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2011年12月

2011年12月25日 (日)

アマゾンのタブレットビジネス(その3)

タブレット市場の将来を占うのに、アマゾンのタブレットビジネスはかなりのキーファクターになると考えているため、すでに今までのエントリーでかなり個人的に考えていることを書いてきましたが、今まで書いてこなかったことを中心に、さらにエントリーを重ねてみようと思います。

今までがそうであったように、例によってマーケティング視点で考えると、新たな商品カテゴリーが発生したときにそのカテゴリーが発展するためには、追随企業群は非常に重要です。数え切れないほどの追随企業群でひしめきあって、そのカテゴリーが倍々ゲームで増えていき、先発企業のシェアは落ちていくも、先発企業の売上高も市場の勃興を反映してうなぎのぼりに上昇していくのが、発展する新しい市場カテゴリーが成長するときの典型的な姿だと思います。その中で多くのMeToo企業は、自らが付加価値を創造していないという理由によって利益を生み出すことの困難に直面し、市場を生み出した先発企業が、シェアは落としつつも圧倒的な利益率と利益額を誇っていくのが、また典型的パターンかと思います。

もしかするとその先発企業をはるかに上回る付加価値を創造する新たな会社により主役交代があり得るかもしれませんが、それよりもさらに遠い将来、このカテゴリーが陳腐化するほどの新たな革新的な商品カテゴリーが生まれることにより、このカテゴリーが衰退するというパターンの方が典型的に起こる姿かと思います。

そういう意味で言うと、アマゾンのタブレットの出現前は、上記の新たな商品カテゴリーの発展のための典型的なパターンになっておらず、正直Appleが強すぎ、他の競合他社の市場での存在感が小さすぎて、却って市場の発展速度が遅くなっている感がありました。アマゾンのタブレット参入によって、曲がりなりにも上記のようなマーケティング的に考えた理想の商品カテゴリー発展パターンに近づいたかと思います。

なので、今の姿は前よりはずっと良い姿になっているとは思うのですが、それではこのまま順調に商品カテゴリー発展の標準形を維持したまま発展していくのでしょうか?

これに関連して、アマゾンのタブレットビジネスについて、あまりUS記事他に書かれていないことを中心に自身の考えを書いてみようと思います。

巷の記事では、アマゾンのKindle Fireの売上に注目し、「ついにAppleのiPadと勝負のできるタブレットが現れた!」という、かなり単純な論調が多いのですが、アマゾンのこのタブレットビジネス形からして考えれば、正直売り上げ自体にあまり意味がないと思います。最近、RIMMがタブレットビジネスで何百億円もの損失を計上したというニュースがありました。タブレットビジネスの不調により、彼らはいま、製造したタブレットを200ドルかそこらの価格でたたき売りしなくてはならなくなっており、それにより発生する損失を計上する必要に迫られたわけです。

アマゾンの足元状況も、このRIMMと基本的には同じだと思います。彼らも端末を損の出る価格で販売しているのですから。違うのは、端末の購入者から将来コンテンツを買ってもらい、その初期損失を回収し、利益に転ずるという希望があるかないかだけです。なので、アマゾンがそのタブレットビジネスで成功できるかどうかは、初期の損失が回収できるほど、顧客がコンテンツを買ってくれるか、そしてその回収の速度がどれほど早いか遅いかにかかっているわけです。この当初のビジネス戦略からして、資本とキャッシュを多大に要する戦略なのですから、十分回収できなくても、回収速度が遅くても、ビジネスとして失敗してしまうことになります。目の前のキャッシュが尽きた時点でこのビジネス戦略は破たんしてしまいますから。初期の大きな損失が回収できるかどうかきわどいビジネスで借金してしまったら、ビジネス収支がマイナスで発散してしまいそうです。逆に言うとアマゾンはそうならない範囲に、すなわち会社の体力の許す範囲に、能動的に販売ボリュームをコントロールするはずです。

なので、半ば自明なことではありますが、アマゾンタブレットがどれだけ売れたかよりも、初期の損失額がどれだけで、顧客がどれだけの速度でどれだけのコンテンツを消費してくれて、何カ月でその損失が回収されプラスになるかが非常に重要になります。この指標は当然のことながらアマゾンは開示してくれませんし、そもそもタブレットで機能するかどうかもこれから判明することですから、少なくともこのビジネスの未来はいまのところ不透明と言わざるを得ないと思います。

例えば、端末一台あたり5,000円の初期損失だった場合、その損失を回収するには、アマゾンの税引き前コンテンツ利益率が4%と仮定したら、一台当たり5,000円の25倍の125,000円もの買い物をしてもらわないと、水面下から浮きあがれないわけです。アマゾンの低利益販売ビジネスを考えれば、そう簡単なことではないと思います。(これも、あまり着目されませんが、アマゾンは直接端末製造していませんので、製造原価で商品を手に入れることは不可能であるだろうことに注意が必要です。これは最初のエントリーでも書きました。)

また、ここでのある意味の矛盾は、市場でメジャーな存在となればなるほど、そんなにアマゾンで多額の買い物をしない、一般の顧客群を拾ってしまうことにつながることです。低価格タブレットの提案により市場拡大に貢献して市場自体が大きくなればなるほど、この点と、アマゾンの資金的制約が、そのアマゾン自身がその大きくなった市場でメジャーな地位に君臨することを阻む要因となります。

すでに、アマゾンは500万台程度の売り上げで、何百億円と初期損失を積み上げているでしょうし、それがその他の本業の利益を吹き飛ばしている状況だろうと思いますので、アマゾンの資本やキャッシュ規模で考えても、この戦略の将来推移はかなり微妙であるかと思います。

ただ、新たなカテゴリーにおける追随業者は、恐ろしく高い確率で低利益率に苦しむ結果になるのは既定のパターンですので、アマゾンもこの枠組みを逃れる戦略の絵は描けなかったという、至極当たり前の姿なのかもしれません。

このタブレット市場の十分な発展のためには、アマゾンだけではなく、Nookやまだ見ぬ強力な追随業者が必要なのではないかと考えています。

また、これはアマゾンに限った話ではありませんが、Appleと戦う競合他社は、OSと端末を同時に開発し、自身のデジタルマーケットを管理していないという、AndroidOS使用に伴う競合上の劣位と戦っていくことが必要となる宿命があると思います。Air Play、iCloud、iTunes Match、Siriと、Appleは次々とOSと端末を一手に開発し、自身のデジタルマーケットを有するという優位性を軸にした戦略で勝負してきます。アマゾンに限らず、Google、サムソン、HTCやT-Mobileといった、Androidにかかわる関係企業は、OS会社、端末製造会社、キャリア、コンテンツ販売会社それぞれが、いったいだれがどうやってこの脅威に立ち向かっていくのか、絵が描けずに途方にくれている感があります。同じ方向でAppleを上回る付加価値を生み出すのも1つの方法ですし、スキームの違いを踏まえたまったく違う軸を持った武器で戦うのも1つの方法だと思いますが、その方向性と可能性がいまだ見えてこない状況かと思います。

Googleにいたっては、検索広告市場という自社の主力分野で、Appleに将来の自社の命運を握られるのはいやだから、タッチパネル式スマートフォンの市場でAppleの背中を追いかけてきたのに、どうやらAppleの向かう先はSiriをベースにした、検索で広告収入の見込めない、自社の要らない世界であったことに今気づいて呆然としているような状況かと。自社が生き残るために追随してきたのに、その先の理想の到達点は自社の要らない世界だったなんて、笑い話にもなりません。進むも地獄、引くも地獄では、将来の会社のかじ取りはまさに困難を極めると思います。

残酷ではありますが、これが自身のビジョンに基づき能動的に市場創造しない追随会社が直面する、典型的な現象でもあると思います。

タブレット市場を含めたタッチパネル式端末の市場は、上記の意味でまだまだ非常に不安定な状態だと思いますし、だからこそ、この市場のウォッチは面白みにあふれていると思います。

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2011年12月22日 (木)

WisdomTreeの四半期配当金

本日、標題のETFの配当金が出ていました。

http://www.wisdomtree.com/about/pdf/WisdomTree-ETFs-Declare-Quarterly-Distributions-2011-12-795.pdf

例によって、しっかり配当金再投資をしておきます。

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2011年12月 7日 (水)

iShares Drafts Emerging Dividend ETF

たまには投資系ブログとしての王道の話題でも。

http://finance.yahoo.com/news/iShares-Drafts-Emerging-indexuniverse-1784818625.html?x=0

上記リンクの通り、ETFの最大手のiSharesが新興国と、アジアパシフィックの高配当株式に投資するETFを開発するようです。

新興国の高配当株ETFについては、当ブログでWisdomTreeのETFであるDEMやDGSを過去ご紹介し、また最近もその時価総額比例ETFに比較した高パフォーマンスについてのエントリーを書きました。

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/post-2879.html

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2011/09/2-8bcd.html

今回、冒頭の記事について取り上げたのは、先日当ブログで取り上げたような、データから新興国でも自然に機能しているものと推測される、バリュー投資の一種と解釈できる高配当株ETFの選択肢が増え、ETF最大手の一角から販売される可能性が高くなったことから、日本の証券会社でETFを用いた国際分散投資を行っている方々にとっても、日本のオンライン証券会社にこれらの最大手会社からローンチされるETFの取り扱い要望を出していただくことによって、高配当株ETF投資がより身近になる可能性があると思ったからです。

個人的には、新興国投資はWisdomTreeのETFと決めており、その他の選択肢は考えていませんし、またWisdomTreeの方が実績の面でもより確かではあると思うのですが、やはり日本の証券会社が取り扱いをするにはハードルが高そうなので。個人的にはiSharesであれば、中身を見るまでもなく、しっかりとした構成でインデックスを組成してくれて、バリュー効果をちゃんと獲得するETFを出してくれそうですし。(このあたりは、実際に投資される方は自己責任でご自身での納得のいく調査をお願いいたします。)

話は違いますが、新興国高配当株ETFのカテゴリーも、最初にこのカテゴリーの市場を作り上げたWisdomTreeが独り勝ちの様相を示していることが、上記のリンク記事内容から容易に推測されます。ここでも、最初に市場を作り上げた先駆者が圧倒的に強い、一種のマーケティング原則が機能した結果が見て取れます。

ほんとにどこの世界も、起こることは一緒だと感じます。

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