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2011年11月

2011年11月19日 (土)

アマゾンのタブレットビジネス(その2)

前回、アマゾンのタブレットビジネスについて、いわゆる端末を損失が出る価格で販売して、後にコンテンツ収入によって回収するビジネスに関する個人的見解を書いてみました。

今回は、前回の観点から一転、前回あえて書かなかった点について、書いてみようと思います。

今回のアマゾンのKindle FireはAndroidというGoogleが開発したOSは使用していても、Googleのソフトウェアも検索も、何も使用しておらず、またアプリマーケットもアマゾン独自のマーケット利用となっていると認識しています。この構造では、Googleにとってなんの儲けにもつながらないどころか、このKindle Fireにお客が流れることによって、Google検索やアプリ購入といったトラフィックがGoogleを介さなくなることとなり、広告収入やアプリ、音楽等の仲介収入が削られるといった、いわばOSを作ったGoogleにマイナスの影響を与えかねない存在になります。

また、199ドルの販売価格のKindle Fireの製造原価については、さまざまなニュース等で予測額が発表されていますが、200ドル近辺から250ドル当たりといった各予測数値となっています。注意しなければならないのは、製造原価が200ドルだったとしたら、アマゾンはその端末を250ドルや300ドル払わなければ仕入れることはできないだろうということです。これも当たり前のことですが、利益なしでアマゾンに端末をOEMで納入する業者はいないと思います。まだOEMではなく自前ブランドであれば、市場制圧のために赤字覚悟で販売する可能性はありますが、OEMの場合は、赤字価格や利益なしのただ働きでアマゾンに端末を納入する、製造業者のインセンティブが見つかりません。

この構造は、タブレット市場ではなくiPad市場と揶揄されている当該市場で、今なんとか踏ん張っているローエンドのタブレット群を殺す結果を導くと思います。自前で開発、販売するとアマゾンとの競合上、利益なしの価格で売らなければならなくなるのですから。ハイエンド市場ではモトローラ、HTC、サムソン、RIM、HPと、iPadを切り崩せず、討ち死にして屍累々となっており、なんとか生きているローエンド市場はこれから、アマゾンを代表とするコンテンツ紐付きのタブレットに価格で対抗できず、徐々に死んでいく展開となる可能性が濃厚です。

また、直近Googleはタブレットとスマートフォンの両方で使用される新バージョンのAndroid4.0を開発、発表していますが、当然のことながら、アマゾンのタブレットはこの最近までオープンにされなかった最新OSは使用しておらず、スマートフォンに最適化された古いバージョン2.Xが使用されているようです。もし、アマゾンタブレットがAndroidタブレットで最も売れるタブレットとなり、ソフト開発者がアマゾンのタブレットに使用されているバージョン2.Xに最適化されたアプリをこぞって開発するようになれば、せっかくより快適なタブレット体験ができ、かつスマートフォンにも利用できる最新バージョンOSでの、タブレット専用アプリがいつまでたっても整備されないということになります。これは最新のAndroidOSを用いてタブレット開発、販売していこうとする製造業者群にとっては、自身の開発、販売するタブレット端末のアプリ面の利便性が一向に向上せず、10万ともいわれるiPadのタブレット専用アプリと比較しての劣位が一向に改善しないという、非常に頭の痛い状況をもたらします。

すなわち、アマゾンのKindle FireはGoogleのAndroidOSを使用してはいても、Googleにとっても、AndroidOSを使用してタブレット開発している製造業者にとっても、いわば商売敵であって、アマゾンタブレットが成功すればするほど、GoogleとAndroidを利用する多くのタブレット製造業者にとっては脅威になってくる面が大きいのです。

ただ、この構造はアマゾンにとっては当然の帰結だと思います。自分がアマゾンであれば、タブレット端末でAppleやGoogleにコンテンツ販売を牛耳られ、他社に商売の運命を左右される未来はまさに悪夢です。音楽にしろ、アプリにしろ、電子書籍にしろ、Googleにお伺いを立て、Googleの利害に反することはできず、一方的にOS開発打ち切りといった状況にさらされるリスクのある選択は取り得る選択肢ではなく、そのような他社に従属するビジネスモデルではなく、自身で自分の運命をコントロールできる方法がないかと思うのは非常に自然なことです。だから、オープンになった古いAndroidOSを使って、Googleが関与しない形で、Google関連のソフトウェアのインストールを排したGoogleフリーのタブレットをアマゾンは開発したのだろうと推測します。

このような足元状況を踏まえて、いつものように自分勝手に、タブレット市場について将来を予想すると、ハイエンドのiPadとローエンドの中華系タブレットの現状から、ローエンド側は中華系格安タブレットからアマゾン等のコンテンツ紐付きタブレット業者のタブレットに移行していく可能性が高いと考えています。

結局、HTCとかサムソンとかモトローラ等の既存のスマートフォンでのビッグプレーヤーは、ハイエンドでもローエンドでも、タブレット市場では確固たる場所を確保するのが非常に難しいと思います。

ただし、これは、タブレット市場に限った話ではなく、MP3プレーヤーですでに起こったようなことがタブレット市場でも起こるだけだと思います。MP3プレーヤーでは結局、AppleのiPodとiPod Touchが市場を占拠しており、日本ではかろうじてSonyがローエンドを数で確保していて、あとは質に劣る韓国等のその他プレイヤー群がなんとか息をしているといった極端な市場状況です。また、これはMP3プレイヤーや、現在および将来のタブレット市場でのみ起こることだとは、当方は考えていません。スマートフォンの世界でも、HTCやサムソンといったAndroidOS系のメジャープレーヤーも、中国等の格安スマートフォンに押されて将来、劣勢になっていくと当方は予想しています。実はHTCの第4Qの会社の売上予測自体も、市場の事前予測を割り込んでいるというニュースが最近ありました。(日本語訳された記事は確認していませんが)

構造上、同じOSを使用するのであれば、一定品質水準を確保できる端末をもっとも安く製造できる業者が市場支配するようになっていくだろうことは明らかですから、スマートフォンでこの動きがいずれ起こるだろうと考えていましたが、足元ではUS記事でこの兆候が見え始めているという状況だと思います。

タブレットの話に戻りますが、このアマゾンの動きは、GoogleとAndroidを使用したタブレット端末製造業者にとっては、ある意味死活問題であって、アマゾンが成功すればするほど、Googleのタブレット構想が崩壊するリスクが高まります。最新のOSを開発しても、その最新のOSがのったタブレットは売れず、型落ちとなったオープンの古いOSベースでアマゾンがタブレット商売を行い、GoogleがOS開発を頑張れば頑張るほど、アマゾンに広告収入、アプリ収入、音楽収入、電子書籍収入を持っていかれてなすすべなしとすれば、OSのタブレット対応を頑張っていくインセンティブがGoogleから失われるはずです。

順当に考えれば、この方向に物事が進むとすると、いずれアマゾンはタブレット用の独自OSでタブレットを開発することが必要になると思います。そこまで考えているからこそ、アマゾンは今、HPが捨てたPalmOSを拾うことを検討しているのだろうと思います。

タブレット市場も、あいかわらず将来予測したくなる面白い足元の展開です。

ところで、日本のスマートフォン市場ですが、ドコモはどこでギブアップするのでしょうか。

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