こりゃ、だめそうだ。
rennyさんのブログ等でNYダウに連動するETFの東証上場のニュースが取り上げられています。
http://renny.jugem.jp/?eid=1247
いよいよ、日本の証券取引所においても、世界分散ポートフォリオの主軸となり得る真っ当なETFの上場か?と色めき立ったのですが、中身を見てかなりがっかりしました。
それは、信託報酬が高いからとかいう理由ではありません。
中身が純粋なETFではないからです。
このETFはNYダウ銘柄の実物で構成されているわけではなく、ファンドオブファンズ方式になっており、このETFが買い付ける投資資産は、シンプレックスNYダウジョーンズ・インデックス・トラッカー・ファンドとのことです。このETFが買い付ける当該ファンドも、NYダウ銘柄の実物を買うインデックスファンドではなく、先物等を利用してインデックスをトラッキングすることを目指す特殊なファンドです。
私ががっかりしたのは、このETFが買うファンドがトラッカーファンドであって、現物を買いに行くファンドでないからでもありません。このトラッカーファンドはシンプレックスという冠がついていることでわかるとおり、複数のマーケットメーカーが自由に組成して、ETFに現物供給することにより裁定機能を働かせることが出来無そうだと、一見して感じたからです。すなわち、ETFが本来持つ、ETFへの現物拠出が出来る形とすることによって、マーケットメーカーならだれでも裁定利益が取れる状況を作り、もって自動的にそのETFの市場価格が理論価格と大きく乖離しないような状況にするという、ETFがもつ優れた仕組みが実現できていないように思えるのです。
ETFの組成元のシンプレックスだけが、ETFが保有できる元資産を組成できるのであれば、このETFが理論価格と適切に連動するかどうかは、シンプレックスが市場の需給に応じて、タイムリーにトラッカーファンドを組成及び解体して市場の需給の変動を吸収できるかどうかにかかっているのではないかと思います。
果たして、これは可能でしょうか?また、それを期待して良いのでしょうか。シンプレックスが市場に張り付いて、タイムリーにトラッカーファンドを組成したり、買い取って解体したりといった労力やコストをかけてくれるのでしょうか?また、そこに市場原理が働かない(すなわち、複数の裁定行為者が競って裁定行動を取る状況が確保できない)とすれば、シンプレックスが、理論価格と市場価格の乖離をわざと放置したり、わざと理論価格と市場価格の乖離トレンドをあおって、法外な裁定利益を取り続けるといった悪意が働く余地は全くないのでしょうか?
今のところの情報だけでは確かなことはいえないと思いますが、現在私が理解している情報のみで考えると、このETFの構造では本質的にETNと同じく、市場価格が理論価格と大きく乖離してしまう可能性があるのではないかと思ってしまいます。また、NYダウは物理的に誰でも現物拠出可能な資産であるのに、わざわざ、他者には拠出不可能な資産でETFを構成することによる裁定機会の独占が、良くない行為の温床にならないかという危惧をも抱いてしまいます。
上記が当方の杞憂であって、何の問題も無い仕組みであれば良いのですが。またキワモノ、マガイモノなのか?との思いはぬぐいきれません。そうでないことを祈るのみです。
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コメント
私のブログでも紹介させていただいたのですが、シンプレックスAMが現物拠出を避けたのは租税条約の関係のようです。
どうも現在の日本の税制では現物外国株拠出のETF組成は実質困難な感じです。
投稿: 吊られた男 | 2009年12月11日 (金) 22時01分
吊られた男さん、コメントありがとうございます。
私もこの件について記された記事を読んだのですが、???だらけの内容でした。
確か米国との租税条約の関係が理由とされていたように思うのですが、米国と欧州は当然租税条約を結んでいるのでは?ヨーロッパ市場には米国よりも数多くETFが上場されていて、その中には当然のごとく米国市場ETFが存在します。欧州と日本は条件は同じだと思うのに、なぜ欧州はできて日本は出来ないのだろう?
あと、米国民は世界のどこにいてもIRSに納税する義務があるはずで、これは米国民に商品を販売する米系会社の源泉徴収義務に関する話で、米系会社でなければ全く関係ない話では?少なくとも、米国以外の会社が日本でETFを上場するときには何にも気を使う必要が無いはず。すなわち、これは米系会社が日本でETFを上場しづらい理由にはなっても、米系でない会社が日本でETFを上場できない理由には全くなっていないと思うのですが。もしそうだとすると、この理由を強調することは、多くの方に日本で米国市場ETFを上場することが不可能だと誤解を与える要因になってしまっていると思うのですが。
当方はすでに当ETFは投資対象外に分類していて、対象外としたものについては、調べる時間ももったいなく、できるだけそれをやらないことにしていますので、上記の???等を全く調べていないのですが、この業界、これらの点やその周辺についてわかりやすく市場に説明していく必要があるのではと思います。
少なくとも、私は今まで読んだ記事では全く納得できませんでした。あれで、日本ではまともなETFが上場できないのかと、数多くの人々が思ってしまうのは残念でならず、私は本当にそうなのか?と思い続けています。
それでは、今後とも、よろしくお願いします。
投稿: VMax | 2009年12月12日 (土) 10時27分