなければならない借金を減らしていった方が、より豊かな老後を迎えるために資する可能性が高いのではと思います。

こう考えて見ると、今でさえ国民年金未加入とするほうがエコノミカルに有利な人って、結構全方位にたくさんいるのではないかと思います。だからこそ、保険料納付率が60%台で低迷し続けているのではないかと推測します。

また、これが、将来金利水準が3%、5%と上がっていく状況を仮定すると、今の若者が年金受給するころ、国民年金制度を支える将来の若者がたくさんいるとはとうてい思えませんし、制度がどんどん完全な賦課方式になっていきますから、そんな状況での国民年金加入か否かの有利不利のボーダーラインは、実質的にさらに悪化していくのではないかと思います。

このような将来シナリオにおいては、今よりもさらに激しい、3分の2国庫負担や4分の3国庫負担にしていかなければ、今の国民年金制度は維持できないと思います。またそれ以前に、納付率が悪化したらそれだけで、当面の保険料収入キャッシュフローが細りますから、積立金取り崩しの加速や国庫負担率上昇が必要になってくるはずです。

この国庫負担率の上昇は、今のところ実質的に制度崩壊を防ぐ唯一の手段になっているものと思いますが、冷静に考えて見れば、これは体制側にとって諸刃の剣だと思います。

年金制度の大半が、国庫負担、すなわち税金でまかなわれているのに、なぜ、国民年金制度のごく一部しか占めない保険制度部分で、社会保険庁は血眼になって記録保持しながら年金額計算管理なんかして、納付保険料の10%とかいった多額のお金を費消し続けているのか、年金制度のごく一部しか占めない部分に、到底採算の合わないしくみを適用し続けて、社会保険庁組織を維持し続け、お金をドブに捨て続けるのはもう止めたらどうか、ぜんぜん意味ないじゃないかといった議論に必然的につながっていくと思うのです。

なので、国民年金制度維持のための国庫負担率上げ対応は、実質、制度破綻の引き金を引くことを意味するのではないかと思います。

これもある意味、市場原理だと思います。こういった形で、ある意味冷徹な市場原理で、制度崩壊を突きつけられる可能性が高いのであれば、正直、厚生労働省や社会保険庁のこの制度に対する必死の延命措置も、単なる時間とお金の無駄のように思えるのです。

要は、大元をたどれば、これからの日本の人口ピラミッド構成と実質賦課方式の制度自体が、自助努力の保険方式の年金制度の存在を許さないという結果を、必然的にもたらすのではないかと思うわけです。

だったら、これから何年、何十年と無駄に現行制度と組織を飼い続けて国民の貴重な税金をドブに捨て続けるようなことをせず、さっさと消費税等の税金による最低年金制度に変えてしまったらどうかと思うのです。

(なお、今回においても、その1の最後に書いたのと同じような注意事項が当てはまります。再度、繰り返すことはいたしませんが、その注意事項を踏まえ、読んでいただければ幸いに思います。)

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コメント

 以前、コメントを何回も投稿したのですがどうしても表示できませんでしたが、トビが違えばコメントも可能かと思い、チャレンジしてみました。

 資金効率の面からはお説の通りですが、もらう年金については確かにその通りですが、障害者になった場合の障害年金は保険料を払っていないと受けられない場合があります。障害者になった場合、収入は途絶え、他人に介護を依頼する必要があることからものすごいお金が必要になりますので、障害年金をもらえるかどうかと言うことは大きな問題です。

 また、今の年金制度を維持する意味はどこにもないと思います。お説の通り消費税等で自動的にまかなえるようにしない限り、給付率を確保した上で維持することは不可能だと思いますね。その場合でもお役所がコントロールするとどうしても無駄が発生するので、給付作業は民間に委託して、監督も民間の監督機関に委託し、お役所はその審査だけを行うようにしないと、費用をどぶに捨てるだけになるでしょうね。

 

投稿: 浦島太郎 | 2007年8月10日 (金) 11時01分

仰せのとおり賦課方式による確定給付はもたないでしょうね。はやく確定拠出に代えないと。

年金制度以前に国の財政がズッコケている状況なので待ったなしですし。

あー我々世代の老後はどうなることやら・・・

投稿: (ひ) | 2007年8月10日 (金) 15時21分

浦島さん、(ひ)さん、コメントいただき、ありがとうございます。

障害年金等については、浦島さんのおっしゃるとおりだと思います。今回の一連のエントリーでは、意図的にオミットした部分です。

実際に、国民年金に頼らないことを決意する場合には、そういった確率の低い事象に対する保障が無くなることについて、どうするか決める必要があります。保険や共済などの民間保障を買うことで実質的にカバーできるかもしれません。たぶん生命保険の定期保険+障害特約の組み合わせの小額契約で、国民年金が持つ付随機能は実質的に代替できると思いますが、今回はそこまで精緻に調べることはしていませんので、現実的な案なのかどうかは今のところ承知していません。

ただ、論理的には、確率の低い事象の保障のコストは低く、そういった保障は民間から低廉な保険料負担で買える可能性が高いので、わざわざ国民年金と抱き合わせで国から買うのが唯一の手段ではないと思います。社会保険庁等の体制側が主張する「だから国民年金は有用だ」という主張も、調べもせずに鵜呑みにしない方が良いと、個人的には思います。

(ひ)さんのおっしゃるとおり、国民年金の無駄のオーダーに比べると、若者につけまわしている国の大借金の程度にはすさまじいものがあると思います。
我々に出来ることは、利口にリスクを取り続けて、ゆっくりゆっくり大きな資産を構築していき、将来に備えることだけだなと改めて思います。

先はまだまだ長いです。がんばりましょう。

それでは、今後ともよろしくお願いします。

投稿: VMax | 2007年8月11日 (土) 09時33分

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