不可解なレバレッジETFの動き
最近、レバレッジ型のETF、ならびにそれと同等の構造を持ち、長期投資することの意味自体が失われる構造をもつ投資ビークルの問題点を指摘するエントリーを書きました。
http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-391f.html
ふと、Seeking Alphaの記事を見ていたら、レバレッジ型のETFに関して、怪しい記事を発見しました。とりあえず、リンクしておきます。
http://seekingalpha.com/article/110446-strange-stuff-in-double-inverse-etf-land?source=feed
とても、全貌や背景をきちんと説明できそうにないのですが、記事によると、どうもRydex Inverse 2X S&P Select Sector Energy ETF(REC)、すなわち、エネルギーに関して2倍のレバレッジでショートを振るETFが、直近、NAVの殆ど(86%)を分配することになり、市場価格が暴落しているようです。
Yahooの市場価格は以下の通りになっています。
Date Close
12-12-08 12.21
11-12-08 12.03
10-12-08 12.05
09-12-08 100.28
分配額は$86.48だそうです。記事によると、このETFは2008年6月10日に取引開始され、スタートNAVは$75とのことですが、Yahooのデータで見ると、2008年7月22日から取引データが始まっていて、87.22がその日の寄り付き値になっています。???
上記情報の示す現象が正しいとすると、何が問題なのかはもうおわかりですね。USではShort Term Capital Gain Distributionはすごい高率の税金がかかるのではなかったでしょうか。実際には10%や20%くらいしかゲインのない投資に対して、投資元本の大半が強制的に返還されて、それに高率の税金がかかったのでは、たまったものではありません。あわてて売り払って、譲渡損と相殺できるのなら良いのですが、どうなのですかね。
日本からの投資家の場合は、USの投資家とは違ってそのような短期利益分配に関して不利な取り扱いはないですが、配当所得と譲渡所得の股裂き事象は発生すると思います。多額の配当所得による総合課税税金増加と譲渡損の分離課税による配当所得等との相殺不可という、まことに都合の悪い現象です。
正直、ここまで都合の悪い現象で、投資家を構造的に殺しに来る商品はめったにないと思います。こんな投資を繰り返していては、投資の神様でもお金が溶けてしまうのではないでしょうか。
何かの間違いであれば良いのですが・・・
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コメント
はじめまして。いつも貴重な情報をご提供頂き、ありがとうございます。
ETFにも危険なものがたくさんあるようですね。最近の市場動向では、金融セクターのレバレッジショートETFで益を出している人もいるようですが。。。
投稿: Tsugumin | 2008年12月13日 (土) 13時00分
Tsugminさん、はじめまして。
コメントありがとうございます。
個人的には、「金融セクターのレバレッジショートETFで益を出している」とかいった、この手の情報には注意した方が良いと思っています。というのは、この手の情報は、儲かったときには吹聴しても、損したときは全くその情報が吹聴されないからです。パチンコや競馬で儲かったという話は山ほど聞いたことがあっても、そのような話をする人たちが御殿を建てたという話は一向に耳に入ってこないのと同じことだと思います。
パチンコや競馬で御殿を建てることが構造的に難しいのと同じく、レバレッジETFで資産を作るのは、その仕組み上、恐ろしく難しいと思います。
その確率の悪さは、前のエントリーでくれた名無しさんのコメントが全てを物語っています。この方がおっしゃるように、EEMが1年で50%超下がっているのに、EEVは1年で100%上がっているどころか、25%も下がっています。
新興国株式市場の将来の大幅下げを当てた1年投資で▲25%、仮に外すと天文学的負けとすれば、このタイミング投資は恐ろしく不利な賭けであることがわかります。
この現象は、前のエントリーで書いた構造が原因ですから、ミクロな期間に限っても全く同じ構造にあります。なので、「短期勝負なら大丈夫」なわけは当然無く、パチンコ、競馬と同じく、このタイミング投資を繰り返せば繰り返すほど、この不利な構造が如実に結果に現れてくるはずです。
まさにお金をドブに捨てる行為に近いと思います。
こんなETFは、ぜひ日本には輸入しないで欲しいですね。
それでは、今後ともよろしくお願いいたします。
投稿: VMax | 2008年12月13日 (土) 19時14分