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2012年6月19日 (火)

水平分業vs垂直統合

今回のテーマは、例によって、当方が着目しているスマートフォン、タブレットの分野の話であって、経営戦略等で出てきそうなそのまんまの話ではありません。

つい、昨日Microsoftが自前タブレットを開発するという電撃発表を行ったところです。

http://online.wsj.com/article/SB10001424052702303703004577474910029263198.html?ru=yahoo&mod=yahoo_hs

もう、タブレット市場では、次々とiPadキラーが現れては消え、現れては消えの繰り返しで、直近ではアマゾンがやはりこの戦いに敗れ去った感が満載ですので、今見えている次のiPadキラー候補は、もうMicrosoft以外に見つからないような状況になっていると思います。(そういえばGoogleタブレットもありましたね。でもこれは既に敗者となったアマゾンのKindle Fireに今更ながら戦いを挑む商品かと。これはAndroidを利用し、かつGoogleをハブるOSの使い方をされるアマゾンに対するGoogleのけん制の意味合いもあり、特殊な例だと思います。)

今のタブレット市場の状況を恐ろしく的確に表したのが以下のリンクです。

http://allthingsd.com/20120618/good-luck-with-that-tablet-microsoft-comic/

正直、あまりに的確すぎて、思わず笑ってしまいます。

と、ここで表題に戻りますが、今回のマイクロソフトのタブレットの発表には、ある意味、決定的な意味があると、当方は考えています。それは、言うまでもないことではありますが、今回マイクロソフトは自らのこれまで成功してきた手法、すなわち自身はOS開発に専念し、ハードはそれぞれのメーカーに任せるという水平分業によるビジネスモデルをはみ出して、自身の冠を乗っけたハードを開発し、Apple式の垂直統合による高品質な顧客体験を自社で作り上げる方向に舵を切ったところです。

要は、水平分業では、タブレットの世界で今、Appleが実現している高度なハードとソフトの統合がもたらす優れたカスタマーエクスペリエンスに対抗することは難しいと、足元でMicrosoftが考えているからこのような発表になるのだと思います。

マイクロソフトのこのような自社ハード開発の動きは、今回のタブレットに限った話では必ずしも無く、例えばミュージックプレイヤーのZuneとか、ゲームマシンのXBoxとか、この会社は自前ハードの開発自体は多少の経験を持っていると思います。

巷でよく言われるのが、Windowsという水平分業のビジネスモデルが過去パソコン市場で圧倒的なシェアを確保したという過去の事例を基に、水平分業のもたらすハード会社間の競争こそが優れた成果と商品をもたらし、垂直統合モデルであるAppleのiPhoneやiPadは、いずれ水平分業のAndroidやWindowsPhone等に敗れるという、一見まことしやかに聞こえる主張です。

もし、この主張が正しいとすれば、今回のMicrosoftの動きはどう解釈するべきでしょうか?水平分業のAndroidタブレットがiPadにことごとく敗れている事例については、どう理解するべきなのでしょうか?

個人的意見としては、難しく、かつ固定的に考えすぎなのではと思います。水平分業であろうが、垂直統合であろうが、優れたカスタマーエクスペリエンスを相対的安価で広い市場に提供できれば、そのスキームが広く世の中に受け入れられるだけのことだと思っています。今は、価格と性能とアプリ等エコシステムやブランド価値等全て総合的に考えて、iPadと競争できるほどの完成度のその他タブレットがないので、iPad一強になってしまってるのだと思います。

このマイクロソフトの動きは、マーケティング的に見れば、自社が強みを発揮する水平分業のビジネスモデルから、Appleが長年牙を研いできている一方で、自社が経験を積み重ねていない不慣れな垂直統合ビジネスモデルに踏み出そうとする動きです。いわば、相手の大得意な土俵でがっぷり四つに組むようなものです。マーケティング的に見た追随者が典型的に追い込まれるポジションで、勝算が非常に薄いのが典型的な姿かと思います。

とはいえ、今のところiPadキラーとして残っている戦士はもう他には見当たらないと思いますので、タブレット市場を面白くするために、またさらなる同市場の発展を願って、マイクロソフトにはおおいに頑張ってほしいものだと考えています。(個人的にどちらかに賭けろと言われれば、有無を言わさず、Zuneのような運命を辿るほうに賭けますが)

この間書いた、Googleのモトローラ買収の件ですが、全くもって平凡な結果(予定通りの買収完了)に終わりましたが、世の中に名経営者などめったにいないのですから、圧倒的高確率で起こる方の結果が、当たり前のように起こったものと個人的には考えています。

直近、個人的に注目していたのが、果たしてGoogleがAppleのSiriを追随してくるかどうかでしたが、以下のリンク記事が事実を反映したものであるなら、その答えはもう出ているようです。

http://thenextweb.com/google/2012/06/19/google-is-pushing-forward-on-its-siri-rival-as-voice-assistant-competition-heats-up/

なぜ、この点に注目していたかと言えば、まさに今回の表題に関係する話だからです。本来ならば、OSに統合されるべき新たなインターフェースなのですから、本来これはGoogleの担当です。しかしながら、この新しいインターフェースは、以前当ブログで書いたように、いわばGoogleキラーとも言える、従来のインターネットの検索方法による情報アクセス方法を凌駕し、Googleの広告収入の機会を奪う将来ポテンシャルを持つものです。Googleとしては、これを積極的に追随、推進して進歩させていくことに少なからずの躊躇があるはずと想像します。

そうこうしているうちに、水平分業のその他の関係者、例えばキャリアのドコモが、しゃべってコンシェルで、また端末メーカーのSamsungがS-Voiceと、しびれを切らしたようにAppleのSiri対抗機能をスマートフォンに搭載し始めています。垂直統合モデル側の先行サービスに対し、水平分業モデル側が整然と追いつけず、関係者がそれぞれ思い思いに重複してサービス準備を始めるという、混迷状況が起きつつあります。

ここでも、水平分業モデルが後手に回る姿が見て取れます。上のように簡単に考えれば、この混迷により、水平分業モデルが作る商品が混乱をもたらしかつ相対的に劣ったサービス提供にとどまれば、水平分業モデル側の敗北でしょうし、複数のサービスが競争して、より優れたものが水平分業モデル商品の中で生き残ってスタンダードとして確立し、それが垂直統合モデルによる成果よりも優れたサービスであれば、それが市場で優勢となっていくのでしょう。

この点が着目点として面白いのが、本来の水平分業モデルの中での担当者となるべきGoogleが、自身のビジネスモデルの否定につながりかねないため、単純によりよいものを追求しようという立場に立ちづらいところです。ここが、この話の状況を複雑にしていて、将来の姿を読みにくくしているところだと思います。

個人的には、やはり世の中の流れには逆らうことができず、Googleは音声エージェントに舵は切りながら、今の自身のビジネスモデルを崩壊させない方向を同時に探っていくという、非常にあいまいな態度を見せるのではとないかと予想しています。

なので、単純にGoogleに音声エージェントを担当させて任せることもできず、また単なる土管屋となることを回避したいキャリアも、単なる機械屋となることを避けたい端末メーカーも、頑張ってAppleと並走し続けなければならなくなる展開を予想します。この方向だとAppleにOS内での高度な統合を追求されると非常に辛そうですね。本来、真正直に頑張らなければならないOS担当のGoogleが斜に構えた態度になってしまうと、この分野では後手後手にならざるを得ません。

この態度は、自らの強みが弱みにすげ変わってしまう、まさにマーケティング的に見たときに典型的に見られる強者が敗北していく過程のひとつだと思います。前にも本質的に同じことを書きましたが、パラダイムが変わるときには、自社の商品が自社の過去の強みを壊していくくらいの行動に自ら進めなければ、他社に自社の強みを壊されてビジネスが終わってしまうのが典型的に起こる姿です。なのでここは、将来も継続的な要注目点だと思っています。

そういえばiOS6でiPadにもSiriがやってきます。ぜひ、早く日本でもレストランや観光場所等がSiriで探せるようになって欲しいものです。

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