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2012年4月 4日 (水)

今現在のマーケティング的な注目点

例によって、当方の継続的なウォッチ対象である、スマートフォン及びタブレット市場で今、個人的に着目し、どうなるか注目している点について、好き勝手につぶやいてみようと思います。

一年以上前のUSベライゾンのiPhone導入発表のニュースから、「いわゆる世界の最先端市場で起こったことは、ある程度のタイムラグを置いてその他の市場でも類似の形で起こることが非常に多い」と言う、ある意味マーケティング的な原則や法則とでも言うべき現象の枠組みで判断し、auやその他の国のキャリアの将来のiPhone導入を予測してきましたが、足元の状況を総括してみても、この枠組みのとおりの現象が継続して各国で起こっているものと判断できます。

言わずもがなですが日本ではauがiPhoneを導入し、USではスプリントが、中国ではチャイナテレコムがその後iPhone導入に至っています。

それだけではなく、この世界各国のキャリアがiPhoneを導入しなければならなくなる理由である、iPhoneを取り扱わないキャリアから取り扱いキャリアへの恒常的な顧客の移動が、今も各国のiPhone未取り扱いキャリアを襲っています。日本ではドコモが毎月のようにMNPで顧客流出の憂き目に遭いつづけていますし、USではやはり未だiPhoneを取り扱っていないT-Mobileが一人負けの顧客流出を続けています。中国でも3Gが弱いという特殊要因もあると思いますが、チャイナモバイルがやはり一人負けの顧客流出に遭っていることが記事で確認できます。

そして、 USではAT&Tでもスプリントでもこの第一四半期はすべてのandroid等のその他スマートフォン機種合計よりもiPhoneが足元2012年第一四半期では売れており、VerizonでもiPhoneとその他すべてのスマートフォン機種合計売上が同程度の比率になっているというUS統計記事が届き始めています。US市場におけるVerizonのiPhone導入を契機とした動きは、非可逆的なAppleとその他市場のプレイヤーの間の一方向のシェア変動につながっています。

今も各国のiPhone非取り扱いキャリアは継続的な顧客流出に直面し続けているのですから、当然のことながらここまでの動きはこれからも続いていくものと予想しています。
すなわち今の注目点のひとつ目は、いつドコモがiPhoneを導入するか、また、世界一のキャリアであるチャイナモバイルがいつiPhone導入に踏み切るかということです。

やっとUSのアナリストも、西ヨーロッパや新興国で、Appleがスマートフォンのシェアを増やし始めていることに言及し始めています。上のマーケティングの法則を知っていれば、それが統計上数字に現れてくるよりもずっと前からその現象が起こるだろうことが予測できるのに。前にも本質的に同じことを書きましたが、なぜ統計数値を追うだけでなくその先を読もうとしないのか不思議でなりません。

もう一つの注目点は、標準特許に関係するものです。今ちょうど、EUがモトローラを標準特許乱用の疑いで正式調査し始めたというニュースが報道されています。標準特許乱用の疑いでのEU正式調査開始はサムソンに続き2社目です。前のエントリーで書いた、すべての会社に公平公正にライセンスすると約束した上で標準として業界に採用された特許を、特定他社の商品を差し止めるために利用するといった暴挙の疑いで正式調査されているわけです。結局のところモトローラの狙いは、つまるところApple等の標準でない特許を、自身の標準特許を盾にしてただで手に入れようという作戦であって、マーケティング的に表現すれば、新しい市場を創造した先駆者の特許技術を模倣することによってその市場創造の成果の分け前の一部を横取りしようとした上で、その行為を特許に関する権利上も正当化しよう、あるいは特許上の対価を支払わず踏み倒そうとする行動となります。そのために自身の標準特許を使ってその目的を成し遂げようとしているわけですが、それがうまくワークしないだろうことが誰の目にも明らかになってきたわけです。

EUの正式調査の後に有罪であることが確定すれば、グローバルターンオーバーの10パーセントを上限とする罰金が待っています。標準特許は、いかなる会社も差別せず公平にライセンスする宣言をしたからこそ、標準技術としてその業界に採用されたのに、それで業界全体が後戻りできない状況になった後で、その状況を利用して最初の約束、前提を反故にして差別的にライセンスを取り扱い、特定一部の会社が商品を販売できないようにしようとするのは、世間一般で言う詐欺行為に相当すると思いますから、有罪確定したら、自身の標準特許のライセンス収入では到底挽回できないほどの多額の罰金支払いになると想像します。そうでなければ、すなわちリスクが限られていてうまく行ったときのリターンがでかいなら、値千金を狙ってこのような標準特許を用いた反競争的行為に踏み出す業者がこれから列をなすこととなり、規制当局にとっては全く持って逆効果ですから。

ここで、当方の注目する2点目の点です。上記の展開になると、Googleのモトローラ買収の主要な目的であったモトローラ保有特許が、対Apple、対Microsoftでちっとも役に立たなそうだということが明らかになってきます。それどころか、買収後もこの手の無理筋のごり押しを辞めずに続けると、買収後のGoogle本体の売上まで、罰金の対象になりかねないと思います。買収で一兆円近く払う会社の純資産価値はその半分未満で、かつここのところのビジネスは、Verizonで端末が売れていたときからろくな利益が出せず、売れなくなってからは赤字の、ビジネスとしての何の価値も示せていない状態です。考えようによっては、マイナス6,7千億円の状態からスタートする会社の、最も期待している特許が他社対抗上ほとんど価値を生み出さないとすれば、Googleにとってこの買収をする意味はあるでしょうか?

このまま買収して、なんの芽も出せずにこの会社を清算する最悪の状況を想定すると、スタートの約マイナス6,7千億円から、更にEU当局等への罰金支払いのマイナスと、会計上評価し切れていなければ残存特許等資産価値分のプラス、ビジネス継続前提資産の清算価値による毀損部分のマイナスと、そんなところでしょうか。どうにも大怪我せずに終われそうな気が全くしません。

今、中国が審査中のこの状態で買収を辞めるとすると、違約金の2000億だったか、そんなオーダーの損失で終われるらしいですから、モトローラの特許があまり他社対抗上役に立たず、標準特許の微々たるライセンス収入前提の価値しかないのであれば、買収を辞めた方が傷はかえって浅いかもしれません。

ということで、果たしてこの状況下でGoogleは買収を完遂するのかどうなのか、注目点だと思って見ています。

ここに注目している理由は、この結論で、Googleの経営者の力量が判断出来る可能性があると思っているからです。
並の経営者なら、モトローラの特許部分があまりワークしないとしても、Appleの並み外れた利益に魅惑され、「自社も端末製造を手がければ、同様の利益が創出できるかも」と血迷ってしまって買収を成立させてしまうだろうと、私は見ています。
端末を一年使ってもらって、やっと一台当たり10ドルやそこらの収入を得るGoogleに対し、キャリアと端末契約した瞬間に、まだ端末を実際に製造する前から、一台当たり500ドルといったオーダーの利益をAppleは生み出しているのですから、これは、上から落ちてくる雫で飢えをしのいでいる横で、ステーキをがんがん食われているようなもので、並の経営者なら間違いなく血迷って転んでしまうだろうと思います。

でも、言うまでもないことですが、OS会社が端末製造したくらいで魅力的な利益が生み出せるのなら、HPのwebOSも頓挫しなかったでしょうし、RIMMもここまでの苦境に陥ってないでしょう。iPadがiPodの再来に成りつつあるのは、決してただの先行者利益ではなく、21世紀はじめからiPodプラスiTunesで種まきを始めたおかげで構築できた著作権コンテンツやアプリ、そこで積み上げられた製造ロジスティクスや販売、マーケティングノウハウやブランド価値、ビジョンに基づく能動的市場創造といった全てを含めた総合力が実っているのだと思います。OSと端末を統合的に作り上げれば、それでApple類似の利益が生み出せるなどという考えは、ただの幻想でしかないと思います。Appleをこの方向で追随して対抗していくのは、実際はイバラの道でしょう。

今のGoogleは、Facebookを追いかけ、Appleを追いかけ、Dropboxを追いかけるといった、新しいマーケットを創造してそこで先駆開拓者として君臨するビジネスではなく、そのようにして現れた先駆者を追いかけるフォロワーのビジネスを各所で展開する企業になっています。これは、マーケティング的にみると危ない兆候で、かなりの強者であっても、このように振る舞い始めた会社は滅びへの一本道を下って行くケースが非常に多いと思います。

なので、逆にこの状況で買収を取りやめて損切りし、他社の後追いをするのではなく、自身の独自の強みにフォーカスして将来のビジネスを切り開いて行くという決断ができる経営者であれば、その経営者は間違いなく並み外れて有能な経営者で、少なくともGoogleを次なる繁栄に導くためのポテンシャルを持っていると思うのです。

というわけでこの買収の最終的な着地点に注目しているのですが、果たしてどうなりますか。見ものです。

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