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2007年12月 9日 (日)

今日の日経新聞

今日の日経平均の一面のコラムの「日本人とおカネ」の記事の一部に、興味を引く内容が書いてありました。

以下にその部分を引用します。

『興味深いデータがある。仮に東証一部の全銘柄を1989年のバブル経済絶頂期に買い、昨年まで17年保有したうえで売却したとする。この間の日経平均株価の下落率は5割。ところが、驚くべきことに最初に株を買ったお金は約16%増えた計算になる(日本証券経済研究所の試算)。配当や、無償で持ち株を増やす株式分割などが下落分を補うためだ。』

この文章、割と意外というか、違和感の感じる文章ではないでしょうか。私も、自前でデータ検証できる状況にないので、事実かどうか検証できません。

この文章を読むと、日経平均という指数に問題があって、TOPIX(東証株価指数)に投資していれば、日経平均よりも劇的に良いリターンが得られたのかと誤解される方もいらっしゃるかもしれません。それもおそらく違うと思います。

1989年12月末のTOPIX:2881.37

2006年12月末のTOPIX:1681.07

で、この17年間のTOPIXも42%程度やられています。(年率リターンは、▲3.12%程度)

記事にあるように、配当と株式分割の影響でしょうか。実際に16%程度のリターンがあったとすると、バブル頂点の東証一部指数銘柄の指数は、2006年12月には、3342.39程度にまで増えていたはずです。このときの年率リターンは+0.877%程度となります。

両者の年率リターンの差は約4%程度になります。

配当込みTOPIX指数のデータが手に入れば、もっと精緻に両者の差の因数分解ができるのでしょうが、この4%の差、配当の差にしてはかなり大きい数値です。日本の株は配当還元の水準は昔から低かったはずですし、確か直近数年の日本の株式指数に対する配当の水準は1~2%程度に収まっているはずです。

株式分割の影響もあるのかもしれませんが、物理的には株式を分割しても、株式会社の利益総額は何ら増えませんので、指数の作り方がおかしな計算になっていないかぎり、リターンに与える影響はなさそうな気がします。

ここで思い出すのは、J.シーゲル氏の「株式投資の未来~永続する会社が本当の利益をもたらす」の書籍です。氏も、アメリカ株で似たような分析を確かしていました。記憶が正確ではないのですが、S&P500か何かの指数銘柄全部にある時点で投資をして、指数の見直しによる銘柄入替を全くせずに、可能な限りもとの指数にあった銘柄を持ち続ける投資戦略を実行すると、中身が銘柄入替でどんどん変わり続ける指数のパフォーマンスよりも、年率で何ポイントかリターンが良くなるという結果が出ていました。

新聞を読んだ瞬間に、上記の東証株式指数の結果にも、この効果が表れているのではないかという気がしました。

J.シーゲル氏がこの現象をどう解釈、解説していたかも忘れてしまいましたが、おそらくは、この投資行動により、短期に勃興してあっという間に消えていく、長期投資での足を引っ張る新興企業が入ってこないので、リターンが高まるのだという理屈だろうと思います。もちろん、その要素も大きいのだろうと思いますが、100%個人的な意見では、このブログの過去のエントリーで書いたことのある、上場・昇格プレミアムが大きく影響を与えているのではないかという推測をしています。

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_784d.html

指数採用されている銘柄が、指数から外れることが判明すると、一部上場でなくなることによって、一部上場プレミアムが剥げ、価格は下落します。変わりに新しく一部上場する銘柄には、一部銘柄のプレミアムが乗った価格になります。すなわち、銘柄入替の度に、一部上場銘柄であることのプレミアム分だけ、指数に投資する投資戦略に負のリターン効果が発生するのではという推論です。

いずれにせよ、絶えず銘柄入替している指数への投資よりも、銘柄入替しない投資の方がリターンがよいという現象がUSでも日本でも確認できるということかもしれません。

ご興味のある方は、J.シーゲル氏の書籍を当たっていただくと、上記のことが確認できると思います。

血統書が外れた銘柄でもかまわないとして、むやみに血統書にお金を払わず、かつ非常に多くの銘柄を自分で管理するという猛者には、決して無視できない超過リターンを得る機会があるのかもしれません。

また、日経新聞や東京証券取引所が発行する血統書は、実はその血統書費用として投資家が市場で負担する価格ほどの見返りはないということを意味するのかもしれません。

興味深く、また深いものがありそうな話です。

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コメント

私も自分では検証していませんが、例えば
サバイバーシップバイアスはないでしょうか。
現在も上場されている銘柄を1989年に買ったことにして計算したとか。

そこまで酷くなくても、購入金額比率は時価総額なのか、1単位ずつなのか、あるいは同じ金額になるように買ったのか。
同じ金額になるように買うと、バブルで特に高かった株を時価総額ほどには買わないので、その分成績は良くなるかもしれません。

投稿: COLE | 2007年12月 9日 (日) 14時21分

COLEさん、どうもです。

正直、日本証券経済研究所がどんな計算をしたのかわからないので、おっしゃるような生存者バイアスや等金額投資などの誤った計算の仕方が混入されていないとは言いきれません。

J.シーゲル氏の書籍も、家の中にあるはずなのですが、本の山に埋もれて今のところ出てこず、内容の詳細を確認できません。でも確か、本にはその具体的な定義とやり方が書いてあったはずで、生存者バイアスや等金額投資といったナンセンスな比較方法はしていなかったはずです。何せ何十年も前からこの分野での著名な学者であったのですから、この手の初歩的な統計学的誤りを犯している可能性は非常に低いと思います。

たしかITバブルのときでしたか、日経新聞が日経平均指数の大幅な銘柄入替を行ってIT銘柄比重を大幅にアップさせ、その直後にITバブル崩壊が起こって、日経平均は必要以上に大きなダメージを受けたことがありました。指数作成者も、高値で飛びついて買う、感情的に振舞って愚かな投資行動をする投資者と同じ行動をして、指数のパフォーマンスを劣化させている恐れが多分にあると思います。

このような要素とどう付き合い、どう回避していくかも、深くて難しい問題だと思います。

それでは、今後ともよろしくお願いします。

投稿: VMax | 2007年12月 9日 (日) 18時17分

こんばんは。

配当込みのTOPIXはここにありますね。
http://www.tse.or.jp/market/topix/data/topixroj.pdf

私の計算では見慣れたTOPIXより16%ほど
結果が良くなりましたがプラスにはなりませんでした。
バブル絶頂期に東証一部の株をどうやって全部買ったかが鍵なんでしょうが結果はちょっと眉唾です。

投稿: 安売王 | 2007年12月 9日 (日) 19時33分

VMaxさん、ご返事ありがとうございます。
安売王さん、情報ありがとうございます。

J.シーゲル氏はそんな馬鹿なことをしていないと思いますし、実際2000年の日経平均組み換えについては、組み返せずに当時のまま持ち続けていたらその後どうなったかの計算結果をネット上で見たことがあります。
アドレスは忘れましたが、当然のごとく実際の日経平均より良かったです。

ただ、TOPIXの場合は、採用されるときは兎も角、除外ですと、上場廃止による除外だと持ち続けることも出来ませんし、2部降格にしてもそれなりの理由があっての降格ですので、除外される時点で時価総額が小さくなっていてTOPIX運用へ与える影響は小さいと思います。

投稿: COLE | 2007年12月 9日 (日) 21時51分

安売王さん、情報いただき、計算までしていただき、ありがとうございます。

配当要因では、両者の差はほとんど埋まらないようですね。

COLEさん、なかなかこの話もきれいに解明できそうにはないですね。
日本証券経済研究所の高い本でも買えばその中に書いてあるのかもしれませんが。

それでは、今後ともよろしくお願いします。

投稿: VMax | 2007年12月 9日 (日) 23時05分

おそらく配当を「同じ株に」再投資しているのではないかと推測。(シーゲルの本はこのやり方です)

投稿: MAT.N | 2007年12月10日 (月) 15時50分

MAT.Nさん、コメントどうもです。

配当を「同じ株に」再投資すると、劇的にリターンが良くなるかどうか、ちょっと感覚的にはわかりにくいですね。

理屈では、配当をたくさん出す一部の株がかなりとびぬけて高リターンである必要があると思いますが(この偏りがなければ配当込みTOPIXの結果に近似する気がします)、どれほどその偏りがあれば、このエントリーの記事の結果が成り立つのか、とんと見当がつかない感じです。

でも、可能性としてはあり得るのかもしれませんね。

それでは、今後ともよろしくお願いします。

投稿: VMax | 2007年12月10日 (月) 20時06分

はじめまして。乙川乙彦さんのブログ経由で来ました。
今ちょうどシーゲル先生の「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」(Stocks for the Long Run第3版の訳書)を読んでいるところですが、日本株はドル建てではちゃんと成長している、と(データを元に)書いてあって、「アメリカの投資家にとってはそれが正しいんだな」と納得した次第です。

投稿: えんどう | 2007年12月11日 (火) 12時49分

えんどうさん、はじめまして。

私は、シーゲル氏のStocks for the Long Runは残念ながら読んでいないのですが、そのような内容が書かれていたのですか。

機会があったら、確認してみます。

それでは、今後ともよろしくお願いします。

投稿: VMax | 2007年12月11日 (火) 23時24分

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