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2009年4月26日 (日)

米国銀行における負債の時価評価について

最近、米国銀行が負債を時価評価して利益を出しているといった新聞記事等を良く目にします。今日の朝の日経新聞にも、FRBのストレステストに関連してこの話題が載っていました。

当方、特にこの分野の専門家でもなんでもなく、単なる一素人なのですが、この会計取り扱いについて1点疑問というか、問題じゃないかと思う点があります。

その点について、一素人のつぶやきをつらつら書いてみようと思います。

まず、今日の日経新聞から関連記述の一部を引用してみますと、

(以下、引用)-----------------------------

Q 負債の時価評価でなぜ利益が出るのか。

A 企業や金融機関は自ら発行した社債などを返済義務のある負債としてバランスシートに計上する。社債の市場価格が下落した場合、発行企業はその分負債が減ったとみなして利益として計上できる。一般的に社債価格の下落は信用力の低下を意味し、資金調達が厳しくなるなど経営にはマイナスだが、帳簿上は社債価格の下落で利益が出るという奇妙な現象が起こる。

負債の評価益は現金の流入を伴わない。

Q 本当に利益といえるのか。

A 疑問の声がある。市場で社債価格が下落しても、償還時に発行体が実際に返済する金額が減るわけではないからだ。百億円の社債の時価が60億円に下がり、帳簿上で40億円の評価益が発生しても、償還時に百億円を返済する義務は変わらない。

企業側に裁量の余地が大きいことも不透明感を強める要因だ。シティグループは負債を時価評価して27億ドルの利益を出す一方、値下がりした保有資産の一部は逆に時価評価を見送り、約6億ドル分の評価損計上を回避した。利益押し上げに都合の良いように利用しているとの見方もある。

(以上、引用終わり)----------------------------

と、こんな感じなのですが、個人的な疑念というか問題と思う点は以下のようなものです。

「この会計処理は市場から問題行とみなされ、社債価格が大きく下落している銀行ほど、当期利益に良い影響を与えることから、現在の当期利益を銀行間で比較しても、相互の足元の状態を適切に比較することはできなくなる。」

負債の時価評価で得た利益は、一種の損失先送りであって、債券償還までに、いずれ同額を損失計上することが必要となるはずです。なので、本質的には、資産を時価評価せずに多額の含み損に回した銀行とそうでない銀行の当期利益を同列で比較できないのと同じく、この負債の時価評価も、問題行の当期利益をかさ上げし、健全行の当期利益には変化をもたらさないという傾向を有し、銀行間を同列で比較することがより困難になると思います。そうであれば、会計処理としては好ましくない手法なのではないでしょうか。

上記で引用した記事によると、米国ではこの会計処理が2007年から認められるようになったとのことですが、正直、なぜ会計結果の客観性と相互比較の可能性を減ずるような会計処理が米国や国際会計基準で認められるようになってきているのか疑問です。「時価評価なら正当」という短絡的な発想なのでしょうか?そんなことはないと思いたいですし、実際にそんな短絡的な決め方はしないと思うのですが。信用力が全く異なる他の企業との会計結果の比較可能性を思いっきり失わせるような会計方法は、純粋に問題だと私は考えてしまうのですが。不可思議です。

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コメント

こんにちは。
読ませていただいて同様の疑問をもちました。
きっとそれも含めた上で株価が動いているのだと思いますが、どうはかるべきかは難しいところですね。

投稿: うさみみ | 2009年4月29日 (水) 12時49分

全体として問題の多い負債の時価評価ですが、その評価益(負債時価の下落)を実現できないことはありません。たとえば、時価の下落した社債(負債)を、償還期日前に時価で買入消却すれば、利益を確定させることができます。

とはいえ、負債の時価が下がっているような困窮時には、キャッシュが貴重になりますから、簡単には実現できないでしょうけど(ただ、国から多額の資本=キャッシュを注入された海外の金融機関の一部は実施しているようです)。

投稿: あ | 2009年4月29日 (水) 15時53分

うさみみさん、あさん、コメントありがとうございます。

あさんの指摘は理論的には妥当だと私も思います。しかしながら、あさんも自ら言及されているように、あちこちのディビジョンで穴が開いてあちこちから追加資本が求められているビジネス状況で、債券市場にキャッシュを吐き出すことのできる銀行は非常に限られていて、おそらくは健全行にかぎられるのではないかと推測しています。

健全行は負債の時価評価などせずとも、実際に債券市場にキャッシュを吐き出して負債時価評価の効果をリアライズすることができるのでしょうから、その力がないかもしれない困窮銀行に負債の時価評価を認めるのはやっぱりミスリーディングなのではないかと思ってしまいます。

それでは、今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: VMax | 2009年4月29日 (水) 19時35分

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