大証ETF
大証が中国本土株ETFを上場するとのことで、すでに様々なブログで反響を呼んでいるようですね。
http://markets.nikkei.co.jp/kokunai/hot.cfm?id=d2c0403404&date=20071004
個人的には、様々な意味で嘆きとぼやきのコメントしか出てきませんので、それについては、以下の有名なブログサイトをご覧いただくこととして、当方からコメントは差し控えることとしたいと思います。
http://tohshi.blog61.fc2.com/blog-entry-385.html
当方からは、1点、この中国本土株のETFに関することについて、なかなかどこでもコメントされないポイントがありますので、それについて触れておきたいと思います。
この大証が中国本土株ETFと称して上場させる商品は、米国ではETFとは呼びません。米国ではETN(Exchange-Traded Note)と呼びます。実物株式が信託される方式ではなく、そのベンチマークへの連動を保証するNoteを発行するカウンターパーティが存在し、その発行体の信用リスクを負う形の、ETFの定義には厳密には当てはまらない商品です。
以前もETNについては当ブログで取り上げたことがあります。
http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/etfetnno_3c5e.html
以前の金のETF(と称する商品)でもそうでしたが、大証は、この形の商品をETFと言い張り続け、投資家に対して、その商品のしくみとリスクの所在の違いをきちんと明示した上でETFとETNの市場を作ろうという意図がまるでなさそうですね。
当方はこれを、日本の市場の未成熟さゆえの現象の可能性が高いと解釈しています。
折りしも、この十月から金融商品取引法が適用され、商品の内容とリスクがきちんと理解されないまま販売され、購入される事態を回避することを目的とした世の中の動きの中での、この大証と証券業界の対応です。
実に象徴的な現象だと思います。
AAA(トリプルA格付けを有する)会社群であったとしても10年20年以上の期間を経る間には、将来デフォルトする企業が有意なパーセンテージで存在することになるのが過去の統計上の実態です。すなわち、10年20年以上の長期投資を指向するときには、資産の実物が区分管理されていて、かつ法的にも保有者に対してその区分管理資産の権利が守られている商品か否かというのは、実はとても重要な商品選択基準であると思います。
その重要なポイントをきちんと一目でわかる形に表示して商品を売ろうとしない、この日本の取引所と業界の態度には、個人的にどうしても憤りを感じざるを得ません。
「今の中国本土株市場に10年20年の長期投資をしたいという人なんていないよ。」と言われればその通りではあるのですが、そう言われると「そんな粗悪品を粗悪品と認識した上で上場なんかするなよ。」と言いたくなります。
うーん、やはりぼやきになってしまいました。では、今日はこの辺で。
| 固定リンク
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
VMaxさん
いつも楽しみに読み、かつ投資に実際に役立たせていただいております。ETFとETNの違い、投資にかなり詳しいひとでも理解していないのだということが、先日の某掲示板での議論でも明らかになり、改めて脱帽いたしました。
ところで、私の理解では、ETNは、ETFと違ってカウンターパーティの信用力が頼りの資産ということだと思います。ではETFの信用問題の根源的なところはどうなのか、結局は同じではないのかなと、つい考えてしまいました。(1)ETFは実物資産が存在しているし、(2)それを管理しているのは別の信託銀行である。それは、頭で分かっているつもりです。しかし、実際に、日本人の投資家が海外証券口座でETFを保有しているケースを考えたとき、当のETFが上場廃止に追い込まれた場合、どうでしょう。「その対価を確実に回収できるか、現実問題としてかなり微妙」と考えるひともいるみたいですね。「それなりに語学力と交渉力を持って、なおかつ時間に余裕がなければ、資産の回収は困難になるとみるべき」という推測でしょう。
語学力と交渉力なんて属人的な問題であり、ことの本質ではないとも思えます。ただ、ここで問題としたいのは、現実としてETFの上場廃止というリスクを、どの程度に気にかけて、また発行体の信用をウォッチしていくべきものなのかということです。
万が一にも万が一のことを想定してあれこれ心配するのは、いかにも愚かなことだと思います。ただ、こんなことを考えるのも、最近、当サイトに感化されてWISDOMTREEのETFをかなり購入したこと、WISDOMTREEは好感のもてるサイトでもあり長く付き合いたいですがあまりにマイナーで「大丈夫かいな?」という思いも少しはあること、そして、ちょっとした事情があってiPath MSCI India Index ETN (INP)も買わなければならなさそう、などが理由です。お暇なときにお考えを聞かせていただければとてもありがたいです。
投稿: 西中野 | 2007年10月 8日 (月) 11時40分
西中野さん、いつもどうもです。
ETFの上場廃止について、ことさら心配される方がけっこういらっしゃるのは、私も知ってはおりますが、私は個人的にはほとんど心配していません。
まず、WisdomTree等の運用会社が倒産した場合、この場合が一番安全だと思います。なぜなら、運用会社はETF資産に手を付けることが不可能だからです。
またWisdomTreeETFではリバランスはたしか年1回だったと思います。運用会社の倒産による資産リバランスが出来ない悪影響は、数ヶ月程度であれば、無視できると思います。
もちろん、信託銀行が倒産することも理屈としてはありますが、それにしてもETF資産は米国の信託法で守られているでしょうし(この点、私も法律系の専門家でもないですので、未確認ではありますが、私個人はこの点でも全然心配していません)、信託銀行の債務超過を負担しなければいけないのは、その信託銀行の株主と債権者であってETFその他の信託財産まで被害が及ぶことは、ほとんどあり得ないレアケースなのではないでしょうか。(信託財産を安全に管理することが仕事の業界ですし、当局の安全度の監督レベルも非常に厳しく債務超過になる前に危ない信託銀行のビジネスを止めるべくモニタリングされているでしょうし、業界のセーフティネットも充実しているものと想像しています。そうでなければ、個人、企業や様々な事業体が資産を信託する気になどなれないでしょうから。)
また、私は実際のETF上場廃止の際の手続き等もほとんど心配していません。
実際、私は昔、米国市場の個別株に投資していたときに、その株が買収されたことがあります。そのときは、書面手続きを経て、買収した企業の株を手に入れるか、買収手続き完了前に市場で売却するか選択する局面に直面しました。
そのときは、面倒なので、市場が買収価格に収束していくところで、買収価格に非常に近い価格で売って終わらせてしまいましたが、そのとき書面手続きをすれば、買収企業の株式に交換することもできました。
ETFが上場廃止するときも、この例と似たようなプロセスになるのではないかと、当方は推測しています。上場廃止に直面しても、実際の資産の実物が存在する以上、実物の時価に非常に近い金額の払い戻し手続きが数ヶ月程度の周知、手続き期間が確保された上で適用され、そのような時価獲得手段が確保されるので、実際の上場廃止日まで、市場でもNAVに近い価格で取引され続けると推測しています。
例えばSPYやQQQQといった巨大ETFが上場廃止し、そのETF資産を全部現金化しようとすれば、マーケットインパクトにも巨大なものがあるかもしれませんが、WisdomTreeETFのようなちっちゃいETFの資産を現金化する必要が生じても、そのマーケットインパクトによる資産劣化など、たかが知れていると思っています。
まあ、このように私は楽観的に考えていますので、WisdomTreeやその他のマイナーなETFにも手を出しているのですが、どうしても心配な方がもしいらっしゃれば、メジャーな会社の時価総額の大きいETFのみを買うようにするのも1つの方法かと思います。また、ETFも様々な会社のものに分散しておき、1社に何かあっても影響の程度を少なくしておくのも1つの対応方法かと思います。
ただ、個人的には、心配しすぎのように思えます。日本の証券会社で投資していても、ETFや個別株式の上場廃止、投資信託の償還、株式の買収や合併等で、証券会社や投資信託会社、証券取引所等とハードネゴシエーションをしたなどという話は、私は聞いたことがありません。米国証券会社だからハードネゴシエーションしないとお金が返ってこないなんて、個人的にはあり得ないと思っています。
あるとしたら、手続き書類の書き方がわからない等といった、主に語学的な問題かと思います。これも、米国人だって書き方や手続き方法がわからない人は山ほどいるでしょうから、しかるべきところに聞き倒して解決すればよいだけの事と思っています。今の時代、E-mail、郵便、電話やFAXがあれば、全ての手続きが済んでしまうと思います。そうでなければ、米国証券会社で投資している米国人が困ってしまいます。米国はとてつもなく広いですから。
個人的には以上のように考えているのですが、いかがでしょうか。
多少なりともご参考になりましたら幸いです。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: VMax | 2007年10月 8日 (月) 18時38分
VMaxさん
さっそくにありがとうございます。そうですね。私も米国の証券会社や銀行のサービスには今のところ満足しており、仮にトラブルがあっても、レターヘッドのついた上質な便箋で手紙をかけば、時間はかかっても満足のいく返答を必ずもらっていたので、実は日本の会社よりよほど安心と思っています。ETFの上場廃止というリスクのイメージがつかめなかったので、聞かずもがなのことを聞いてしまいました。せっかく選択肢があるのだから、これからもマイナーなETFなど、ちょくちょく買ってしまうと思います。今後もよろしくお願いします。
投稿: 西中野 | 2007年10月10日 (水) 06時31分
以前書かれた、USにおけるインド株ETNのように、現物拠出が難しいので上海指数ETFと呼ばれるものもETNの仕組みにしたのでしょうか。
昨日今日高騰しましたが、これも現物拠出による裁定が出来ないから、と理解すれば良いのでしょうか。
投稿: COLE | 2007年10月24日 (水) 16時10分
COLEさん、
私は、野村アセットの内情に詳しいわけではないので、正確なところはわかりませんが、概ねCOLEさんのおっしゃるとおりなのではと推測します。
>USにおけるインド株ETNのように、現物拠出が難しいので上海指数ETFと呼ばれるものもETNの仕組みにしたのでしょうか。
おそらくそうだと思います。
>昨日今日高騰しましたが、これも現物拠出による裁定が出来ないから、と理解すれば良いのでしょうか。
半分は間違いなく、その通りだと思います。
今日の状態では、引けの価格はNAVの2割以上割増しの状態です。もし、現物拠出が認められる形の通常のETFであれば、現物を持ち込んでETFに変えて鞘取りする事業者が続出し、ETFの市場での売り圧力が強くなってETFの価格はNAVに近づいていきます。でもこの中国株ETFと称する代物は、ご存知の通り、実はETNです。日興をはじめとする中国A株の現物を買える業者も、現物持込で裁定することができません。ここまでは、COLEさんのおっしゃる通りだと思います。
わからないのが、この状態が、不可避の状態で仕方なく起こっているのか、野村アセットがわざと起こしているのかということです。
今の当該ETFの残高は、HPを信用すると55億円のようです。野村がリンクノートをたくさん発行し、市場にこのETFの売りをたくさんぶつけることができれば、これほどのプレミアム状態にはなりようがありません。
野村がそうしないのは、出来ないからなのか、それとも自らの儲けを最大にするために、意図的にそうしていないのかが、当方には判別できません。
すなわち、A株に投資できる事業体が発行するリンクノートが十分調達できず、資産の裏づけのない状態で野村がリンクノートを発行するというALMリスクを取りたくない、あるいは事業者としてそのリスクが取れないために、今の状況が発生しているのか、それとも、NAVの1割2割増しで売れて、濡れ手に粟で儲かる今の状態がホクホクなので、わざと外からリンクノートを調達してETFを組成することをせずに、品薄状態を演出しているのかが、個人的には全く判別できません。
前者だと思いたいですが、後者の可能性もあるのではないか、証券会社(の系列会社)なら正直やりかねないのではという思いもぬぐいきれません。
そうでないことを祈りたいと思います。
通常のETFの場合は、原資産との連動性が十分でないETFの場合は、上場廃止の憂き目となる取引所ルールがあったはずと思いますが、このETF(ETN)の場合にそのようなルールが適用されるのかどうかも、残念ながら当方は存じていません。
不可抗力、意図的のどちらにせよ、2割以上もプレミアムがついたこの状態は、明らかに問題だと思います。
個人的にはETNをETFと言い張るところから、取引所も発行会社もまるで信用できません。ある意味、怒りを覚える現象です。
残念ながら、現在当方が持っている限定的な知識でわかる、あるいは想像できるのはこの辺りまでです。
それでは、今後ともよろしくお願いします。
投稿: VMax | 2007年10月24日 (水) 20時36分
ご返事ありがとうございます。
分かる部分は分かりましたし、分からない部分も、本質的に外部の者には分からない不透明な部分があるということは分かりました。
ETFではないクローズドエンドファンドならプレミアムになることはありますから、買う側はそのつもりなのか、
あるいは下値はNoteが支えてくれる一方上値は抑えられないと思ってマネーゲームに勤しんでいる人が多いのかも知れませんね。
これからも更新を楽しみにしています。
投稿: COLE | 2007年10月24日 (水) 22時12分
VMaxさん
はじめまして。カン・チュンドと申します。
記事中での弊所ブログのご紹介、
ありがとうございます。
上証50ETF についての弊所記事を
TBさせていただきました。
ETN(Exchange-Traded Note)については
只今勉強中です。今後ともよろしくお願いします。
投稿: カン・チュンド | 2007年12月 2日 (日) 13時02分
カン・チュンドさん、はじめまして。
TB及びご丁寧にコメントまでいただき、ありがとうございます。
今後とも貴ブログを参考にさせていただきたく思っております。よろしくお願いいたします。
投稿: VMax | 2007年12月 2日 (日) 18時08分