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2012年5月 4日 (金)

アマゾンのタブレットビジネス(たぶん最終)その他

ゴールデンウィーク真っ最中です。また、日本はお休みの真っ最中に、ある意味非常に興味深く、また個人的にはある意味かなり残念なニュースがUSでありました。

http://finance.yahoo.com/news/amazons-kindle-fire-shipments-slump-194956206.html

アマゾンのKindle Fireの直近四半期売り上げシェアが、4Qの17%弱から1Qは4%へガタ落ちとのことです。アマゾンは公式にはKindle Fire等の売上台数を公開していないので、どのような調査ベースの数字なのかわかりませんが、記事を読む限り、信憑性はありそうです。

数字上、このアマゾンのKindle Fire減がそのままAppleのiPadのタブレット内シェア上昇につながっている格好です。

これだけでも、事実は小説より奇なりという話だと思いますが、以下の記事もそれに負けず劣らずインパクトがあります。

http://seekingalpha.com/article/557151-kindle-sales-plunge-made-amazon-com-s-gross-margin-look-better?source=yahoo

アマゾンのKindle E-ReaderのE Inkスクリーンの発注情報からは、アマゾンのKindle E-Readerの売り上げのガタ落ちが推察されるとの記事です。アマゾンの4Qでのスクリーン発注が結果的に多すぎて、次Qである1Q以降の4カ月間で全く発注がなかったということのようです。

この2つの記事と情報がおおむね正しいとすれば、アマゾンに起こったことは、下記のような感じかと想像します。
1.昨年の4QでKindle Fireを引っ提げてクリスマスシーズンの販売に臨んだが、アマゾンの経営陣の想定を大きく逸脱するKindle FireとKindle E-Readerのカニバリで、まずKindle E-Readerの売り上げがガタ落ちとなった。
2.4QのKindle E-Readerの売れ残り分は翌年1Q分の販売に回されたが、1Q以降にスクリーン発注が再開されなかったことから、売れ残り分は販売減少後の四半期売上水準に比してかなり多そう。
3.それだけではなく、1QではKindle E-Readerと売上がカニばっているはずのKindle Fireの売上もガタ落ちになった。

もし、Kindle E-Readerを買っていた顧客が4QではKindle Fireを買っていたのに、1Q以降ではKindle Fireを買わなくなったとすれば、もともとのKindle E-Readerのニーズが今は社外流出している可能性が高いと思います。

なので上記の情報がある程度正しいとすると、今足元のアマゾンのKindle Fire+Kindle E-Readerの売り上げは、もしかすると、Kindle E-Readerのみを販売していたときより却って減少しているかもしれません。

Kindle FireがKindle E-Readerを殺し、そのKindle Fireがたった3カ月で急激に失速するとは、アマゾンにとってこれ以上ない最悪のシナリオです。どこまでこの姿が正しいかは不明ですが、どう転んでも間違いなく経営上は、良い状態ではないと思います。

タブレットがE-Readerを食う姿は、スマートフォンがミュージックプレーヤーやデジカメを食う姿に似て、ある意味必然かもしれませんので、これ自体はいたしかたないと思いますが、E-Readerを食って大きく成長していくはずのKindle Fireタブレットが急失速しているとしたら、アマゾンはただただ、自身でE-Reader市場の死期を早めただけになってしまいます。

もともとが、AppleやGoogleに新しいタブレットデバイスを制されて、将来の有望市場である電子書籍、ミュージック、ビデオ、クラウドといった各市場を牛耳られてしまうことに懸念があって踏みこんだタブレットの世界だったのだろうに、ここまで経営判断が裏目に出るとは。

まさに、事実は小説より奇なりを地でいくような話です。

タブレット市場に話を戻すと、Kindle Fireがたった3カ月でシェアが17%から4%に落ちてしまうほど、急激に売れなくなってしまっているとしたら、この商品の将来性は疑問どころか、ほとんど希望を見いだせないと思います。製造原価を割り込んでの販売で、早くも需要側の天井がやってきたわけですから、マーケットの需要の弱さは深刻です。単純にかつ乱暴に表現して、250ドルかけないと作れないものが、200ドルで販売されていても、もはや客が集まらないとすれば、これまでの販売済みのお客はこれを50ドル(あるいはそれ以上)の得と考えたのに、これから直面する多くの客はこれを付加価値マイナスの行為、すなわち損失と考えることを意味するのだろうと思いますので、アマゾンが作り出したKindle Fire商品でのプロポジションがいかにニーズの小さい商品だったのかということになると思います。

例えば3Gをつけたり、画面を10インチにしたりといった単純な改善策で事態が改善するなら良いのですが、そういう端末をも擁するモトローラ、サムソン、ソニーといったその他の企業群がタブレット販売全般で一様に苦しんでいるのですから、これらの単純な策が解決策になる可能性は低く、アマゾン経営陣にとって事態はかなり深刻である可能性が高いと思います。

ここまで、アマゾンのタブレットビジネスを注目してきましたが、そこで考慮したアマゾンの資本制約すら心配の必要がないほど、売上が立たない状況に急速に直面している感じです。コンピュータの専門会社ではないアマゾンがこの事態を改善させる有効な策、例えば商品のカスタマーエクスペリエンス向上等といった手立てをどれだけ有効に行えるかはかなり個人的には疑問に思っていますので、上記の状況に間違いなければ、当面はタブレット市場発展のキーとしてのアマゾンの重要性は落ちたと判断します。

これら一連の要素のおかげで、すなわちKindle E-ReaderもKindle Fireも売れなかったため、初期負担が少なく、直近のアマゾンの四半期決算での内容は投資家予想より良かった可能性が高く、これはある意味とても皮肉な結果です。アマゾンが見た、将来の自身のビジネス展開に必要なビークルにおいての戦略的なムーブメントが見事に失敗に陥っており、このままではアマゾン経営陣が忌避し、回避しようとした未来がやってくる可能性が著しく高くなってしまっているのですから。

今アマゾンの株価は実績PERにして190倍とか、とんでもない水準で取引されており、なおかつ直近四半期決算での投資家予想を上回る利益で、Kindle Fireをはじめとする端末販売によるコンテンツ売上増をはやしてか、足元で株価上昇しています。しかしながら、上のような情報が事実をある程度的確にとらえているとしたら、コンテンツ販売増どころか、何百億かのタブレット初期投資が回収できるかどうかが暗礁に乗り上げているのみならず、将来端末エコシステムを牛耳られる他社の顔色をうかがいながらのコンテンツ販売を強いられることとなるアマゾンの将来はお先真っ暗というリスク満載の足元状況かと思います。

この状況でPER190倍とか買い上げられる投資家の神経は、少なくとも私には全く理解不能ですが、素直に、わからないものには近づかないようにしておこうと思います。

今、アマゾンKindle Fire対抗商品でサムソンをはじめ、Androidお膝元Googleまでもが、格安タブレットで勝負しようとやっきになっているところでこの事態です。各社、どうするのでしょうか?もはや、いきなりニーズの底が見えたカテゴリーでも、車は急には止まれず、Android各社入り混じった泥仕合がここからも見られるのでしょうか?

上記のアマゾンに関する情報は、また例によって連休中のため、日本語の記事を私はまだ目にしておらず、連休後に翻訳され日本に紹介されるホットな情報ではないかと思います。(たぶん2番目の記事のような、裏で本当に起こっているかもしれないことに触る記事は日本では出現しないだろうと思いますが。)前もそうでしたが、この手のパターン、多いですね。

また、会社が積極的に売上台数等の情報開示しないケースにおいては、いかにそこに悪い情報が隠されていることが多いかということを改めて強く認識させる事例です。ほんと、何の売上情報も出さず、好調です、経営陣は満足してますって言う会社、多いですから。

他の話題ですが、昨日、サムソンが次世代スマートフォンの発表を行ったようで、記事を斜め読みしたところでは、AppleがiPhone4S等で導入した、Siri, iTunes Match, iCloudに相当する機能を有するとのこと。外観ではなく、今度はソフトの分野でのMeTooコピーがこの業界で進行しているようです。

この手の追随会社の無批判にも思えるレミングのような追随行動は、どこの市場でも見られる姿かと思います。このブログで散々見てきた投資商品系の世界でも、グロソブ、2重通貨建預金、ブラジル通貨ヘッジ等をはじめとする、山ほどのはやりの商品形が、レミングのように行列を成して各社に追随され、一方向に業界商品が流れていく姿がまだ記憶に新しいことと思います。

で、結局最初に新しい市場を確立した先駆者しかまともに利益が出せないパターンも、まるで一緒かと思います。

マーケットは人間が作り出すものであるだけに、どの業界でも似たようなパターンになるのでしょうね。

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