本日の日経新聞の夕刊に『「長寿投信」が低迷』という見出しで、販売しやすい(たぶん、販売手数料が高く、目新しさでお客を釣れる)新商品を販売しがちな金融機関と、過去の運用成績をまるで省みない(たぶん、単に自分で考えずに、金融機関の言うなりで買う)お客について触れた記事がありました。
http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20071002AT2C3000202102007.html
(上記は、その夕刊記事の日経ネット短縮版です。)
この記事自体は、「まあ、たぶんそうだろうな」と納得できる内容ですが、その記事の中で、特に気になったところがありましたので、このエントリーで、今回取り上げてみました。
気になった記事の部分は、以下の文面の後半の部分です。
「日本では投資家の資金が新しい投信に流れる傾向が強い。例えば日本株で運用する投信の場合、運用期間が長い投信からは過去1年間で7千億円以上の資金が流出したのに対し、運用期間1~3年の投信には約2百億円が流入した。
一方、運用成績をみると、長寿投信は新しい投信を上回っている。日本株投信では長寿投信が平均で東証株価指数(TOPIX)を年率2.7%上回ったのに対し、1~3年の投信は同3.1%下回った。日本株投信は運用期間が長いほど、リスクが小さくなり、運用成績が向上するとされる。」
この文面の後半の記述、正しいと思われますでしょうか?
アクティブファンドの運用成績は、高確率でベンチマークに負けるのが普通じゃなかったのか?実は日本市場だけは違うのか?
という疑問を持たれる方もいるかと思います。
安心してください。(安心すべきことではないのですが。)
そんなことはありません。私の知る限り、アクティブ運用がお粗末なのは万国共通で、日本市場も決して例外ではありません。(信頼できる数々の機関、研究者等の分析結果レポートや文献で、日本株ファンドも長期の運用ではベンチマークに高確率で負けることを、当方は確認しています。)
では、日経新聞の今回の記事の記述は何なのでしょう?
これを理解するキーワードがあります。「生存者バイアス」あるいは「残存者バイアス」というキーワードがそれです。(資産運用に関するしっかりとした文献や書籍を読みこなしている方にとっては常識だと思いますが)
長寿投信の影には、運悪く運用成果が振るわず、ファンド残高も右下がりで減少し、早期償還の憂き目にあったファンドが、実は山ほど存在しています。
その数は、とてつもないものがあるはずです。それは、例えばモーニングスターサイト等に行って、運用期間1年以上、3年以上、5年以上、10年以上の投信の数を調べてみれば、容易に想像がつくと思います。
その数字は、運用期間が長くなればなるほど、劇的に減少します。今回の新聞記事にあるように、日本では運用期間10年以上の投信はゼロとのことです。毎年何十、何百と設定された投信は、主に運用成果が悪く残高が無残な結果となったファンドから順に、10年もかからず、全てが消えてきたのが日本のファンドの過去の実態だと思います。
その状態で、7年とか9年生き残ったファンドだけのパフォーマンスを測定すれば、設定された投信のうち、運が良かったごく一部の生き残っているファンドのみのパフォーマンスを測定することになりますので、ベンチマークを上回ることは十分あり得る話なのです。
でも、これは、投信を買って10年以上の長期で運用することを決意して継続すれば、高確率でベンチマークに勝てるということを意味しません。上記のような構造から、「圧倒的高確率で、保有ファンドは運用成果が悪く、運用残高も細るファンドとなって、早期に償還を食らう」というのが、悲しい現実だと思います。
この運良く生き残ったファンドのみを測定対象にすることによって、あたかもアクティブ運用の実力が高いかのように、見かけ上見えてしまうこの効果を「生存者バイアス」や「残存者バイアス」と呼んだりします。
なので、上記引用した日経の新聞記事の文章は、正確に表現すると、
「設定されて間もない何十、何百というファンドのうち、7年とか9年生き残れる、非常に数少ないファンドを選ぶ、とても確率の低い幸運に恵まれたときには、ベンチマークを上回れる可能性が高い。」
となると思います。すなわち、アクティブファンドに投資してベンチマークを上回るには、ろくに判断の材料や実績もない設定間近の何十、何百のファンド群から、長期に生き残れる数少ないファンドを正しく選んで、ずっと継続する必要があるわけです。まさに、本物の幸運が必要なわけです。
新聞記事に、「あれっ?」と違和感を感じた方、あるいは、「日本株ファンドは長期で運用継続しているファンドを選べば、ベンチマークに勝てる可能性が高いのか。これは良いことを聞いたぞ。」と思われた方は、ご参考にされてはと思います。
特に、後者の感想をもたれた方は、左のサイドバーで紹介している、「インデックスファンドの時代」やその他のインデックスファンドとアクティブファンドの長期の実証統計結果を示している書籍等を読まれることをお勧めします。
新聞も、読者をミスリードしない程度には、運用の知識を持っていて欲しいなと思います。
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