インフレの芽?(おまけ)
表題に関し、投資勉強小僧さんから、以下のコメントとご質問をいただきましたので、このエントリーでお答えしようと思います。
『数ヶ月前から拝読させていただいてます。「インフレの芽?」もとても興味深いです。さわかみ氏ははっきりと「これからインフレになるから、今は株を買うべし。」とレポートで断言調。
初心者質問で恐縮ですが、まだら模様でインフレとなると、物価連動国債ファンドはどのように捉えたらよろしいのでしょうか。分散候補の一つに「未来予想」というファンドもどうかと考えていたのですが・・。宜しくお願いします。』
物価連動国債は、庶民の必要生活物資の物価だけを捕らえることはできず、全体の物価しか捕らえられないと思いますので、このようなまだら模様のインフレをヘッジすることは残念ながらできないと思います。
また、日本国の発行する物価連動国債は、元本保証がない、すなわち、発行時よりも償還時のCPIが小さくなっていると、償還金が元本を割ってしまうという、他の先進各国のインフレ連動国債にはない、不利な特徴があります。
澤上氏の想定されているかもしれない、全体物価が明らかに上昇していくようなはっきりした将来インフレであれば、そんな心配をする必要はないと思いますが、現状のCPIはゼロ近辺を這っている状況だと思いますので、今のところはなかなか日本の物価連動国債ファンドは妙味が薄いのではと、個人的には感じます。
ただし、今起こっている物価値上げは、主に石油価格や資源、穀物など原材料価格の上昇が起因となっているように見えます。日本企業も売上減少につながりそうでずっと値上げができずにがまんしていたのが、とうとう耐えられずに次々と値上げに走り始めているように見えます。
もともとが、主に中国やその他の新興国の台頭によってこれら価格上昇がもたらされており、またこれからは、これら新興国は経済力の高まった新興消費国としても台頭してくるものと思います。このような背景を考えると、物価上昇の流れはこれからも止まらず、広範囲に広がり、加速していく可能性が十分あり得ると思います。
内外株式を少しでも含んだポートフォリオを構築し、長期に持続する、伝統的なインフレヘッジのための投資態度はやはり有効なのではないでしょうか。そのポートフォリオリスクが許容できなければ、言及されているような物価連動国債ファンドの買い時を、CPIの動向をウォッチし続けながら探り、明確な上昇トレンドを確認した後にエントリーするのがよいのではと思います。
残念ながら、現状の日本の物価連動国債ファンドは信託報酬も高く、販売手数料も結構かかり、また元本保証もない世界では特殊な国債に投資するビークルになっていますので、インフレデフレにかかわらず、一生もので保有し続けることのできるビークルにはなっていないと思います。このような状況では、ある程度タイミングビークルとして使用せざるを得ない商品だと思います。
為替リスクに十分なリスク許容度があれば、米国インフレ連動国債ETFであるTIPや、将来US市場で販売される予定の、米国除く世界インフレ連動国債ETFを持つのがよいと思います。これなら、一生ものでポートフォリオに組み込んでもよいのではと、個人的に考えています。
ただし、前者は楽天証券で既に取扱い中ですが、後者はまだUS市場でもデビューしていない代物ですので、日本の投資家が簡単にアクセス可能になるのはまだまだ先になると思います。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
どうも有難うございます。とても勉強になりました。やはり、いろいろと難しいですね。確かに元本保証のない国債というのは気がひけてしまいます。一方、海外物だと今度は為替リスクがありますしね。副島貴彦氏は近著の中で、「ドル覇権は崩壊。1ドル80円の時代へ」などと書いております。もっとも、この人は何年か前に預金封鎖などを謳っておりましたから、まあ、話半分でしょうけど・・。
ただ、今よりは円高に向かうのかな、という気は素人なりにします。海外ETFでも、たとえばEEMなどはそのうち買ってみたいと思うのですが、今はまだ踏み出せないでいます。
ところで、為替ヘッジとしてDBVというETFがあるのを最近ネット掲示板で知りました。面白そうな商品だな、とは思ったのですが、これはまだ日本のお店で扱っているところがないんですね。(私は海外の証券会社に口座を持てるほどの度量がありません。)
ご回答をどうも有難うございました。これからも勉強を続けてまいります。また将来、何かおうかがいさせていただくことがあるかも知れません。どうぞ宜しくお願いします。
投稿: 投資勉強小僧 | 2007年9月 9日 (日) 08時14分