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2007年12月20日 (木)

怖いETN

特に買う予定も無く、真剣に見てもいなかったので、事情とか背景等を全く知らないのですが、US市場のインド株ETN(INP)の動きが、まるでCEF(Closed End Fund)のようになってしまっています。

http://finance.yahoo.com/charts#chart4:symbol=^bsesn;range=20061220,20071219;compare=inp;indicator=volume;charttype=line;crosshair=on;logscale=on;source=undefined

このグラフでは、為替が揃っていないので単純な比較はできませんが、本国市場の指数の動きに比して、INPの最近の動きが極端になっていることがわかります。

http://www.etfconnect.com/select/fundpages/etf_funds.asp?MFID=171921

このサイトを見ると、ここ数ヶ月の間で急激にプレミアムがついているのがわかります。(Premium/Discount Historyの部分をご覧ください。)

毎日確認していたわけではないので、このPremium率がどこまでいったのか正確には把握していませんが、今月のどこかで20%程度までいったことは、私も確認しています。

また、このサイトを見ると、直近のPremium率は、12月19日現在で2.93%にまで落ちていることがわかります。(Premium/Discount %のところをご覧ください。)

http://quicktake.morningstar.com/etfnet/Snapshot.aspx?Country=USA&Symbol=INP

このPremium/Discountの意味をご存知の無い方は、このエントリーをご参照ください。

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/index.html

要は、現物との自動裁定機能が組み込まれたETFと違って、CEFは純資産価値よりも極端に割高になったり割安になったりすることがあり、その事情はCEFと同じく現物との裁定機能が働かないETNも同じということです。

何らかの事情で、ETNのINPの需要が大きくなって、それに見合った玉をバークレースが提供できないと、ETNが連動を保証する論理的な価格よりも高い価格でETNの市場取引が行われる状態が発生します。

ETNが連動を保証する価格の20%もの割高な価格で買ってしまい、その割高状態が現在のように剥げてしまうと、インド株式市場に何の変動もなくても、割高状態でETNへ投資した投資家は大損してしまうわけです。

ETNの発行体のカウンターパーティリスク以外にも、ETNは割高状態でをつかんでしまって損失を被るリスクも内包していることが、米国市場においても如実に明らかになったわけです。

これは、日本の大証での中国本土株市場ETF(ETN)で起こった問題と、ある意味同質なものです。

特に、大証での金ETF(ETN)は、ETFのしくみに出来たはずなのに(実際、東証ではETNではなく現物受け取りが可能なETFの仕組みで上場するとアナウンスしていたように思います)、なぜわざわざETNの仕組みで上場したのか、大いに疑問が残ります。

いずれにせよ、ETN(ETFと称しているものもあるので要注意)の購入時には、割高なものをつかまないように、また、売却時に割安な状態で売り叩かないよう、論理的な価値に敏感になる必要があります。

ETNに投資する際の要注意事項です。

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コメント

凄く怪しい記憶ですし、裏づけとなる資料を今探してみても見つからないので、信頼できる情報ではなく、真偽不明、ご自身の調査のきっかけ程度に聞いていただきたいのですが、
金の現物および先物の管轄が経済産業省、ETFの管轄が財務省なので、金現物や先物を組み込めるETFを作れなくて、代わりに財務省管轄範囲で設定できるnoteへ投資するしかなかったと聞いたような記憶が…

これがもし本当なら、問題の根源は縦割り行政ですが、だからと言ってETNをETFと偽って売ってよい理由にはなりませんよね。

投稿: COLE | 2007年12月20日 (木) 22時29分

COLEさん、情報ありがとうございます。

なるほど、縦割り行政がその理由ですか。十分あり得る話ですね。納得です。

今後の金ETF(ETN)関連情報についても注意して見て見ようと思います。

それでは、今後もよろしくお願いいたします。

投稿: VMax | 2007年12月21日 (金) 06時04分

こんばんは
いつも興味深く拝見しています。ETNとは現物の株なり金などの商品と直接の裁定取引が行われない上場投信なのですか?また野村証券のETFにINDIA:SPって商品があるのですがこれはひょっとしてETNじゃないかと疑っているのですが、いかがでしょうか?お教えいただければ幸いです。

投稿: 藤原 | 2007年12月21日 (金) 21時34分

藤原様、

いただいたご質問の件、下記のエントリーを参照いただければと思います。

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/etfetnno_3c5e.html

なお、お問い合わせの野村のINDIA:SPの内容ですが、ちょっと当方はその中身を把握していませんので、正しい回答はたぶんできないと思います。

ただし、野村でも取り扱っているインド株ETF(香港上場)2836 HKの中身は確か、インド株式現物ではなく、どこかが発行した株式連動債であったように思います。

私の推測でしかありませんが、このような連動債の仕組みでは、その債券発行がETFの需給に合わせて適切に行われてタイムリーにETFが組成及び償却されない限り、このエントリーのETNと同じ問題が発生し得ると思います。

そして、お問い合わせのETFも、2836 HKと同じような構造である可能性が高いと個人的には推測しています。

ETFの、原則として裁定取引を誰にでも随時に可能とする優れた仕組みが、原資産との高度な連動性を担保しており、そのような市場原理を内包しない構造では、市場との安定的で適切な連動性を望むのは難しいと思います。

以上、ご参考になりましたら幸いです。

投稿: VMax | 2007年12月21日 (金) 22時15分

ETNに警鐘を鳴らされているかたは、他にほとんどいらっしゃいませんね。さすがです。
自分も、同じ投資対象なのであれば、ETNではなくETFを選びたいものです。

投稿: 水瀬 ケンイチ | 2007年12月22日 (土) 19時15分

VMaxさんありがとうございます。大変参考になりました。おおまかにETFとETNの違いが分かり、またETNの危険性についてもある程度認識できました。2836HKについてはユナイテッドワールド証券で保有中ですし、INDIA:SPも野村で購入予定ですので年明け早々にでも野村証券にて確認してみます。

投稿: 藤原 | 2007年12月22日 (土) 22時27分

今INDIA:SPの「外国投資信託受益証券内容説明書」を読んでいましたが、その中の「投資の基本方針」部分に「MSCI India Index(ルピー建て)への連動を米ドル建てのインドのアクセス金融商品で目指します・・・・・本ファンドのような非インド人は直接投資することができません。したがって投資目的を達成するためにファンドは認可外国機関投資家の発行するIAP(目論見書記載の実績関連の特性を有するインデックスにリンクした証券である米ドル建てのインド市場アクセス金融商品)の売買、保有を行います。そしてインドの株式は一切保有しません。・・・」と有りました。2836HKも同様の内容が記載されています。どうも両商品ともETNで間違いないようですね。ありがとうございました。

投稿: 藤原 | 2007年12月22日 (土) 23時08分

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