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2007年9月17日 (月)

インデックス投資が賭けているもの(その2)

以前、「インデックス投資が賭けているもの」というエントリーで、この表題に関する私見を書きました。

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/08/post_bcfc.html

主旨としては、インデックス投資家は「企業群の利益を創出する能力と、それを適切に値付けする市場の価格決定能力」に賭けているという内容でした。

また、この能力は資本主義市場の歴史とともに、ずっと発揮されつづけてきた能力であり、おそらくは資本市場で存在する賭けの中で、もっとも堅い賭けに属するものだと思います。言い換えると、インデックス投資家は、自身やファンドマネージャーの銘柄やセクター選別能力や、マーケットタイミング能力、市場の歪みを取る能力あるいは市場の歪みが将来も存在するかどうか等、資本主義の歴史と同程度の長さのエビデンスのない、あやふやなものには一切ベットしないというまことに堅いスタンス、投資態度でいると思います。

実際、アクティブファンドが長期においてはインデックスファンドに高確率で負けている等、まさにその他のベットの勝算が著しく低いことが事前に示されているケースもあります。

インデックス投資家の賭けているものが、これほど堅いもの(資本主義の超長期の期間壊れていないもの)である理由のひとつは、人のリスクに対する特定の態度にあると思います。何度もすでに書いていますが、リスク資産市場においては、典型的なリスクアバースな市場構造が見られます。人は、一般に、リスクに対して十二分な見返り(圧倒的高水準のプラスの期待利益額)が見込めない限り、リスクを取ろうとしない心理構造にあります。それについては、別のエントリーの社債市場のリスクプレミアムスプレッドの例でお示ししたとおりです。

実は、インデックス投資が賭けているものは、言い換えればリスクの存在する価値ある資産に超過リターンを要求する、古今東西変わらぬ人間の特質といってよいと思います。

そのインデックス投資家が、アクティブ運用や自身のタイミング投資行動にベットするということは、資本主義の歴史の長さと同じだけの期間の過去の歴史で証明された有利なベットから、全くそのようなエビデンスのない、あるいは、とてつもなく不利な賭けであることが統計上明らかとなってしまっているものに賭け換えるというナンセンスな行為、いわゆる自己矛盾に近いと思います。

それにもかかわらず、インデックス投資家がそういった、より不確実なものにわざわざ最悪なタイミングでベットし直してしまう、まさに悪夢の要因が存在すると思います。

それについても、このブログでたびたび取り上げてきましたが、「欲と恐怖」、「オーバーセルフコンフィデンス」という心理的な罠が引き金となっていることが非常に多いと考えます。

・市場が恐怖に駆られているときに、同じく恐怖に駆られて、投資資産を売ってしまう、あるいは、新規投資を躊躇してしまう。

これは、恐怖と、あるときはオーバーセルフコンフィデンスのセットになっていると思います。超長期でリスクを取り続けることにより、リターン期待値をほぼ確実に顕在化させる投資戦略を取っているのに、わざわざそれを取りやめて、自身のタイミング投資戦略にベットし直すことになります。そのベットは少なくとも、超長期の資本主義市場での有利性は証明されていません。かつ市場で恐怖が蔓延してひどく下げているときに、売りで入ることと同義の行為ですから、安値売り高値買いで運用成果を自分自身で削っていくリスク満載のベットの開始になります。

・市場が楽観に包まれているときに、投資元本を超えたレバレッジでリスクテイクしてしまい、その後の下げでやられてしまう。

これは、欲と、あるときはオーバーセルフコンフィデンスのセットになっていると思います。リターン期待値をほぼ確実に顕在化させるために、超長期でリスクをずっと取り続けることを指向していたはずなのに、投資元本を超えた高レバレッジにして、わざわざ超長期でリスクを取り続けることが不可能になるリスクを取ることを意味し、これもある意味、自己矛盾な行為だと思います。その結果、市場の下げ時にポジション決済を迫られるとすれば、これも結果的に高値買い安値売りとなり、自身のタイミング投資行動により、投資リターンを削る結果につながります。

その他もいろいろあると思いますが、「投資の敵は自分自身にあり」というのが、ある意味、真理に近いと私は思います。どこかで書きましたが、「人は自分自身の投資成果をわざわざ悪くするように自分自身を突き動かす」ので、その人間心理の構造を知り、その罠にはまらないように行動し続けることが、投資で成果を出すためには必要だと思います。

それは、やはり、言うほど簡単なことではなく、そうだからこそ、それができる人にはとても魅力的な無リスク超過リターンが手に入るのだと思います。また、このような心理的罠により、多くの人が、超長期の歴史に裏付けられたエビデンス投資からはずれ、その中のかなりの人がリスク資産から十分なリターンを得ることに失敗する、すなわち、多くの人がリスク資産から利益を得ることは難しく、リスク資産市場は怖いところだという認知を続ける限り、資本市場のリスクプレミアムはあいかわらず、とても魅力的な水準であるだろうことは、おそらくは間違いないところだと思います。

結局、リスク資産市場から利益を得る難しさと、そのリスクプレミアムスプレッドの魅力度合いは連動しているのではないかと思います。この関係が長い目で見て変わらないのは、人間のリスクに関する認知のしかたと、欲と恐怖とオーバーセルフコンフィデンスに振り回される、人間のさがが古今東西、変わらないからだと考えています。

なので、自身がベットしている賭けの方向性は、とてつもなく堅いものだと考えています。これもまた、オーバーセルフコンフィデンスの一種でしょうか。将来の資本市場のみが、それを教えてくれるのだと思います。期待して、数十年寝かしましょう。

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コメント

120%同感です!

僕のブログでも同じ事を言いたいのに、本記事のような論理的文章が書けず、結局、「バイ&ホールド!」しか言えてません。
VMaxさん尊敬します。

投稿: 水瀬 ケンイチ | 2007年9月17日 (月) 13時05分

水瀬ケンイチさん、いつもどうもです。

コメントを残していただき、ありがとうございます。インデックス投資の本家本元からお褒めの言葉をいただいたようなもので、非常にありがたいです。

それでは、今後ともよろしくお願いします。(また、貴ブログを訪問させていただきます。)

投稿: VMax | 2007年9月17日 (月) 20時55分

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