リーマンショックを経て-バリュー効果の検証(2)
前回の検証に続き、今回も当ブログの左側で掲載しているおすすめETF等のうちバリュー系のETF等について、リーマンショック以後を含むパフォーマンス分析を行ってみようと思います。
前回は、新興国ETFのDEMとEEMを比較しましたが、当ブログでは小型株効果の期待できる、US除く先進国小型株、新興国小型株、US小型株のETFを過去取り上げていますので、これらのETFを通常の時価総額加重のインデックス運用ETFとパフォーマンスを比較してみます。なお、今回の目的は、バリュー効果の検証であって、小型株効果の検証ではないので、同じ小型株に投資する時価総額比例投資のETFとの比較を以下では行うこととします。
まず最初にUS除く先進国小型株のETFとして当方も保有しているDLSと、比較可能な類似のUSを除く世界の先進国株式市場の小型株に投資しているETFのうち、ある程度の運用期間のある、GWX、SCZ、IFSMの3つのETFのパフォーマンスを調べてみました。
これら4つのETFのうち、一番運用期間の短かったIFSMに合わせ、2007年12月27日から現在までのパフォーマンス(配当効果反映後数値、USYahooFinanceより)が以下の通りでした。
2007/12/27-2011/09/16 期間中累積リターン数値
DLS -17.5%
GWX -15.7%
SCZ -19.5%
IFSM -21.3%
上記の通り、DLSは同様の投資対象の小型株ETF3つに対し、1つに負け、2つに勝ちという結果でした。うーん、はっきりしない玉虫色の結果ですね。
次に行きます。次は新興国小型株のETFとして当方もかなり保有しているDGSと、同じく新興国小型株が運用対象となっている時価総額加重ETFのEWXを、また運用期間の短いEWXの方に合わせ、2008年3月22日から現在までのパフォーマンスを比較してみます。(配当効果反映後数値、USYahooFinanceより)
2008/3/22-2011/09/16 期間中累積リターン数値
DGS +10.7%
EWX -10.6%
今度は、はっきりしすぎるほどはっきりした異なる結果となりました。(上記は符号記載間違いではありません。)この大きな結果の差異は前回のDEMとEEMの非常に大きなパフォーマンス差異に通じる結果かもしれません。少なくとも新興国市場では小型株も中大型株でも、リーマンショック前から現在までのパフォーマンスはバリュー系優位とのわかりやすい結果です。
次はUS小型株です。
当ブログでもおすすめしたUS小型バリュー株ETFのIWNと、同じくiSharesのUS小型株ETFのIWMを比較してみました。これらiSharesETFの運用期間は非常に長く、2000年からの運用ですが、2000年直後から比較するとITバブル崩壊等の効果のせいか、IWNの圧勝になってしまって、リーマンショック以降の動きが完全に埋もれて分からなくなってしまうため、当ブログで初めてIWNを取り上げた2007年3月13日から現在までのパフォーマンス比較(配当効果反映後数値、USYahooFinanceより)を以下では行ってみます。
2007/3/13-2011/09/16 期間中リターン数値
IWN -13.4%
IWM -1.5%
(IWO +8.8%)
今度は逆の結果となりました。US小型株ではリーマンショックを含む直近のパフォーマンスでは時価総額加重型ETFであるIWMの方がパフォーマンスが良かったということになります。これは興味深い結果なので、追加でIWO(US小型グロース株ETF)のパフォーマンスも調べてみました。結果、上記の通りとなり、すなわち、直近ではUS小型株市場はグロース株相場だったことが推測されます。これは、個人的には全く把握していませんでした。データに当たってみて、「へー、そうなんだ。」と思った次第です。
ちょっと最近のUS小型株の市場の機微に詳しくないため、何が起こっていてのグロース相場か、今のところわかりませんが、興味を惹かれる結果です。
ご参考のため、IWNが運用を開始した、2000年7月28日から上記分析期間の直前の2007年3月13日までの運用パフォーマンスの結果も以下に記載します。
2000/7/28-2007/3/13 期間中累積リターン数値
IWN +120.3%
IWM +66.1%
(IWO +14.0%)
どこでバリュー相場とグロース相場が切り替わったのかは調べていませんが、上記の通り、以前の期間中は完全なバリュー相場で、IWNの圧勝であったことがわかります。過去の様々なデータでも、バリュー相場とグロース相場は当然のことですが交互にやってきていて、バリュー株ビークルの投資は何年も報われないことが当然に起こり得ます。過去の世界の株式市場の統計上、これらの年単位のグロース相場、バリュー相場を何度も何度も超えた長期のデータで、バリュー株への投資の方が優位な結果が出ています。
バリュー、グロース投資のデータを利用するときに当方が厳禁と考えているのが、数年単位でバリュー優位ならその市場への投資を続け、バリュー不利な直近結果でバリュー株ビークルへの投資をやめてしまったり、逆のグロース株ビークルへの投資を始めてしまったりすることです。これをやってしまうと、市場環境の悪いとこ取りになってしまい、市場のバリュー効果はあったのに、自身の投資は時価総額比例投資に負けてしまったという最悪の結果となりかねません。10年20年と腰を据えてバリュー株ビークルに投資する腹積もりがない、あるいはそれを続ける精神力について自信のない場合は、やってはいけない投資だと思います。
これについては、以前のエントリーでも書いていますので、ご参考のために以下にリンクを貼っておきます。
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コメント
市場によってグロース相場かバリュー相場かが違という結果は面白いですね。ここから得られる教訓はリスクを減らすためには、やはり地域分散も重要ということでしょうか。
US小型でグロース優勢となっているのは、金融セクターの割合の違いの影響かなと思います。
Russell 2000 Growth Financial Service 9.53%
Russell 2000 Value Financial Service 35.39%
詳しく影響をみたわけではなくて単なる印象ですが。
投稿: 吉村 | 2011年9月17日 (土) 20時04分
吉村さん、コメントありがとうございます。
いただいたコメントの前半も後半も、おっしゃる通りですね。後半については、リーマンショックの期間のfinancialのエクスポージャーの違いと考えれば、違和感のない、すっきり腑に落ちる理屈です。この可能性は非常に高そうですね。
当方のブログ中で不足しているところをきれいに補っていただいた感じです。ありがとうございました。
それでは、今後ともよろしくお願いします。
投稿: VMax | 2011年9月19日 (月) 21時01分