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2008年5月17日 (土)

日本人とおカネ

金曜日の日経新聞の一面の「日本人とおカネ」のコラムの内容で、いくつか興味深い内容がありました。そのポイントについて、つらつら感想を書いてみようと思います。

まず、コラムの冒頭の部分から。

(以下、引用)

「月1回の楽しみをしばらく控えます」。神奈川県の主婦・嶋田英子(仮名、53)は肩を落とす。毎月、小遣いのように配当を受け取れる分配型投資信託を購入したのが2年前。以来、そのお金で毎月、家族で高級レストラン巡りをしていたが、今年に入って基準価格が急落。購入時から受け取ってきた分配金の合計を損失が上回ったためだ。

(引用、ここまで)

これ、実在の話かどうかは不明(記事のための創作である可能性もあり)ですが、グロソブのようなファンドの分配金を単純なプラスアルファのリターンであるかのごとく認知して行動するパターンは、かなり一般的な認知の歪みのようなもので、だからこそグロソブのようなファンドが大ヒットになるのだと思います。要は、超低金利の日本で、年率で4%とか6%もの金利が得られるということは、「信用リスク、為替リスクその他、何らかの元本毀損のリスクを負っているはず」という、資産運用の世界の初歩の初歩である常識をきちんと腹に落とすことなく、運用商品を買っている人がいかに多いかということを物語っているのだと思います。

次は、コラムの中ほどの部分です。

(以下、引用)

野村アセットマネージメントなど投信の大手運用会社十社の4月の販売動向によると、解約額が新規の販売額を約670億円上回った。「資金流出」と呼ばれる現象だ。投信市場全体では資金流入となったが、4年6ヶ月ぶりの低水準にとどまった。

(引用、ここまで)

これ、資本主義社会が、飽きもせずバブルとバブル崩壊を何度でも繰り返しているのと同じく、投資信託の世界で飽きもせず何度でも繰り返されているパターンです。REITが上がっているとなれば、REITのファンドが設定されて、天井圏で山ほど投資信託が販売され、暴落の後、集まった資金は散り散りに。そのころには、中国、インドがサブプライム問題にかかわらず堅調で資金を集め、その後、また暴落して、それら資金はまたもや散り散りに。市場全体が低迷すれば、今回の引用記事のように、投資信託全体で資金流出の憂き目を見るわけです。

投資家が天井圏でテーマ性に基づき加熱した市場への投資行動を起こし、下落した後で逃げ出す行動を取るので、投資信託のリターンに比べて、その投資信託に投資した投資家の平均リターンは明らかに劣る結果になることが多いようです。おそらくは、「上がってるから買いましょう」方式の営業で捌かれる日本の投資信託の場合、投資家リターンは投資信託の原リターンに比べると、劇的に低いのではないでしょうか。私は日本の投資信託のこの手の統計を実際に見たことがないので、実際の数字は把握していませんが、実際の投資信託の残高の動き等を見れば、高値で資金が集まって下落で資金が散っていくパターンはほんと良く見られますから、上記の結果がありありと想像できます。

要は、自分の感情に踊らされた投資行動を取ると、投資のリターンは投資信託等のビークルのリターンを劇的に下回ってしまうことになり、これは人間心理から言うと、ある意味必然に近い結果なわけです。

「投資は長期でやるもので、下がったからといって売らない」と決めている人は、ただそれだけで、上記のような感情にまかせた行動を取る多数の市場参加者の結果を、労せずして上回ってしまいます。

もう、サブプライムによる市場波乱の底値からかなり上がってしまいました。まさに、「市場は懐疑の中で育つ」です。最も怖いところでの、「安心感が持てるまで、いったん市場を離れていよう」という行動のもたらすツケは本当に高く付きます。

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コメント

日本の投資信託販売層は主に高齢者が占めると思います。彼らお金は結構持ってますが、ある種分散投資・長期投資・積み立てが使いづらい層ですからリスク分散がとても難しい。でも相応の毎月来る収益は欲しい。この矛盾がこういう事件を引き起こしていると思います。難しいですね。

後・・・投資信託の保有者の収益率が市場平均の半分程度と言うのは米国でも見られる傾向だそうです。ですので人間の欲は世界共通ということなのでしょうw

投資で一定の収益を出し続けるというのは興味の無い世間一般にはとても難しいことなのかもしれません。

投稿: ROM人 | 2008年5月18日 (日) 01時54分

ROM人さん、含蓄のある補足コメント、ありがとうございます。

まさに、その通りですね。

投稿: VMax | 2008年5月18日 (日) 02時37分

なんと言うか、昔からの証券会社の営業方法と駄目な投資家の典型ですね。
コンプライアンスとか言いながら、目を覆いたくなる現状ですね。
しっかりと何世代にもわたり資産運用のできる会社を育てることが急務と思いますね。

投稿: はなまち | 2008年5月18日 (日) 17時21分

はなまちさん、コメントありがとうございます。

おっしゃるような、金融機関と投資家の関係は、まさに鶏と卵の関係に似ていると思います。

なかなか難しい話ですね。

投稿: VMax | 2008年5月19日 (月) 06時54分

市場は懐疑の中で育つ、
まさにおっしゃる通りだと思います。
日本の投資家も(少しずつですが)
何度かのアップダウンの中で、
「市場を貫く真実」を
学び始めているのではないでしょうか・・。

投稿: カン・チュンド | 2008年5月19日 (月) 19時11分

カン・チュンドさん、コメントどうもです。

金融機関にとっても、投資家にとっても、学びを進めることが望ましい方向性だと思います。

金融機関がテーマを煽る営業を続け、投資家は損に嫌気をさして投資を止め、日本全体が金融資産を生かせずに貧乏になっていくのは、やはり最悪のシナリオかと思います。

そうではなく、市場全体としては、進歩、進化していると思いたいですね。

投稿: VMax | 2008年5月19日 (月) 21時06分

分散された低コストファンドを買って放っておく。
こんな単純なことが何故できないのか。

もどかしい面もあり、だからこそ自分たちに利益が回ってくるという面もあり。
複雑な思いがします。

投稿: 水瀬 ケンイチ | 2008年5月20日 (火) 21時59分

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