住まい・インテリア

2007年5月 5日 (土)

マイホーム購入という不動産投資

おそらく、知っている人にとっては何を今さらという感じでしょうが、表題について軽く書いて見たいと思います。

似たようなことは、確か橘玲氏の書籍か、AICの書籍かどちらか忘れましたが、それらの書籍にも書かれている有名な話です。

でも実生活で、これに類するやり取りをすると???という反応を受けることが今だに多く、いわゆる金持ち父さんのロバート・キヨサキ氏の言うラットレースにはまり込む大きな要因が、今だにここにあるのではないかと思います。

ここで主張したい主旨は、「マイホーム購入は経済的にはれっきとした不動産投資である」ということです。

すなわち、「マイホームは自分で住むのだから、不動産投資ではない」というのは、少なくとも経済的にはおもいっきり間違っているという主張です。

ここで、簡単な例を挙げます。まずは不動産投資から考えます。

物件総額:5000万円(上モノ:4000万円、土地:1000万円)

自己資金:1000万円

借入金:4000万円

返済期間:30年、借入金金利:4%

でさくっと計算すると、毎月返済額は18.87万円程度になりました。

すなわち、この不動産投資でキャッシュフローから利益を得られる良い不動産投資であるためには、少なくとも家賃収入マイナス毎月必要経費が18.87万円を超過している必要があります。(この毎月のキャッシュフローがプラスなのが、まさにロバート・キヨサキ氏の言う、お金を運んできてくれる良い投資の最低条件です。)

ここで、仮にこの物件から得られる家賃収入が18.87万円だとします。この不動産投資を行う事業者をAさんとしますと、Aさんは毎月家賃収入18.87万円を得て、それを借金返済に右から左に回します。

ところが、Aさんが不動産投資をしようと購入したこの物件に、よんどころのない事情で自分が住むことになってしまいました。偶然ではありますが、借りていたアパートの賃料がこれも18.87万円だったので、このアパートの賃貸契約を解消して、この物件に引っ越して自分で住むこととしました。

するとあら不思議、不動産投資物件に自分で住むこととしたので、予定していた家賃収入がなくなってしまって、18.87万円の減収になってしまったのですが、その代わりにいままで借りていたアパートの家賃18.87万円を支払う必要がなくなったので、そのお金を不動産の借金返済に回すことが出来ました。

すなわち、Aさんは不動産投資していても、物件に自分で住んでも、将来キャッシュフローは全く同じで差がないのです。これは、とりもなおさず、マイホーム購入と不動産投資は、少なくとも経済的には全く同じ投資行為であることを明確に示していることになります。

実際は将来の賃料上昇等の要因等があって、上の計算のように単純ではありませんが、その場合にも、例えば借金返済方法を階段式にする等の調整をすると、全く同じ議論が維持できます。

ここで気がつくのは、もし不動産投資とマイホーム購入が経済的に同一の行為だとしたら、不動産投資では毎月のキャッシュフローを大きなプラスにすべく努力して良い物件を血眼になって探すのに、マイホーム購入時には、賃貸に回したときの毎月の想定キャッシュフローを考えなくて良いのだろうかということです。

マイホーム販売のセールスマンの必殺トークの1つは間違いなく、「借りるよりも買ったほうが毎月の負担は安い」といったトークだと思います。でも、おそらく純粋な毎月返済のみでこの状態にすることは難しく、実際はボーナス返済込みのプランでやっとこさ、賃貸家賃よりも毎月返済額を低くするのが実態かと思います。

それはすなわち、「マイホーム購入者は高確率で、不動産投資としては想定毎月キャッシュフローがマイナスの、駄目な不動産投資物件に投資している」という帰結にならないでしょうか?

もしかすると、これはマイホームを欲しがる一般大衆の心理が作り出す超過スプレッドなのかもしれません。この超過利益がおいしいから、たぶん不動産業者は、その不動産物件を賃貸に出さずにマイホームの欲しい個人に売却するのでしょう。マイホームの夢に浸っている個人の側とは対照的に、逆サイドの販売側には冷静な経済合理性が働いており、収益還元価格よりもはるかに高く売れるから、おそらく彼らは個人に売却するのです。

ロバート・キヨサキ氏が言う、キャッシュインフローをもたらす良い投資ではなく、逆に想定キャッシュフローがマイナスの非常に不利な投資案件に、勤労人生の初期に高レバレッジでつかまってしまうから、一般にラットレースから抜け出すのが非常に困難になってしまうのではないでしょうか。

当然、マイホームを持つ精神的価値といったものがあることも重々承知しており、そのために大きなプレミアムを支払って当然という考え方もあるかと思いますが、少なくともその精神的価値と、本質的に不利な投資案件に高レバレッジでつかまってしまい、フィナンシャルフリーダムは大きく遠のいてしまうというネガティブ要因を天秤にかける必要があるのではないかと思います。

そうしなければ、本質的にラットレースから抜けられるか否か、あるいは抜けようとするか否かという重大な決断を、マイホーム購入時に無意識に、またそうと知らずに行うことになってしまうかもしれません。

「マイホーム購入は経済的には不動産投資と同じ」という理屈は、知っていて損はありません。というか、主体的人生を歩むためにはぜひ知っておかなければならない理屈なのではないかと思います。

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