日記・コラム・つぶやき

2012年7月12日 (木)

アマゾンのスマートフォン戦略

当方が長らく着目しているスマートフォン、タブレット市場で最近、にわかに話題になってきているのが、表題のアマゾンのスマートフォン市場の参入のうわさです。

例えばAsusとの端末製造協業の話だとか、関連特許の市場からの購入や、他社携帯端末関連幹部の採用といった話が今、ニュースで踊っています。

以前は単なる噂話レベルであったのが、状況証拠的な情報が集まってきて、だんだん信憑性が高まっている状況だと思います。

この件に関連し、あまりUSでも日本でも話に挙がっていないのが、これが実質はGoogleAndroid陣営対Amazonの戦いであると考えられるという点です。

タブレットの話でも以前書いた話ですが、Amazonがもし、古いAndroidOSを用いて自前アプリ市場と自前の音楽、ビデオ、電子書籍等エコシステムを擁した上で便利な総合エコシステムを構築してしまうと、お客もアプリのデベロッパーも広告主も、それぞれの利益のために、GoogleのAndroidではなくAmazonの古いAndroidベースのエコシステムを目指すことになり、ここで少なくともGoogleのOS供給会社とインターネット上の広告元締めとしての立場は崩壊し、Googleがタブレットの世界でOSを真剣に開発、改善して市場浸透していく意味を失います。

GoogleのNexus7は、可能性のあるこの未来を回避するための、Googleの最大限の努力の結果だと思います。

Googleが7インチタブレットを目指したのは、そのAmazonによる独自エコシステム構築、拡大という、Googleにとって最悪の未来を回避するための最大限の努力であって、自社戦略の死という結論を回避するための、ある意味必然的なディフェンシブムーブと言えると思います。

他方、Amazonにとっては、別にGoogle殺しのためにわざわざこのような行動を採っているわけでは当然なく、単にGoogleやAppleに自社の将来のデジタルビジネスの命運をゆだねることになる、受動的な未来を回避したいという一心だと思います。

だから、リアクティブなタブレット分野のGoogleのアクションとは違って、Amazonの7インチタブレットへの当初フォーカスは、Googleだけではなくタブレット市場を占拠している先発企業のAppleをもターゲットとしたものだったと思います。価格を主要なキーコンペティティブアドバンテージとして、Amazonの体力の許す限りのタブレット市場の制覇をもくろんだはずです。

しかしながら、その結果は、Amazon幹部の望むほどの市場の制覇にはつながっておらず、Amazonの現在のKindleFire端末の売上レベルでは、自社の保有する燃焼可能な資本を使いきることすらできない状況だと推測します。

これでは、自らが回避したかったデジタル関連販売ビジネスの他社による制覇が実現してしまい、Amazonにとってまことに困った未来が待っています。

そこで、次の一手ですが、この一手をインチダウンのスマートフォンの方向に進むのは、Amazonにとって至極現実的でスマートな判断ではないかと個人的に考えます。

以下にその理由を記します。

(理由その1)

アマゾンが使用するであろう、古いAndroidOSにはそれに適した数多くのアプリが存在し、開発者にとって、最小限の努力でAmazonのアプリエコシステムに参加できる下地があると思います。タブレットの世界では、大きな画面に適したアプリがそもそもAndroidエコシステムには実質的に存在せず、Appleにタブレット分野でアプリの世界で戦いを挑むためには、優れたタブレッド用アプリを、AndroidOSのアプリ開発者に、流用でなく1から作り上げてもらう必要があります。これは、おそらくはある意味、無理難題で敷居の高すぎる話ではないかと思います。この観点で言うとスマートフォンの世界はAmazonにとって非常に敷居が低く、相対的に御しやすい状況にあると思います。AndroidのスマートフォンはOSが分断化していて、最新AndroidOSに最適化したアプリよりも、古くて今の市場で最もメジャーなAndroidOSバージョンに最適化されているアプリが、最も多く市場に存在しているだろうと推測されることもAmazonにとって追い風だと思います。AndroidOSの深刻な断片化がAmazonにとっては有利に働くわけです。

(理由その2)

世の中には価格が最も重要で、そのためには最新のOS機能だとか最新のサービス等をあきらめても良い、あるいはあきらめざるを得ないという顧客の市場が必ず存在します。しかもスマートフォンの市場では、この市場が果てしなく大きいことはもう証明されている事項だと思います。先進国でも貧富の差の激しい国々の下位市場や、新興国市場等、Amazonが価格で勝負しようとしたときには、このフロンティアは果てしなく広大です。Amazonが資本を燃やしてデジタル市場の顧客ベースを広げようとしたときには、ある意味最適な採り得る方向性ではないかと思います。

上でAmazonがスマートフォンに向かう合理性について、大きく2つの理由を挙げましたが、このような理由によりAmazonのこの戦略の方向性は同社にとって非常に親和的なものになっていると思います。

他方で、当然のことながら、障害やハードルもあると思います。キャリアとの関係や顧客へのリーチの問題、タブレットに比したスマートフォンのデジタルコンテンツの購買傾向の弱さ等といった少なくないハードルをクリアしていく必要がAmazonにはあり、決して簡単なことではないと思います。それでも、Amazonにとっては、燃焼可能な資本は全て燃焼させて、自社のモバイル顧客ベースを広げなければ、彼らの将来はお寒いものになってしまうリスク満載なのですから、出来るだけ確実に彼らの燃焼可能な資本を燃焼させて顧客ベースを広げることのできる可能性の最も高い手段を選ぶのは、非常に合理的な選択、判断だと思います。

他方、Googleにとっては、タブレットで直面した、AndroidOSを使われてかつGoogleをハブられる形でのエコシステムを他社に構築されるリスクに、スマートフォンの分野でも直面することになるわけです。ますます、GooglePlay対Amazonエコシステムの戦いを、将来目にすることができること請け合いだと思います。

誰でも利用可能なフリーなOSとして市場拡大を図った戦略のコインの裏側に、自由であるがゆえに、OS開発会社を完全にハブり、OS開発会社にとって何のメリットの無い形のエコシステムを他社がそこで構築する自由も存在します。これはまさに皮肉であり、コインの表裏と言うのが最適な事象だと思います。

Amazonは今後はタブレットではなく、スマートフォンの世界で注目に値する会社になってきていると思います。将来の市場変動の可能性とポテンシャルを有しており、今後の動向が楽しみです。

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2012年7月 5日 (木)

Microsoftタブレットの矛盾とGalaxyNexusのUSでの販売差し止め

Microsoftタブレットのコンセプトの矛盾について、前にエントリーを書きましたが、同じような議論を展開しているUS記事がやはり出てきているようです。

http://www.thestreet.com/story/11606376/1/windows-8-redmond-we-have-a-problem.html?puc=yahoo&cm_ven=YAHOO

仕事に使えるタブレットが膝の上で使えない矛盾が、上記記事中でも指摘されています。その他のポイントについても、Outlookに関するポイント等、興味深い記事です。

そういえば、やはりGoogleはAppleのSiriを追随してきましたね。全くもって予想通りの展開です。これからGoogleがSiriと競合しながら、どうやって自身のビジネスモデルを壊さない道を模索していくのか、見ものだと考えています。

これでGoogle陣営は、キャリアのドコモ、端末製造のSamsung(と開発中画面がリークされているHTC)、およびOS会社のGoogleの全ての関係者がAppleのSiriを追随してきたことになります。MeTooCopyが足元ではソフトウェア分野に移っていることを如実に物語っている事象だと思います。

面白いのが、足元でSamsungのタブレットとスマートフォンのGalaxyNexusがUSで販売差し止めになっていますが、そのうちのGalaxyNexusの差し止めの直接の原因となっているのがAppleのSiriに関係する特許であることです。USの裁判ではそれ以外の複数のAppleの特許もSamsungによって侵害されている可能性が高いとされているのですが、そのうち現在の販売の現場で現実の差別化要因として機能していることが見込まれる最新のソフトウェア分野でのこのMeTooCopyに限って、侵害の可能性が与える影響を看過出来ないとして、商品差し止めに至っているわけです。

この裁判所の判断は、「USの特許制度は壊れている」と主張する、Googleをはじめとする多くの関係者の主張について、その妥当性のありかを考えさせる結果となっていると思います。US裁判所は特許が有効であることが見込まれるだけではなく、その侵害がマーケットに与える影響をも考え合わせた上で商品差し止めすべきか否かを判断しています。

Appleは同社の端末でSiri機能を実現するために企業買収をし、時間をかけてデータセンター等のインフラ整備を含む開発準備を行っています。同社は長期のロードマップを持っていて、それに従って着々と準備をしてきただろうことは、状況証拠からも明らかです。

翻って、MeToo企業群はどうでしょうか?ドコモ、Samsung、HTC、Googleと、先発企業が時代の先を見てこつこつと準備して導入した機能を、ローンチを見るや否や、皆、臆面もなくMeTooCopyに走っています。

これが市場の常とは言え、やはり醜い。

もうひとつの醜い姿であり、かつ皮肉であるのは、「USの特許制度は壊れている」と主張するGoogleや、Samsung、HTCといった企業群が、その壊れているかもしれない特許制度ですら想定しなかった、標準特許によるライバル企業商品の差し止めに走っているところです。

自らが、どの企業も差別せずライセンスすると約束した上で標準特許採用された特許を、よりにもよって自ら課した約束を反故にする形で、ライバル会社商品差し止めのための武器として使用しています。

言うまでもありませんが、これら特許に価値があるのは、標準特許採用されたからであって、特許内容自体が生み出している価値ではありません。「自社はもしこの特許が標準特許として業界に採用されたら、気に入らない企業の商品をこの特許を盾にして差し止めに動く」と宣誓していれば、そんな特許は業界標準としては決して採用されず、競合する別の特許が業界に標準として採用されていただろうことは至極明らかなことです。

だから、EUもUS当局も、モトローラ(=Google)やサムソンを独禁法違反の疑いで調査中なわけです。

スマートフォンとタブレットの分野では今、特許の世界で風雲急を告げており、面白い展開を見せています。ちょっと目が離せません。

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2012年6月23日 (土)

Microsoftタブレットのコンセプトに内在する矛盾

表題の件、当該タブレットの発表があってからずっと感じていた違和感を、端的に図で表してくれているHPがありましたので、リンクを貼っておきます。

http://www.cultofmac.com/175204/the-microsoft-surface-vs-the-macbook-air-oooh-so-innovative-humor/

普通は、このHPの図が物語っているように、
「どこでも仕事に使えるキーボード入力を備えた優れた端末を作りたい。」⇒「平らな場所が無くても、場所を選ばず安定感があって機動的に使える軽いラップトップにしよう」
となるはずなのですが、わざわざキーボード入力の安定感がなく、平らな場所をいちいち探さないといけない端末になってしまっています。

これはたぶん、最初の開発目的が、「どこでも仕事に使えるキーボード入力を備えた優れた端末」といったような、ユーザーのニーズからスタートしていないことを如実に表しているのではないでしょうか。

つまり、実際は、
「今、売れているタブレットで自分も市場を取りたい」⇒「iPadと同じでは、後発なので競争に勝てない。何か、付加出来るものはないか。」⇒「タブレットのカバーにキーボードをつけて、仕事に使えるタブレットをうたおう。」
という、ある意味、本末転倒な商品開発姿勢になっていることが疑われます。

これは、典型的な後発企業のアプローチだと思います。冷静に考えれば、
「待てよ。仕事に使えるタブレット?これじゃあ、電車の座席でも、ベンチでも使えないじゃないか!」
と、なるはずなのです。

「仕事に使えるタブレット」⇒「仕事に使うなら、MacBook Airの方が便利」
とすると、そもそも、

「仕事に使えるタブレット」というコンセプト自体に果たして意味があるのだろうか?
わざわざ毎回、キーボード入力のために平らな場所を探すという不便な思いをしながら、タブレットを仕事に使いたいって市場、果たして存在するのだろうか?

というところに行き着きます。

先発企業は、こんなアプローチはしません。そもそもタブレットのコンセプトを考えたときに、この商品で応えるニーズの中に、「モバイル目的でどこでもキーボード入力ができる」というニーズは入っておらず、意図的に切り捨てたニーズであるはずです。

成功する先発企業は、この商品でいままで実現できなかった市場のどんなニーズに応えるかというフォーカスが出来ていて、その過程で「応えないことにしたニーズ」が明確になっています。「モバイルで平らな場所でなくてもどこでも安定的なキーボード入力ができる」というニーズも、「詳細なペン入力でメモ等ができる」というニーズも、間違いなく商品コンセプトの段階で切り捨てた「応えないことにしたニーズ」のはずです。

結果、非常にエッジの効いた商品形となって、どんな顧客も、そういう商品は一目見た瞬間に、「この商品は今までになかったこんなシチュエーションでこんなふうに使う商品」というイメージが鮮明に湧いてきます。結果、そのエッジの効いた商品形が提供する新しい、「応えることにしたニーズ」が市場に潜在していた要請にフィットすれば大ヒットという結果になるわけです。

それに対して、得てして失敗する後発企業は、わざわざ先発企業が切り捨てて応えないこととしたニーズを、先発企業のエッジの効いた商品に追加して、わざわざどのように使えばよいのか、誰のどんなニーズに応えるのかといったイメージが湧かない商品にしてしまいます。

今回のマイクロソフトのタブレットで言えば、「仕事で使えるタブレット」であるはずなのに、電車の座席やベンチ等、膝の上でタイプしたいときに出来ない代物になってしまっています。じゃあ、平らな机やテーブルがあって、腰を落ちつけてタイプ出来る場所で使おうかと思えば、薄っぺらい打鍵のキーボードでは、おそらくはしっかりと長時間タイプする仕事をしようとする気に到底なれないと思います。私なら、もっと厚くても入力感のしっかりとしたbluetoothキーボードでも買って机やテーブルにあらかじめ置いておいて、そこに来たらすぐさま快適に仕事できるようにすると思います。結局、必要なのはbluetoothキーボードかMacbook AirであってSurfaceではなかったねということになってしまいます。いや、もっというと、今の自分のように、タブレットに向かってキーボード打つ必要なんて無いし、今の時代、仕事を持ち帰ることも不可能になってきているので、そのニーズそもそも無いよというのがマジョリティではないかと思います。

腰を落ちつけられる場所が必要な商品形なのに、腰を据えて仕事するに適した商品内容になっていないというある意味の矛盾。わざわざ、売れてる商品が今応えているニーズからはずれているニーズに訴求しようとしているのに、売れてる商品形を踏襲してその応えたいニーズに適さない商品仕上がりにする矛盾。

結局、「誰のどんなニーズに応えるのか」というスタート地点から立脚せず、「売れている商品形に何をプラスしたら差別化できるのか」というスタート地点に立つのが、大方のMeToo企業であって、だからこそ大方のMeToo企業は「誰のどんなニーズに応えるのか」よくわからない商品を作ってしまって見事に失敗しちゃうわけです。

今回のマイクロソフトの商品の中にも、追随企業の陥るこの典型的な落とし穴を見てしまうのですが、これは果たして気のせいなのでしょうか。

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2012年6月19日 (火)

水平分業vs垂直統合

今回のテーマは、例によって、当方が着目しているスマートフォン、タブレットの分野の話であって、経営戦略等で出てきそうなそのまんまの話ではありません。

つい、昨日Microsoftが自前タブレットを開発するという電撃発表を行ったところです。

http://online.wsj.com/article/SB10001424052702303703004577474910029263198.html?ru=yahoo&mod=yahoo_hs

もう、タブレット市場では、次々とiPadキラーが現れては消え、現れては消えの繰り返しで、直近ではアマゾンがやはりこの戦いに敗れ去った感が満載ですので、今見えている次のiPadキラー候補は、もうMicrosoft以外に見つからないような状況になっていると思います。(そういえばGoogleタブレットもありましたね。でもこれは既に敗者となったアマゾンのKindle Fireに今更ながら戦いを挑む商品かと。これはAndroidを利用し、かつGoogleをハブるOSの使い方をされるアマゾンに対するGoogleのけん制の意味合いもあり、特殊な例だと思います。)

今のタブレット市場の状況を恐ろしく的確に表したのが以下のリンクです。

http://allthingsd.com/20120618/good-luck-with-that-tablet-microsoft-comic/

正直、あまりに的確すぎて、思わず笑ってしまいます。

と、ここで表題に戻りますが、今回のマイクロソフトのタブレットの発表には、ある意味、決定的な意味があると、当方は考えています。それは、言うまでもないことではありますが、今回マイクロソフトは自らのこれまで成功してきた手法、すなわち自身はOS開発に専念し、ハードはそれぞれのメーカーに任せるという水平分業によるビジネスモデルをはみ出して、自身の冠を乗っけたハードを開発し、Apple式の垂直統合による高品質な顧客体験を自社で作り上げる方向に舵を切ったところです。

要は、水平分業では、タブレットの世界で今、Appleが実現している高度なハードとソフトの統合がもたらす優れたカスタマーエクスペリエンスに対抗することは難しいと、足元でMicrosoftが考えているからこのような発表になるのだと思います。

マイクロソフトのこのような自社ハード開発の動きは、今回のタブレットに限った話では必ずしも無く、例えばミュージックプレイヤーのZuneとか、ゲームマシンのXBoxとか、この会社は自前ハードの開発自体は多少の経験を持っていると思います。

巷でよく言われるのが、Windowsという水平分業のビジネスモデルが過去パソコン市場で圧倒的なシェアを確保したという過去の事例を基に、水平分業のもたらすハード会社間の競争こそが優れた成果と商品をもたらし、垂直統合モデルであるAppleのiPhoneやiPadは、いずれ水平分業のAndroidやWindowsPhone等に敗れるという、一見まことしやかに聞こえる主張です。

もし、この主張が正しいとすれば、今回のMicrosoftの動きはどう解釈するべきでしょうか?水平分業のAndroidタブレットがiPadにことごとく敗れている事例については、どう理解するべきなのでしょうか?

個人的意見としては、難しく、かつ固定的に考えすぎなのではと思います。水平分業であろうが、垂直統合であろうが、優れたカスタマーエクスペリエンスを相対的安価で広い市場に提供できれば、そのスキームが広く世の中に受け入れられるだけのことだと思っています。今は、価格と性能とアプリ等エコシステムやブランド価値等全て総合的に考えて、iPadと競争できるほどの完成度のその他タブレットがないので、iPad一強になってしまってるのだと思います。

このマイクロソフトの動きは、マーケティング的に見れば、自社が強みを発揮する水平分業のビジネスモデルから、Appleが長年牙を研いできている一方で、自社が経験を積み重ねていない不慣れな垂直統合ビジネスモデルに踏み出そうとする動きです。いわば、相手の大得意な土俵でがっぷり四つに組むようなものです。マーケティング的に見た追随者が典型的に追い込まれるポジションで、勝算が非常に薄いのが典型的な姿かと思います。

とはいえ、今のところiPadキラーとして残っている戦士はもう他には見当たらないと思いますので、タブレット市場を面白くするために、またさらなる同市場の発展を願って、マイクロソフトにはおおいに頑張ってほしいものだと考えています。(個人的にどちらかに賭けろと言われれば、有無を言わさず、Zuneのような運命を辿るほうに賭けますが)

この間書いた、Googleのモトローラ買収の件ですが、全くもって平凡な結果(予定通りの買収完了)に終わりましたが、世の中に名経営者などめったにいないのですから、圧倒的高確率で起こる方の結果が、当たり前のように起こったものと個人的には考えています。

直近、個人的に注目していたのが、果たしてGoogleがAppleのSiriを追随してくるかどうかでしたが、以下のリンク記事が事実を反映したものであるなら、その答えはもう出ているようです。

http://thenextweb.com/google/2012/06/19/google-is-pushing-forward-on-its-siri-rival-as-voice-assistant-competition-heats-up/

なぜ、この点に注目していたかと言えば、まさに今回の表題に関係する話だからです。本来ならば、OSに統合されるべき新たなインターフェースなのですから、本来これはGoogleの担当です。しかしながら、この新しいインターフェースは、以前当ブログで書いたように、いわばGoogleキラーとも言える、従来のインターネットの検索方法による情報アクセス方法を凌駕し、Googleの広告収入の機会を奪う将来ポテンシャルを持つものです。Googleとしては、これを積極的に追随、推進して進歩させていくことに少なからずの躊躇があるはずと想像します。

そうこうしているうちに、水平分業のその他の関係者、例えばキャリアのドコモが、しゃべってコンシェルで、また端末メーカーのSamsungがS-Voiceと、しびれを切らしたようにAppleのSiri対抗機能をスマートフォンに搭載し始めています。垂直統合モデル側の先行サービスに対し、水平分業モデル側が整然と追いつけず、関係者がそれぞれ思い思いに重複してサービス準備を始めるという、混迷状況が起きつつあります。

ここでも、水平分業モデルが後手に回る姿が見て取れます。上のように簡単に考えれば、この混迷により、水平分業モデルが作る商品が混乱をもたらしかつ相対的に劣ったサービス提供にとどまれば、水平分業モデル側の敗北でしょうし、複数のサービスが競争して、より優れたものが水平分業モデル商品の中で生き残ってスタンダードとして確立し、それが垂直統合モデルによる成果よりも優れたサービスであれば、それが市場で優勢となっていくのでしょう。

この点が着目点として面白いのが、本来の水平分業モデルの中での担当者となるべきGoogleが、自身のビジネスモデルの否定につながりかねないため、単純によりよいものを追求しようという立場に立ちづらいところです。ここが、この話の状況を複雑にしていて、将来の姿を読みにくくしているところだと思います。

個人的には、やはり世の中の流れには逆らうことができず、Googleは音声エージェントに舵は切りながら、今の自身のビジネスモデルを崩壊させない方向を同時に探っていくという、非常にあいまいな態度を見せるのではとないかと予想しています。

なので、単純にGoogleに音声エージェントを担当させて任せることもできず、また単なる土管屋となることを回避したいキャリアも、単なる機械屋となることを避けたい端末メーカーも、頑張ってAppleと並走し続けなければならなくなる展開を予想します。この方向だとAppleにOS内での高度な統合を追求されると非常に辛そうですね。本来、真正直に頑張らなければならないOS担当のGoogleが斜に構えた態度になってしまうと、この分野では後手後手にならざるを得ません。

この態度は、自らの強みが弱みにすげ変わってしまう、まさにマーケティング的に見たときに典型的に見られる強者が敗北していく過程のひとつだと思います。前にも本質的に同じことを書きましたが、パラダイムが変わるときには、自社の商品が自社の過去の強みを壊していくくらいの行動に自ら進めなければ、他社に自社の強みを壊されてビジネスが終わってしまうのが典型的に起こる姿です。なのでここは、将来も継続的な要注目点だと思っています。

そういえばiOS6でiPadにもSiriがやってきます。ぜひ、早く日本でもレストランや観光場所等がSiriで探せるようになって欲しいものです。

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2012年5月 4日 (金)

アマゾンのタブレットビジネス(たぶん最終)その他

ゴールデンウィーク真っ最中です。また、日本はお休みの真っ最中に、ある意味非常に興味深く、また個人的にはある意味かなり残念なニュースがUSでありました。

http://finance.yahoo.com/news/amazons-kindle-fire-shipments-slump-194956206.html

アマゾンのKindle Fireの直近四半期売り上げシェアが、4Qの17%弱から1Qは4%へガタ落ちとのことです。アマゾンは公式にはKindle Fire等の売上台数を公開していないので、どのような調査ベースの数字なのかわかりませんが、記事を読む限り、信憑性はありそうです。

数字上、このアマゾンのKindle Fire減がそのままAppleのiPadのタブレット内シェア上昇につながっている格好です。

これだけでも、事実は小説より奇なりという話だと思いますが、以下の記事もそれに負けず劣らずインパクトがあります。

http://seekingalpha.com/article/557151-kindle-sales-plunge-made-amazon-com-s-gross-margin-look-better?source=yahoo

アマゾンのKindle E-ReaderのE Inkスクリーンの発注情報からは、アマゾンのKindle E-Readerの売り上げのガタ落ちが推察されるとの記事です。アマゾンの4Qでのスクリーン発注が結果的に多すぎて、次Qである1Q以降の4カ月間で全く発注がなかったということのようです。

この2つの記事と情報がおおむね正しいとすれば、アマゾンに起こったことは、下記のような感じかと想像します。
1.昨年の4QでKindle Fireを引っ提げてクリスマスシーズンの販売に臨んだが、アマゾンの経営陣の想定を大きく逸脱するKindle FireとKindle E-Readerのカニバリで、まずKindle E-Readerの売り上げがガタ落ちとなった。
2.4QのKindle E-Readerの売れ残り分は翌年1Q分の販売に回されたが、1Q以降にスクリーン発注が再開されなかったことから、売れ残り分は販売減少後の四半期売上水準に比してかなり多そう。
3.それだけではなく、1QではKindle E-Readerと売上がカニばっているはずのKindle Fireの売上もガタ落ちになった。

もし、Kindle E-Readerを買っていた顧客が4QではKindle Fireを買っていたのに、1Q以降ではKindle Fireを買わなくなったとすれば、もともとのKindle E-Readerのニーズが今は社外流出している可能性が高いと思います。

なので上記の情報がある程度正しいとすると、今足元のアマゾンのKindle Fire+Kindle E-Readerの売り上げは、もしかすると、Kindle E-Readerのみを販売していたときより却って減少しているかもしれません。

Kindle FireがKindle E-Readerを殺し、そのKindle Fireがたった3カ月で急激に失速するとは、アマゾンにとってこれ以上ない最悪のシナリオです。どこまでこの姿が正しいかは不明ですが、どう転んでも間違いなく経営上は、良い状態ではないと思います。

タブレットがE-Readerを食う姿は、スマートフォンがミュージックプレーヤーやデジカメを食う姿に似て、ある意味必然かもしれませんので、これ自体はいたしかたないと思いますが、E-Readerを食って大きく成長していくはずのKindle Fireタブレットが急失速しているとしたら、アマゾンはただただ、自身でE-Reader市場の死期を早めただけになってしまいます。

もともとが、AppleやGoogleに新しいタブレットデバイスを制されて、将来の有望市場である電子書籍、ミュージック、ビデオ、クラウドといった各市場を牛耳られてしまうことに懸念があって踏みこんだタブレットの世界だったのだろうに、ここまで経営判断が裏目に出るとは。

まさに、事実は小説より奇なりを地でいくような話です。

タブレット市場に話を戻すと、Kindle Fireがたった3カ月でシェアが17%から4%に落ちてしまうほど、急激に売れなくなってしまっているとしたら、この商品の将来性は疑問どころか、ほとんど希望を見いだせないと思います。製造原価を割り込んでの販売で、早くも需要側の天井がやってきたわけですから、マーケットの需要の弱さは深刻です。単純にかつ乱暴に表現して、250ドルかけないと作れないものが、200ドルで販売されていても、もはや客が集まらないとすれば、これまでの販売済みのお客はこれを50ドル(あるいはそれ以上)の得と考えたのに、これから直面する多くの客はこれを付加価値マイナスの行為、すなわち損失と考えることを意味するのだろうと思いますので、アマゾンが作り出したKindle Fire商品でのプロポジションがいかにニーズの小さい商品だったのかということになると思います。

例えば3Gをつけたり、画面を10インチにしたりといった単純な改善策で事態が改善するなら良いのですが、そういう端末をも擁するモトローラ、サムソン、ソニーといったその他の企業群がタブレット販売全般で一様に苦しんでいるのですから、これらの単純な策が解決策になる可能性は低く、アマゾン経営陣にとって事態はかなり深刻である可能性が高いと思います。

ここまで、アマゾンのタブレットビジネスを注目してきましたが、そこで考慮したアマゾンの資本制約すら心配の必要がないほど、売上が立たない状況に急速に直面している感じです。コンピュータの専門会社ではないアマゾンがこの事態を改善させる有効な策、例えば商品のカスタマーエクスペリエンス向上等といった手立てをどれだけ有効に行えるかはかなり個人的には疑問に思っていますので、上記の状況に間違いなければ、当面はタブレット市場発展のキーとしてのアマゾンの重要性は落ちたと判断します。

これら一連の要素のおかげで、すなわちKindle E-ReaderもKindle Fireも売れなかったため、初期負担が少なく、直近のアマゾンの四半期決算での内容は投資家予想より良かった可能性が高く、これはある意味とても皮肉な結果です。アマゾンが見た、将来の自身のビジネス展開に必要なビークルにおいての戦略的なムーブメントが見事に失敗に陥っており、このままではアマゾン経営陣が忌避し、回避しようとした未来がやってくる可能性が著しく高くなってしまっているのですから。

今アマゾンの株価は実績PERにして190倍とか、とんでもない水準で取引されており、なおかつ直近四半期決算での投資家予想を上回る利益で、Kindle Fireをはじめとする端末販売によるコンテンツ売上増をはやしてか、足元で株価上昇しています。しかしながら、上のような情報が事実をある程度的確にとらえているとしたら、コンテンツ販売増どころか、何百億かのタブレット初期投資が回収できるかどうかが暗礁に乗り上げているのみならず、将来端末エコシステムを牛耳られる他社の顔色をうかがいながらのコンテンツ販売を強いられることとなるアマゾンの将来はお先真っ暗というリスク満載の足元状況かと思います。

この状況でPER190倍とか買い上げられる投資家の神経は、少なくとも私には全く理解不能ですが、素直に、わからないものには近づかないようにしておこうと思います。

今、アマゾンKindle Fire対抗商品でサムソンをはじめ、Androidお膝元Googleまでもが、格安タブレットで勝負しようとやっきになっているところでこの事態です。各社、どうするのでしょうか?もはや、いきなりニーズの底が見えたカテゴリーでも、車は急には止まれず、Android各社入り混じった泥仕合がここからも見られるのでしょうか?

上記のアマゾンに関する情報は、また例によって連休中のため、日本語の記事を私はまだ目にしておらず、連休後に翻訳され日本に紹介されるホットな情報ではないかと思います。(たぶん2番目の記事のような、裏で本当に起こっているかもしれないことに触る記事は日本では出現しないだろうと思いますが。)前もそうでしたが、この手のパターン、多いですね。

また、会社が積極的に売上台数等の情報開示しないケースにおいては、いかにそこに悪い情報が隠されていることが多いかということを改めて強く認識させる事例です。ほんと、何の売上情報も出さず、好調です、経営陣は満足してますって言う会社、多いですから。

他の話題ですが、昨日、サムソンが次世代スマートフォンの発表を行ったようで、記事を斜め読みしたところでは、AppleがiPhone4S等で導入した、Siri, iTunes Match, iCloudに相当する機能を有するとのこと。外観ではなく、今度はソフトの分野でのMeTooコピーがこの業界で進行しているようです。

この手の追随会社の無批判にも思えるレミングのような追随行動は、どこの市場でも見られる姿かと思います。このブログで散々見てきた投資商品系の世界でも、グロソブ、2重通貨建預金、ブラジル通貨ヘッジ等をはじめとする、山ほどのはやりの商品形が、レミングのように行列を成して各社に追随され、一方向に業界商品が流れていく姿がまだ記憶に新しいことと思います。

で、結局最初に新しい市場を確立した先駆者しかまともに利益が出せないパターンも、まるで一緒かと思います。

マーケットは人間が作り出すものであるだけに、どの業界でも似たようなパターンになるのでしょうね。

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2012年4月18日 (水)

アマゾンのタブレットビジネス(その5)

アマゾンのタブレットビジネスに関して、当方が将来予測している姿にかなり近いUS記事を見つけましたので、リンクを張ってみます。
http://seekingalpha.com/article/505101-how-kindle-fire-killed-every-ipad-competitor-in-the-room-and-now-it-will-kill-itself?source=yahoo

アマゾンの現在のタブレットビジネスでの立ち位置での弱みは、明らかに以下の2つだと私は見ています。
1.Appleが創造したタブレット市場は、ロスリーダー戦略で挑んでいるアマゾンにとって、市場が大きすぎる。また、相手にしているAppleが対抗相手として大きすぎる。結果、とびぬけた市場リーダーしか取り得ないロスリーダー戦略を採っているにもかかわらず、構造的にニッチプレーヤーにしかなれないことが最初から見えており、これが戦略上の矛盾とも言える状況にあって、マーケティング上、成功する筋道の通った戦略になっていないと思われること。
2.アマゾンは自前のOSを擁しておらず、また端末メーカーとしての能力も有していないと思われ、OS、端末、サービスの全てを統合した優れたカスタマーエクスペリエンスを作り上げることが困難。これがAppleに比較したときに、劣化格安商品としての立ち位置に立つ以外の道がない状況に陥る主因となっていること。

アマゾンは、すでに四半期500万台レベルの売上で、ロスリーダー戦略が生み出す、おそらくは数百億円規模の初期損失でもうアップアップの状態になっています。同時期に、Appleは1500万台レベルの売上を享受し、しかもアマゾンとは違って損失どころか、他の全ての端末製造会社がうらやむだろう利益率を同時に叩きだしているものと思われます。しかもこの新型iPadは、日本の量販店でまだ予約受付中で、販売する実物を店頭に置くことすらできない品薄の状態が、発売開始後1カ月以上経過した今持って続いています。
なぜか、今、US記事等でうわさされているiPad Miniによって、将来のAppleの利益率が圧迫されるなどという、頓珍漢としか思えない見立てがUS記事の一部で踊っているらしいのですが、もしAppleがiPad Miniなるものを出すとしたら、間違いなく適正な利益率が確保できる価格設定になるだろうし、その価格はアマゾンの端末価格よりは間違いなくかなり高いでしょうが、上のリンク記事のように、それで傷つくのは間違いなくAppleの方ではなく、アマゾンの方でしょう。

それでも、アマゾンの戦略推移が判明してくる前に、その他のタブレット業者はアマゾンの低価格ロスリーダー戦略によって軒並み死亡してしまうだろうことも明らかなことだと思います。その他の端末メーカーは、アマゾンが持っている、ワンストップでのコンテンツ消費といった強みすら無いのですから。

直近見えている、サムソンの低価格タブレット分野でのアマゾン対抗の姿勢や、Googleの低価格自前タブレットのオンライン販売構想も、結果を見るまでもなく、うまくいかないだろうと私は予測しています。アマゾンが開いた低価格タブレットの分野ならばその他プレイヤーに勝機があるという判断も、本気でそんな判断をしているとは思いたくもないですが、まともな判断とは思えません。
おそらくは、もしそれが機能するとしたら、英語系のコンテンツが全くもって意味をなさない一部新興国を中心とした市場限定の話だろうと想像しています。コンテンツがまるでないならば、タブレットはその価値のかなりの部分を失ってしまうでしょうし、もともとがそのようなコンテンツ自体が全くもって整備されていないと思われる新興国で、パソコンやラップトップの代わりとしての低価格タブレット販売であれば、戦略上筋道が通っていると思いますが、アマゾンを追いかけてのUS等先進国市場での低価格タブレット販売には、戦略上の筋道がまるで見えませんし、成功の目がないのではと考えています。

Googleやサムソンの経営者が、そんなこともわからないとは到底思えず、それでもこの方向でチャレンジする以上の有効な手立てが見つからないのだろうと想像していますが、この展開は間違いなくiPadがiPodの再来となる方向の展開だろうと私は見ています。私はiPod市場での数多くの競合企業がAppleに対して討ち死にしていく姿を現在進行形で見てはいませんが、きっと今iPadで見ているような、負けるべくして負ける展開で、負け戦が繰り広げられていったのだろうと想像しています。

以前のアマゾンのタブレットビジネスのエントリーで、追加の競合会社がタブレット市場のさらなる発展には必要という個人的見解を示しましたが、今見えているその可能性のある企業としてのマイクロソフトからは、個人的にはかなりがっかりな内容が見えてきているのではないかと思っています。マイクロソフトがAppleのタブレット独壇場を切り崩すとしたら、間違いなくビジネス用途であって、表計算やワードをはじめとするビジネスユースでのパソコンとタブレット等のシームレスな利用の実現が、その切り崩しのための重要な武器だろうと想像していました。しかしながら、タブレットで用いられるチップセットと既存のパソコンのチップセットはどうも断層があって、なかなかシームレスな互換性を実現するのは難しそうです。

私も、今のパソコンでいまだに使用しているソフトがあって、これが今のパソコンではなく、タブレットのような、ウンウン言わない静かなパソコンで動かせるとしたら、すぐにでもそんなパソコンを買いたいのですが、どうもタブレット寄りのチップセットでは既存のインテルベースのソフトウェアは動かせないようです。これでは数多くのソフトウェア資産に縛られているビジネスユースでは、タブレット寄りのチップセットに移行できません。ビジネス環境と資産を継承するために、相変わらずインテルベースのチップセットで構成されているパソコンで、これからも運用せざるを得ないと思います。これでは、タブレットとのシームレスなビジネスユースの環境は実現できないだろうと想像します。このハードルを越えないとマイクロソフトがAppleのタブレット寡占を切り崩すことはできないと私は見ていて、今のところの情報では、個人的にどうも難しそうだなという感触を持っています。

個人的には、タブレットと同様に静かに動くパソコンがぜひ欲しいと思っているのですが。タブレット同等のチップセットを持つパソコン上のソフトウェアの充実を待って、データごとまるごと移行するしかないかなと今は考えています。

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2012年4月 4日 (水)

今現在のマーケティング的な注目点

例によって、当方の継続的なウォッチ対象である、スマートフォン及びタブレット市場で今、個人的に着目し、どうなるか注目している点について、好き勝手につぶやいてみようと思います。

一年以上前のUSベライゾンのiPhone導入発表のニュースから、「いわゆる世界の最先端市場で起こったことは、ある程度のタイムラグを置いてその他の市場でも類似の形で起こることが非常に多い」と言う、ある意味マーケティング的な原則や法則とでも言うべき現象の枠組みで判断し、auやその他の国のキャリアの将来のiPhone導入を予測してきましたが、足元の状況を総括してみても、この枠組みのとおりの現象が継続して各国で起こっているものと判断できます。

言わずもがなですが日本ではauがiPhoneを導入し、USではスプリントが、中国ではチャイナテレコムがその後iPhone導入に至っています。

それだけではなく、この世界各国のキャリアがiPhoneを導入しなければならなくなる理由である、iPhoneを取り扱わないキャリアから取り扱いキャリアへの恒常的な顧客の移動が、今も各国のiPhone未取り扱いキャリアを襲っています。日本ではドコモが毎月のようにMNPで顧客流出の憂き目に遭いつづけていますし、USではやはり未だiPhoneを取り扱っていないT-Mobileが一人負けの顧客流出を続けています。中国でも3Gが弱いという特殊要因もあると思いますが、チャイナモバイルがやはり一人負けの顧客流出に遭っていることが記事で確認できます。

そして、 USではAT&Tでもスプリントでもこの第一四半期はすべてのandroid等のその他スマートフォン機種合計よりもiPhoneが足元2012年第一四半期では売れており、VerizonでもiPhoneとその他すべてのスマートフォン機種合計売上が同程度の比率になっているというUS統計記事が届き始めています。US市場におけるVerizonのiPhone導入を契機とした動きは、非可逆的なAppleとその他市場のプレイヤーの間の一方向のシェア変動につながっています。

今も各国のiPhone非取り扱いキャリアは継続的な顧客流出に直面し続けているのですから、当然のことながらここまでの動きはこれからも続いていくものと予想しています。
すなわち今の注目点のひとつ目は、いつドコモがiPhoneを導入するか、また、世界一のキャリアであるチャイナモバイルがいつiPhone導入に踏み切るかということです。

やっとUSのアナリストも、西ヨーロッパや新興国で、Appleがスマートフォンのシェアを増やし始めていることに言及し始めています。上のマーケティングの法則を知っていれば、それが統計上数字に現れてくるよりもずっと前からその現象が起こるだろうことが予測できるのに。前にも本質的に同じことを書きましたが、なぜ統計数値を追うだけでなくその先を読もうとしないのか不思議でなりません。

もう一つの注目点は、標準特許に関係するものです。今ちょうど、EUがモトローラを標準特許乱用の疑いで正式調査し始めたというニュースが報道されています。標準特許乱用の疑いでのEU正式調査開始はサムソンに続き2社目です。前のエントリーで書いた、すべての会社に公平公正にライセンスすると約束した上で標準として業界に採用された特許を、特定他社の商品を差し止めるために利用するといった暴挙の疑いで正式調査されているわけです。結局のところモトローラの狙いは、つまるところApple等の標準でない特許を、自身の標準特許を盾にしてただで手に入れようという作戦であって、マーケティング的に表現すれば、新しい市場を創造した先駆者の特許技術を模倣することによってその市場創造の成果の分け前の一部を横取りしようとした上で、その行為を特許に関する権利上も正当化しよう、あるいは特許上の対価を支払わず踏み倒そうとする行動となります。そのために自身の標準特許を使ってその目的を成し遂げようとしているわけですが、それがうまくワークしないだろうことが誰の目にも明らかになってきたわけです。

EUの正式調査の後に有罪であることが確定すれば、グローバルターンオーバーの10パーセントを上限とする罰金が待っています。標準特許は、いかなる会社も差別せず公平にライセンスする宣言をしたからこそ、標準技術としてその業界に採用されたのに、それで業界全体が後戻りできない状況になった後で、その状況を利用して最初の約束、前提を反故にして差別的にライセンスを取り扱い、特定一部の会社が商品を販売できないようにしようとするのは、世間一般で言う詐欺行為に相当すると思いますから、有罪確定したら、自身の標準特許のライセンス収入では到底挽回できないほどの多額の罰金支払いになると想像します。そうでなければ、すなわちリスクが限られていてうまく行ったときのリターンがでかいなら、値千金を狙ってこのような標準特許を用いた反競争的行為に踏み出す業者がこれから列をなすこととなり、規制当局にとっては全く持って逆効果ですから。

ここで、当方の注目する2点目の点です。上記の展開になると、Googleのモトローラ買収の主要な目的であったモトローラ保有特許が、対Apple、対Microsoftでちっとも役に立たなそうだということが明らかになってきます。それどころか、買収後もこの手の無理筋のごり押しを辞めずに続けると、買収後のGoogle本体の売上まで、罰金の対象になりかねないと思います。買収で一兆円近く払う会社の純資産価値はその半分未満で、かつここのところのビジネスは、Verizonで端末が売れていたときからろくな利益が出せず、売れなくなってからは赤字の、ビジネスとしての何の価値も示せていない状態です。考えようによっては、マイナス6,7千億円の状態からスタートする会社の、最も期待している特許が他社対抗上ほとんど価値を生み出さないとすれば、Googleにとってこの買収をする意味はあるでしょうか?

このまま買収して、なんの芽も出せずにこの会社を清算する最悪の状況を想定すると、スタートの約マイナス6,7千億円から、更にEU当局等への罰金支払いのマイナスと、会計上評価し切れていなければ残存特許等資産価値分のプラス、ビジネス継続前提資産の清算価値による毀損部分のマイナスと、そんなところでしょうか。どうにも大怪我せずに終われそうな気が全くしません。

今、中国が審査中のこの状態で買収を辞めるとすると、違約金の2000億だったか、そんなオーダーの損失で終われるらしいですから、モトローラの特許があまり他社対抗上役に立たず、標準特許の微々たるライセンス収入前提の価値しかないのであれば、買収を辞めた方が傷はかえって浅いかもしれません。

ということで、果たしてこの状況下でGoogleは買収を完遂するのかどうなのか、注目点だと思って見ています。

ここに注目している理由は、この結論で、Googleの経営者の力量が判断出来る可能性があると思っているからです。
並の経営者なら、モトローラの特許部分があまりワークしないとしても、Appleの並み外れた利益に魅惑され、「自社も端末製造を手がければ、同様の利益が創出できるかも」と血迷ってしまって買収を成立させてしまうだろうと、私は見ています。
端末を一年使ってもらって、やっと一台当たり10ドルやそこらの収入を得るGoogleに対し、キャリアと端末契約した瞬間に、まだ端末を実際に製造する前から、一台当たり500ドルといったオーダーの利益をAppleは生み出しているのですから、これは、上から落ちてくる雫で飢えをしのいでいる横で、ステーキをがんがん食われているようなもので、並の経営者なら間違いなく血迷って転んでしまうだろうと思います。

でも、言うまでもないことですが、OS会社が端末製造したくらいで魅力的な利益が生み出せるのなら、HPのwebOSも頓挫しなかったでしょうし、RIMMもここまでの苦境に陥ってないでしょう。iPadがiPodの再来に成りつつあるのは、決してただの先行者利益ではなく、21世紀はじめからiPodプラスiTunesで種まきを始めたおかげで構築できた著作権コンテンツやアプリ、そこで積み上げられた製造ロジスティクスや販売、マーケティングノウハウやブランド価値、ビジョンに基づく能動的市場創造といった全てを含めた総合力が実っているのだと思います。OSと端末を統合的に作り上げれば、それでApple類似の利益が生み出せるなどという考えは、ただの幻想でしかないと思います。Appleをこの方向で追随して対抗していくのは、実際はイバラの道でしょう。

今のGoogleは、Facebookを追いかけ、Appleを追いかけ、Dropboxを追いかけるといった、新しいマーケットを創造してそこで先駆開拓者として君臨するビジネスではなく、そのようにして現れた先駆者を追いかけるフォロワーのビジネスを各所で展開する企業になっています。これは、マーケティング的にみると危ない兆候で、かなりの強者であっても、このように振る舞い始めた会社は滅びへの一本道を下って行くケースが非常に多いと思います。

なので、逆にこの状況で買収を取りやめて損切りし、他社の後追いをするのではなく、自身の独自の強みにフォーカスして将来のビジネスを切り開いて行くという決断ができる経営者であれば、その経営者は間違いなく並み外れて有能な経営者で、少なくともGoogleを次なる繁栄に導くためのポテンシャルを持っていると思うのです。

というわけでこの買収の最終的な着地点に注目しているのですが、果たしてどうなりますか。見ものです。

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2012年3月17日 (土)

The new iPad他

iPad2のときも、日本での発売日に購入しましたが、今回も世界での発売初日である昨日、さっそく、New iPadを購入してきました。今回も、初日に買えなければまた数週間待ちだろうと思っていましたので、4Gバージョンの予約開始日にプランを確認することもなく予約してしまいました。今回は4Gバージョンだったので、お金を払って終わりというわけにはいかず、だいぶ時間がかかってしまいましたが、無事購入できました。

公式販売開始前の記事等の記述に違わず、非常に精細なレティナディスプレーは感動もので、今回のiPadはじっくり新聞やHP記事等を読むのにやはり最適と感じました。今は、電車のグリーン席等で長時間過ごす機会が日常的にかなりあるので、これからはそういった時間がほんと楽しみです。

ディスプレーの表現力が前バージョンと段違いなので、旧iPadはランドスケープモード(横置き)で固定して使うことが多かったのですが、新iPadは使い始めてすぐにポートレートモード(縦置き)で固定して使うようになりました。要は、文字が小さくてもくっきり見えるので、大きく拡大する必要がなく、一画面にたくさんの行を表示することができて前より捗るようになったのです。

今となっては会社の会議にまで登場するiPadですが、そのような仕事のときにいつも感じるのが、「画面がもっと大きければいいのに」というものでしたが、これも新iPadになれば感じ方が変わるかもしれません。精細表示により一画面により多くの情報が表示できれば、端末をもっと大きくする必要を感じなくなると思います。拡大しなくても、スクロールしなくても、資料内容の確認が簡単にできるようになりますから。

1点残念なのが、Siriが今回のNew iPadには実装されず、実装されたのが音声入力部分だけだったところです。ただ、今のところ、日本語のSiri自体がレストランやアミューズメントプレイス等の旅行時に必須の部分への対応がなされていないので、まだ日本語部分の使い勝手が整備されているとは言えず、iPad対応がなされてもまだフルに使える状態ではありません。このポイントは、将来の楽しみにとっておきましょう。

それでも、将来予定している海外旅行には、この新iPadを連れていく予定です。たぶん、旅を100%満喫するのにフルに活躍してくれるものと期待しています。

例によって、購入直後の休日である今は新iPadは家族に取られ、なかなか自身でとことん使うことができない状況です。なので、今日は電気屋に行って、ポートレートモードで使うのに適したスタンドを物色してきました。私が今日行った店では、もう新iPadは売り切れていて、予約受付に移行しているようでした。アップルのオンラインストアのインターネット注文でも、もう世界的に2~3週間待ちになっているようですから、前回のときと同じく、しばらくは品薄の状況が続きそうです。

今回の新iPad発表のときも、前回のiPhone4Sのときに、「5ではなく4とほとんど変わらずディスプレイも大きくならずただ性能がアップしただけ」と酷評した一部マスコミと同じく、「革新的要素が無い」等と酷評する一部マスコミが今回も日米マスコミに現れましたが、ほんと何度こっぴどく曲がれば気が済むのか、そのはずしっぷりがあまりにも毎回見事すぎて驚きます。

たぶん、仕事関係等で、iPad万歳のスタンスには決して立てない事情があるのでしょう。何度も同じミスをしても、その見立ての悪さを改善する策を講じる様子もなさそうで、これらの記事の書き手はおそらくはもっとずっと重要な何かを背負った人たちに違いありません。

一消費者であれば、商品のカスタマーエクスペリエンスが優れていれば、何の制約もなく、日々が便利に快適にまたより楽しくなることを喜べます。そしてそういう商品を生み出す会社がより発展していき、利益も挙げていくだろうし、また株価が非常に割安で将来、利益を株主配当や自社株買いで株主還元するだろうことが見えていれば、市場でスペキュレーションをしなくても、株を持っているだけで報われていくことになりますから、その株はおそらくは下がるよりは上がる可能性が圧倒的に高いだろうことも簡単にわかります。

どうも、最近の記事を見ると、様々なファンドが今アップル株を買っているとか。その理由が、買わないとベンチマークに負けるからとか運用成果が劣るからという理由だそうで。今やこの会社の時価総額が世界一になってしまってますので、ファンドが裏目を引いたときの対市場比の負のインパクトは大きそうです。

職業投資家は何かと不自由ですね。恐ろしく割安な時は、配当してないので買えないとか、株価が上がったら、逆に有無を言わさず買わないといけないとか。

週末のUSの日本時間の夜中のニュースで、ある有名なUSのポッドキャストで、Appleの商品を製造する台湾の会社の中国工場での労働環境を報じた1月の放送に少なからずでっち上げがあったようで、USでは各ニュース記事で取り上げられています。有名な新聞社もこのポッドキャストの内容を引用したApple叩き記事を書いていて、その記事がこの出来事の後、削除されたとか。

しかしながら、日本では私が知る範囲ではまだ全くどこでも報道されていません。経験上、このパターン、非常に多いように思います。月~木曜日に発生した出来事であれば、比較的早くに翻訳記事が出回るので、せいぜい半日遅れ程度ですが、週末に起こった世界の出来事は、狭い日本の新聞記事に載らないものは得てして翌週のウィークデーにならないと翻訳記事にならず、英語で情報を得ていないとこのパターンのときは情報取得の遅れが激しくなります。

モトローラやサムソンの標準特許によるアップル商品差し止め請求と、これら企業群の独禁法違反のEU等調査開始も、上のアップル商品の中国工場の労働環境を問題として取り上げる動きも、根っこに同じ要因が存在していると私は見ています。両方とも、マーケティング的に新しい市場を作った先発企業の独り勝ち状況を何とかしようという無理筋の動きに見えます。

当然のことながら、先発企業が新機軸の商品を出した時には、「こんなの売れない」と嘲笑し、まんまと巨大な市場を創造されて、模倣商品を出さなければやっていけない状況になったときには時すでに遅しで、後発会社は模倣商品では利益を出すことすら困難な状況に陥っているのが、マーケティング的には定番の話です。当然のことながら、後発会社は先発の模倣ですから、先発会社の新市場創造の基になったアイディアに関連した、先発企業に対して対抗できる特許などあるはずもなく、上記の会社群は誰に対しても公平にライセンスすることを自ら宣言して標準として業界に採用された標準特許を使って、先発企業の独走を止めようという暴挙に走っています。これが、EUをはじめとする当局から独禁法違反の罪で罰せられるだろうことは火を見るより明らかで、こんな愚かなことをやらなければならなくなるほど、後発企業は追い詰められてしまうということだと思います。

アップル商品の中国工場に関する最近のマスコミ関係の動きも、少なからぬでっち上げをちりばめるというリスクを冒した上で、センセーショナルにぶちあげてこの会社を叩く必要がマスコミにはあったのですから、そこにはそう行動せざるを得ない背景としての理由があると考えるのが自然です。間違いなくマーケティング上での独り勝ち先発企業に対して対抗できる真っ当な手段が後発にはたいてい見つからないのですから、またそれでは飯のタネに困る人たちもあちこちに多いのですから、上記の後発の特許分野での無理やりな行動と全く同じく、無理やりにでも、先発企業を叩く方法やネタを見つけようとなるのが自然です。

この手のマスコミの動きに乗せられて消費者運動をやってしまう一部消費者は、純朴なのかわかってやっているのかわかりませんが、これらのマスコミの動きや主張に合理性が無いのはよく考えれば明らかですから、純朴なのであれば思慮が足りず、意図的ならば偽善といわれても仕方がないと個人的に思います。

当方は、このマーケットを完全にマーケティング視線で見ているので、余計、そう思えるのかもしれませんが、これらの複数の出来事を、先発企業があふれるほどの後発企業群に囲まれてなお、独り勝ちを強めていく典型的なマーケティング現象の中で必然的に発生してくる現象として見ています。

今回は特に取りとめのない話になりましたが、しかし、良い時代に生まれたものです。次のイノベーションのジレンマは、どこでどんな形で起こるのかわかりませんが、今はこのイノベーションが起こしてくれる圧倒的な楽しさを、思う存分享受したいと思います(マーケティング関連事象も含めて)。S.ジョブス氏にあらためて感謝です。

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2012年3月 4日 (日)

何故、先発企業は強いのか?

標題の内容はかなり大上段に立ったものになっていますが、たぶん以下の内容は個人的なつぶやき程度のものになると思います。その前提で、ご興味あればどうぞ。

当方がもう1年を超えてずっと注目し続けているスマートフォン、タブレット市場の状態が、まさに標題の状態を典型的に表す事例となっていると思います。繰り返しになりますが、世界の携帯市場におけるAppleの利益シェアは75%とも80%とも言われる状態にまで達しており、両市場において、いわゆるMeToo企業群の大半が利益を挙げることすら困難な事態に陥っており、ビジネスの継続自体が危うい状況になってきている企業もあちこちに存在します。

個人的な経験をお話しますと、ここ一年以上、両市場に注目し、触れてきたマーケティング関連の典型的な発生事象は、自身で経験した業界でのマーケティング的な経験と全くもって整合的かつ同質な事象と思っています。

1つ例を挙げますと、昔、以下のようなことがありました。

あるMeToo企業、すなわち、他の先発企業の開発する商品をコピーし、わずかばかりの改善と思しきものを施した商品を世に出すことを繰り返していた企業が、ひょんなことから、競合他社の次期開発商品案を入手することが出来てしまいました。そこでこの会社は、なんとその競合他社がその商品を販売開始する前に、コピー商品を作り販売開始してしまいました。

これではどっちがオリジナルでどっちがMeToo企業かわからない状況です。

果たしてどうなったのか。MeToo企業が、先にコピー商品を市場に出したことによって、オリジナルな商品を世に最初に問うた会社として市場で支持されたでしょうか?残念ながらそうはなりませんでした。

このMeToo企業は、コピーした商品内に存在する欠陥によって、市場から手痛いダメージを被ってしまったのです。

面白いのは、コピーされたオリジナルの会社は、MeToo企業がコピー商品を販売開始した直後に次期開発商品を実際にリリースしたのですが、その商品からは内在する欠陥が取り除かれ、全く問題のない商品となってリリースされたことです。

結局MeToo企業は、オリジナル企業より一歩先にコピー商品を出すことに成功したのですが、それでも新しい市場を創造してその市場で一番手として君臨することに失敗してしまいました。

なぜ、こんなことが起こるのでしょうか?

答えは明らかです。

先発企業、すなわち上記の例では、次期商品案をコピーされた会社は、どうしたら今まで実現できなかった顧客のニーズに合致した新しい商品が実現できるかに着目して、商品販売開始するその日まで、この商品はどうあるべきか考え続けているわけで、だから、新機軸の商品案に内在する重大な問題点に自ら気づき、解決策を施すことができるわけです。

他方、他社の商品をコピーする企業が考えていることは、先発企業の出す商品よりも、ちょっとだけ良い商品を作り、先発会社の得るだろう成果を横取りしようということです。だから、運よく競合会社の新機軸の次期商品案が手に入っても、その商品をちょっとだけ他社より良く見えるようにすることにしかエネルギーを注がず、上記の例のような失態を招いたわけです。

つまり、先発会社が見ているのは、マーケットであり、顧客なのに対し、MeToo企業が見ているのは競合他社ということです。実際に市場で勝負する前に、その開発態度の違いにより、勝敗は決していたのです。

これに類する話は、他にも結構あります。

ずっと当方が着目しているスマートフォン、タブレット市場の直近の現在進行事例で一例を挙げると、サムソンのスタイラスペンが挙げられると思います。直近のサムソンのコメントから、彼ら自身も、タブレット市場で自らがうまくいっていないことを認めていることがわかります。Appleの商品をコピーして、かつ0.1mmだけ薄く、数グラムだけ軽くすることでは、彼らのビジネスは成り立たなかったわけです。そこでスタイラスです。彼らの今、主力と位置付ける商品では、スマートフォンとタブレットの中間商品、およびタブレット商品で、スタイラスペンを使用する商品を展開しつつあります。

これを見て、あの世でジョブスは間違いなく、嘆いていると思います。

「わざわざ、スタイラスペンを排除し、誰でも直感的に操作できる指での操作を実現したから、この新しい市場が確立したのに。」

こんなセリフが聞こえてきそうです。

私も、同様の経験をしたことがあります。競合企業がコピー商品を販売してくる時に差別化と称して付加してくる機能が、まさにその新しい商品コンセプトと逆行する機能であることは、決して珍しいことではなく、私がこれを経験したときも、嘆きの言葉しか出てきませんでした。「せめて、商品コンセプトくらい、ちゃんと理解してくれよ。」というものです。

しかしながら、全くもって白地のキャンバスに、自由に商品の絵を描く先発企業に対し、後発企業は、先発商品+αの商品を世に出すことが至上命題となるわけですから、おのずと先発企業が、「この機能はこの新しいカテゴリー商品に付加するのはふさわしくない」として切り捨てた機能を、後発として何かの+αをつけなければならないという苦境から、あえて付加せざるを得ない、もっと言うと、後発会社にはそういう要素しか+αとして思いつけないという、まことに苦し紛れの状況に陥っていたりするわけです。

上記は、先発企業がなぜ強いのかという大上段の命題に対しては、おそらくはただの一要因にしかなっていないと思います。しかしながら、個人的な経験もあり、自身ではいやというほど腹に落ちている要因でもあります。

しかし、Apple株、すさまじく上がりましたね。怖いのは、これだけ上がった後でも、また、世界一の時価総額を実現した後でも、株価はまだ割安というところです。これから、株主配当または自社株買いで株主還元されるだろう、10兆円近いオーダーのキャッシュがこの会社にあることを踏まえて考えると、いまだに将来PERで10倍当たりだというのですから、ほんとおそろしい限りです。資本市場の優勝劣敗は本当に容赦のないものです。

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2012年3月 3日 (土)

TD AmeriTradeのiPad用アプリを試す

TD AmeriTradeのHPを見ていたら、この会社のiPad用のアプリがあることに気づき、さっそくAppStoreに行ってダウンロードし、使ってみました。

問題なくログイン出来て、注文を出すところまではしていませんが、それも問題なく出来そうな感じでした。iPadなのでインターネット上の通常のHPからログインして証券口座にアクセスすることもできるのですが、このアプリ経由のやりとりもiPadに最適化されているので、iPadから証券口座にアクセスするときどちらを使うか、迷うところです。

一点気づいたのが、HP経由のときのセキュリティ目的の追加の質問回答入力プロセスが、今のところこのアプリ経由では存在しないようです。これも、将来装備されるかもしれません。

自分が使用しないので国内事情は非常に疎いのですが、銀行や証券等のタブレット対応も着実に進んでいるのでしょうね。以前のエントリーで書いたことがどんどん現実の姿として目の前に現れてきます。

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/ibaccountmanage.html

来週、正式な発表があると予想されているiPad3ですが、事前の下馬評では、レティナディスプレーなのは固そうです。最近、日経新聞のiPad用アプリが出来て、新聞をまるまる持ち出せるようになりましたので、iPad3が販売開始されたら今度は3Gバージョンを購入して、外で思う存分、新聞を読みたいと考えています。視認性の高い9.7インチタブレットと非常に精細なディスプレイ表示のレティナの組み合わせは、このような使い方に完全フィットしそうで、今から楽しみです。

もう紙の新聞はいらない感じです。良い時代に生まれたものです。

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