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2007年8月 5日 (日)

ジョン・ボーグル氏の台詞

Vanguardのジョン・ボーグル氏がこんな台詞を言っているようです。

『「ETFはショットガンのようなもので、狩りにも使えるが、自殺にも使える」と酷評している。』(日経マネー9月号P138、「ETFってそんなにいいの?」より)

正直、この台詞はいただけないと、個人的に思います。

私には、ジョン・ボーグル氏が推奨するインデックスファンドに比べて、ETFが劣っているところが、ほとんど見当たりません。

コスト(信託報酬)はETFがインデックスファンドを主導する形で低レベルに推移していますし、氏が推奨しそうな、時価総額比例の有名なベンチマークに追随するインデックス運用のETFのビッドアスクスプレッドは、ほんと無視できるほど小さいです。

なんだか、状況証拠から判断すると、ザラ場で売買できるETFは短期投資、投機のビークルになってしまうからダメとか言ってそうな気がします。これは、完全な論点のすり替えだと思います。

別にどれだけ短期投資、投機家がそのETFの売買をしようとも、あるいはかえってその方が流動性が高まり、ザラ場で基準価格から、市場取引価格が乖離せず、いつ買っても正当な価格に非常に近い価格で買えると思います。そうであれば、もしETFの方がインデックスファンドよりも信託報酬が低いなら、インデックス投資家はインデックスファンドではなくETFを選んだ方が、間違いなく有利だと思います。

日本では、まだETFは取引コストが高いので注意が必要ですが、米国証券会社のIBでは取引手数料はたった1ドルです。まさか、氏は長期投資家でも、ETFをザラ場で買ってしまった瞬間に、魔がさして短期投機に走ってしまうと主張するのでしょうか?

コストがより低く、しかも流動性がより大きいのはメリットであってデメリットではありません。流動性が大きすぎると、投機に走ってしまうなんて台詞は、「このはさみは切れすぎる」といっているようなもので、ナンセンスだと思います。よく切れるはさみは、間違いなく価値があるのであって、よく切れすぎると怪我をするから、もっと切れない方が望ましいなんて理屈は、インデックス投資家をばかにしています。

ほんとのところは不明ですが、もし上記のような的外れな主張をするなら、氏もやきが回ったのではと言わざるを得ません。

氏は、新しい本を発売するようで、その中で

>第15章 上場投資信託(ETF) インデックス運用という名の投機

という章があるようです。この章で、氏が考えている本当のところが見えるかもしれません。また、もう英語版は存在していて、その内容は英語版を読めばわかるのかもしれません。

まあ、日本語版が出てから、本屋で立ち読みすれば十分かなと考えています。

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コメント

おっしゃるとおりだと思います。ボーグル氏の言いたいことは分かるしETFの売買乱発は控えるべきですが、言いすぎだと思います。

ボーグル氏の低コストインデックス投資の発展への寄与は大きく評価されています。いっぽうで、彼の主張のうち主に次の3点には、反対する投資家もたくさんいます。
(1)アメリカ国外投資は控えめに。
(2)リバランスは不要。
(3)ETFは悪い影響のほうが大きい。

投稿: 与六 | 2007年8月 5日 (日) 04時26分

与六さん、こんにちは。

情報いただきありがとうございます。

まさかなと思いながら書いたエントリーですが、いただいたコメントからすると、やっぱり上のエントリーのような主張を、ボーグル氏は展開してそうですね。

なんともはや。インデックスファンドというイノベーションを先導した氏が、その先のイノベーションであるETFへの嫉妬、やっかみですかね。VanguardもETFを出してますし、それぐらいしか、氏がこういった主張に走る理由が見つかりません。

いやはや、嘆かわしいことです。

それでは、今後ともよろしくお願いします。与六さんのブログにもまた遊びに行きます。

投稿: VMax | 2007年8月 5日 (日) 09時45分

VMaxさん、

こんにちは。恐らく、この日経マネーの引用しているのは、Economistの4月19日の記事”Revolution or pollution?”を元にしているのかと思います。もしくは、Bogel氏の本からの引用かもしれませんが。。。

参考までに、Economistの記事のURLを添付します。
http://www.economist.com/finance/displaystory.cfm?story_id=9044408

この記事において、Bogel氏のETFに対する懸念のポイントを要約します。

‐一部のETFのターン・オーバーは3000%を超えている。
‐頻繁な取引は、ETFのコストアドバンテージを無効にしてしまう。(一般的に、ETFは、ExpenseはIndex Fundよりも低いものもありますが、取引手数料をとります。一方、Index Fundは通常、こちらでは取引手数料はかかりません。ご存知のことと思いますが、念のため記します。)
‐パフォーマンスを求める誘惑に駆られ、(結果として)間違ったタイミングで取引をしてしまう等、バイ・アンド・ホールドの基本原則を弱めるのではないか?

Bogel氏のコメントの原文は以下の通りです。(この前に、ETFに関しての懸念事項の段落があり、それに続いています。)

The most vocal critic of ETFs is John Bogle, Vanguard's former boss. He likens them to a shotgun: “good for hunting game, but good for suicide too”. He thinks they are undermining the buy-and-hold principle of sound investing by tempting the little guy into ill-timed “performance-chasing”. And he is horrified that some funds see turnover of more than 3,000% a year. The trading commissions notched up by all this activity could overwhelm the cost advantages of ETFs, he argues.

この後に、Bogel氏の主張に対する反対意見続きます。

投稿: Alpha | 2007年8月 5日 (日) 18時20分

Alphaさん、ソース情報提供いただき、ありがとうございます。

参照いただいた記事にも、私が上のエントリーで書いたことと同じようなことが書いてありますね。

ETFが短期投機家の回転売買にいくら利用されようとも、証書の持ち主がめまぐるしく変わっているだけで、裏側にある資産は全く動かず、市場の摩擦を全く受けはしないのですから、ETF資産の毀損はなく、短期投機家が取引手数料の蓄積でいくら損を受けようとも、ETFを用いた長期投資家には何の損失もありません。(この点は、ETFがインデックスファンドよりも優れている点だと思います。)

火もナイフも拳銃も自動車も、間違った使い方をする人が出現するからよろしくないと、ボーグル氏は主張するつもりなのでしょうか。

偉大な先達であり、敬意を表したいのはやまやまなのですが…困ったものです。

投稿: VMax | 2007年8月 5日 (日) 21時54分

VMaxさん、

長期投資(家)の視点で見た場合、Bogle氏のおっしゃることに対して、同意できない、と言うのは理解できます。流動性が高いことは、悪いことではないですし、(通常は良い)運用手数料もインデックスより低いものもあり、この様なETFであれば、長期投資の視点でもインデックスに対しても利点がある場合もあると思います。

Bogle氏のポイントは、使い方によっては、好ましくない結果をまねく、と言う事だと思います。

購入者がどう利用するか、といったことで、きちんと理解して使えば非常にメリットがあることは間違えないので、それを否定しているのではないと思います。ただ表現がかなり過激なので、受け取る側が、否定的な解釈をする可能性は(大きく)ありますね。

尚、今年の4月にBusinessweekにもBogle氏の主張の記事がありますが、コメント欄を見ていただければ、分かりますが、反応は否定的なものがすくなくありません。

http://www.businessweek.com/magazine/content/07_18/b4032089.htm

どの投資商品でもそうですが、長所と短所はあります。投資目的にあわせて、それらを考慮し、選択することが重要だと思います。

冒頭で述べましたが、ETFは長期投資の視点で見た場合、メリットは高いと思います。

私は、E-Tradeを利用しているのですが、E-Tradeの場合、ETFの短期取引を抑制するため、購入後90日以内の売却に対しては、追加手数料($49.99)を徴収しています。その代わり、エクスペンスに関しては、業界の中でも低く設定していると思います。

後、ETFは通常、取引手数料を徴収されるので、少ない金額を、比較的頻繁に(月毎、四半期毎)ドルコスト平均で買う場合は、投資期間等も含めて、インデックス・ファンドとどちらがメリットが高いのか比較する方が、(一般的に)良いと思います。

この様に、使い手や提供する側が、メリット・デメリットを考慮して上手に活用すれば、ETFは非常にメリットが高い魅力的な投資商品と思います。

投稿: Alpha | 2007年8月 6日 (月) 03時22分

Alphaさん、追加情報いただき、ありがとうございます。

コメント欄、確かに厳しいコメントが続いているように読めますね。

彼の新しい日本語版の本が発売されたら、このような侃々諤々の議論が、日本でも展開されるのかもしれません。

本屋をチェックしないといけないですね。

個人的には、繰り返しになってしまいますが、「いくらデイトレーダーがETFをおもちゃにしようとも、証書の持ち主がめまぐるしく変わっているだけで、後ろに張り付いている資産は全く市場に出ることはなく、売買でそれら資産が毀損することはないので、ETFを用いた長期投資家には、全く損失がないこと」、「投機家の存在は、取引の厚みと流動性の向上につながり、かえってメリットとなり得ること」といった点を、くれぐれも強調したいですね。(Alphaさんに対してではなく、これを読まれる方一般に対してです。)

それでは、今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: VMax | 2007年8月 6日 (月) 19時44分

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