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2010年1月 9日 (土)

上場MSCIコクサイ、MSCIエマージングETFの配当金二重課税問題について

表題のテーマについて、非常に質の高い議論が展開されているようですので、当ブログでもちょっと取り上げたいと思います。当方、乙川さんのブログ経由で知りました。

http://otsu.seesaa.net/article/137793414.html

まず、この手の話題を話す場合、世界の各国の税金の取り扱い(と特に米国とその他の国々の差異)に関する話を最初に話す必要があると思います。なので、当方の不正確な知識ながら、それに最初に触れたいと思います。当方知識では、所得税に関して、米国は属人主義、すなわち、米国人は世界のどこにいて所得を得ようが、米国のIRS(Internal Revenue Service)に税金を支払う必要があり、属地主義、すなわち、国外に居住する国民の所得に対しては自国民に対しても原則的に課税しない、その他の多くの国の税制取り扱いとは一線を画しています。これが、今回のテーマでも関係する根本要因であると当方は理解しています。

二重課税について。

当方のような米国の証券口座を利用している者は当該米国証券会社にW8-BENという書類を提出して、日本に居住する日本人であることを届け出ています。これで、米国証券会社は、配当金に対して米国民に対する源泉徴収を適用せず、おそらくは米国と日本の租税条約に基づく10%という源泉徴収率を適用しています。その後、日本での確定申告で配当所得を申告し、所得税を納める必要がありますが、その際に外国税額控除を申告すれば、米国証券会社で源泉徴収された10%分を、日本での支払所得税から控除し、二重課税を回避することができます。

ここからは、完全な当方の推測ですが、中田さんのブログで触れられている通り、当該ETFにおいては米国人が購入することも可能なため、上記の租税条約に基づく10%を適用せず、我々が米国証券口座でW8-BENを提出しないときに適用される30%といった高率の源泉徴収がなされるのではないかと推測します。このETFに日本人が投資すると、純粋な日本での投資行為ですから、外国税額控除も適用されず、日本の証券会社でさらに10%、将来は20%の配当金に対する源泉徴収が適用されるのではと推測します。

これはかなり痛いです。米国株式に限った話で、その他の国の株式では率は異なるだろうとは言え、米国株式の配当金については、1-(1-0.3)*(1-0.1)=0.37、あるいは1-(1-0.3)*(1-0.2)=0.44、すなわち、足元では37%、将来は44%の税率がトータルで適用されてしまう計算になってしまいます。MSCIコクサイのおよそ半分程度が米国株式だったと思いますのでこの影響はけっこうでかいと思います。

なぜ、こんなことになってしまうのでしょうか?シンプレックスの時も思ったのですが、なぜ日本でETFを上場するときに、米国民に対する米国会社の源泉徴収義務や米国民のIRSに関する所得税申告義務に気を使う必要があるのでしょうか?米国のIRSが税金徴収権を持たない日本の会社がIRSから源泉徴収金を支払えと言われるはずもなく、源泉徴収が適切になされていない世界中の商品から生まれる所得に対して、IRSに対して適切な所得申告をして正しい税金支払をしなければならない義務を負っているのは米国民であって我々ではありません。当方には、全く主権の異なる日本国の証券市場に上場するETF内で、なぜ米国の所得税制度やIRS、米国民の税金申告等に配慮した商品設計、取り扱いが強いられるのか、全然納得がいきません。これは、新手のETF市場浸透の妨害策ではないか?、あるいはこれほどまでに日本は米国に対して主権の主張すらできない国なのか?とうがった見方をしてしまいます。本当になんとかならないのでしょうか?

上記の問題の根本原因に対する推測は当方の現在の見方であって、的を得ていない可能性もあります。読まれる方はその点を踏まえた上で読んでいただければと思います。しかし、やっぱりこの業界、このポイントについてしっかりとマーケットに対して説明して欲しいと思います。

あと、先物で運用しても、配当金分は先物価格中で調整されますから、パフォーマンスが悪化するということは原理的にないものと当方は推測しています。

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コメント

先物で運用すると、理論上は短期金利分のコストがかかりますね。現在は低金利なので影響が少ないですが、将来金利が上昇した場合、大きなコスト要因になるかもしれません。

投稿: dell | 2010年1月22日 (金) 00時57分

dellさん、コメントどうもです。

先物で運用すると、確かに理論上は短期金利分のコストがかかります。その代わり運用元本の殆どは短期金利での運用が可能となるはずです。つまりこの要素はオフセット要因ですので、理論的に殆どコスト要因にはならない(すなわち、現物で運用しようが先物で運用しようがリターンは殆ど変わらない)と理解しています。

もし、これが変わるようだと、裁定取引で鞘が抜けることになると思います。そんなうまい話はないのが、身も蓋もないですが、現実かと思います。

以上、当件についての個人的な見解を記します。

それでは、今後ともよろしくお願いいたします。

投稿: VMax | 2010年1月22日 (金) 22時08分

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