為替

2008年12月17日 (水)

毎月分配型投信 分配金の減額相次ぐ

16日の日経新聞朝刊の記事です。

//(以下、引用)------------------

分配金を投資家に毎月支払うタイプの投資信託の間で分配金を引き下げる動きが相次いでいる。各国の金融緩和で外国債券などの利回りが低下し、減資となる運用収益が細っているからだ。足元の急速な円高で環境は一段と悪化している。運用各社は分配金を抑制することで資金の流出を食い止め、長期的な安定運用を優先する。

分配金は、運用の成果を投資家に現金で配分するもので、株式でいえば配当に相当する。分配金の支払いを毎月にすることで、定期的な現金収入を求める高齢者など個人投資家の人気を集めてきた。投資信託協会によると毎月分配型投信の純資産残高は11月末で23兆円と公募株式投信の56.8%を占める。

日本より金利の高い外国債券で運用するファンドの人気が高かったが、毎月の利息収入が細り、分配金の余力が低下。ニッセイアセットマネージメントは10月に「高金利国債ファンド」の分配金(1万口当たり)を20円減らし、月60円にした。

純資産が4兆5000億円と国内最大の投信「グローバル・ソブリン・オープン(グロソブ)」(国際投信投資顧問)も格付けの高い先進国の国債などで運用しているが、欧州中央銀行(ECB)の利下げなどを背景に債券からの利息収入が減っている。11月末時点の平均利回りは2.83%と1年前に比べて1ポイント低下。円高で基準価格も6000円台前半と1年前に比べて2割程度低い水準に落ち込んでいる。分配金の形での外部流出を続ければ基準価格が低下する要因にもなる。国際投信は、将来の運用資産を確保するため、分配金の削減を含めて見直しの検討に入った。

//(引用終わり)------------------

以前のエントリーに書いた通りのシナリオが進行中という感じですね。まあ、当たり前ではありますが。ご参考のために、リンクをはっておきます。

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2008/10/post-cbd3.html

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2008年3月15日 (土)

ドル安

ドル安ですね。

1ドル100円を割ってしまいました。

注意しなければいけないのは、これはドル安であって円高ではないということ、すなわち、ドルとドルリンクの通貨が、その他の世界通貨に対して弱くなっているのであって、円がドルとドルリンク通貨以外の通貨に対して強くなっているわけではないということです。

なので、国際分散投資のために米国市場ETFに投資していて、その投資ビークルが全て米ドル建てであるからといって、それら投資ビークルの全てがドル円為替リスクを有しているわけではないことは、当ブログでも何度か書いていますけれど、押さえておかなければならない点だと思います。

このポイントが腑に落ちていない方は、以前書きました以下のブログをご参照いただければと思います。

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_8f8f.html

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_b923.html

米ドル建てビークルであったとしても、米ドルに全く関係の無い国や地域に投資している限りは、「ドル円が100円を割った。どうしよう。」とあわてる必要はさらさらないわけです。

また、株式等のリスクプレミアムが存在するビークルに対する長期の分散投資を行う場合は、そのリスクプレミアムの存在がもたらす長期上昇期待値効果の方が、ゼロサムのぶれである為替の変動よりも、長期的には圧倒的に勝ってしまう結果となるため、このような投資を指向する場合は一般に為替のヘッジなどを想定する必要はないと思います。このポイントについても、以前当ブログで取り上げています。

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_9b79.html

純粋理論的に理想的かつ仮想的な状況を考えれば、外国株の為替リスクをヘッジしようとヘッジしまいと、リターン期待値は同じになります。現実はそのような美しい理論世界でないところが事態を難しくするポイントではあるのですが、1つ明確なことは、株式等リスク資産に正のリスクプレミアムが存在することは、超長期の資本主義の歴史という実証統計で証明されている一方で、為替の1方向のポジションに明確なリスクプレミアムがあることを実証的に証明することは出来ていないはずだということです。すなわち、株式資産投資によって、将来リスクプレミアムが正のリターン期待値として見込まれることは、過去の資本主義の歴史という実証統計で証明されるほど確からしいことであって、その一方で為替のポジションからリスクプレミアムが得られるかどうかは、だれも実証統計で証明しきれないほど怪しいものだと言えるのではと思います。

実際は、為替ポジションをもつには、そのポジション保有期間中に見合った双方の通貨の金利差を清算する必要があります。すなわち、為替の世界では、ゼロサムゲームを前提とした裁定により、ポジションを持つ場合の適正清算額が決められるしくみになっています。要はポジションを建てる時点では、損得はフィフティフィフティ(つまり将来リターン期待値はゼロ)となるように、ポジションを持つ際の条件は定められます。これが、為替は純粋理論的にはゼロサムと呼ばれる理由です。

海外資産投資に、自前で為替ヘッジをかけようとすることは、投資ゲームの中にゼロサム、実際は様々な摩擦(手数料等)が介在するマイナスサムゲームを混入させることを意味することになります。

そのマイナスサムゲームに勝利するには、将来見通しの冴え、あるいはその他の、確実に世の中の平均を大きく上回る、何らかの優位性が必要になります。

その優位性をもたない一般の人間は、為替が怖いからといってヘッジしようとすると、様々なコストを含んだマイナスサムゲームの混入により、確実に長期のリターン期待値は下がります。(ここでは、将来のリターン額が確実に下がると言っているわけではないことにご注意ください。より不利な投資方法を採っていても、極端に運がよければ、結果は期待値を上回ることがあります。宝くじを1回買ったら、資金は期待値としては約半分に減りますが、中には当って億万長者になる人も若干はいるのと本質は同じです。)

純粋理論的には為替はゼロサムですが、実際は日本国家が破綻に窮して、このゼロサム前提が崩れる可能性もあります。どちらかというと、海外資産の為替リスクをヘッジしてしまうと、円通貨とモノの関係に強烈にベットしてしまい、日本国の信用力の低下等により円通貨の購買力が地に落ちてしまうと、それだけで投資の成果は見るも無残なものになるリスクに直面することになります。

外国資産の通貨をヘッジすることは、ある意味、日本国、日本円通貨、言い換えると日本国の信用リスクに対して、一点集中投資をしていることを意味するのかもしれません。「何が本当のリスクなのか」という問いは本当に奥が深く、難しい問いだと思います。

こんな考えで、私は長期国際分散投資を目的として投資した海外資産ビークルに対して、為替ヘッジなど全くしていませんし、将来も全くやるつもりもありません。

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2007年9月 7日 (金)

為替の効率市場仮説

以下は、為替の効率市場仮説というべきか、無裁定原理というべきかよくわかりませんが、いかにも学者チックな、現実には必ずしも成立していない理論世界の論理に対して、どうも整合的に見えない現実の為替の現象について、当方がある掲示板でコメントしたものです。

本来ならば、このブログで書こうと思っていた内容ですが、たまたまある掲示板で議論されていたので、長々と書き込んでしまいました。もともとはDBVというETF(高金利通貨買い低金利通貨売り戦略)が、なぜ市場で長期的に利益が出続けるのか?、理論的には2通貨間の金利差は為替変動で相殺されて、2通貨のリターン期待値は同じになるはずなのに、そうならないのは何故なのかという疑問に対しての仮説提示をしたコメントになっています。

様々な書籍でも、この現象についての記述があり、高金利通貨が弱くなるはずが、過去の統計上では、逆に高金利通貨が強くなっているという長期の統計結果は、確か複数の書籍で記述されていたように記憶しています。

しかしながら、当方が以下で触れるような視点、すなわち、すべからく金融取引ではリスクの交換とそれに見合うと市場が考えるリスクプレミアムのやりとりがなされているのに、為替取引でそれがないというのはいかにも不自然であるように思える点、すなわち為替取引でもリスク交換とリスクプレミアム支払いのやり取りは存在しているのではないかという主張は、不勉強かもしれませんが、今までどこでも見つけたことがありません。

実際に、公社債市場では、デフォルトリスクの超長期の実際損失コスト統計結果と、そのデフォルトリスクテイクに伴いリスクテイカーが得る信用リスクスプレッドには、確か5倍から10倍程度の開きがあったと記憶しています。この世の中は、リスクアバースな世の中になっており、リスクを回避したければ、想定されるリスクがもたらす想定コスト期待値の5~10倍のリスクプレミアムをリスクテイカーに支払うことなしには、信用リスクを回避することができないのがこの世の中です。だからこそ、公社債にしろ、株式にしろ伝統的な資産のリスクを長期的にテイクし続ける者は、圧倒的な高確率で多額の無リスク資産超過リターンを手にすることになります。

為替取引においてのみ、そのようなリスクの移転とリスクプレミアムのやりとりがなく、学者が考えるような理想世界の取引になっているというのは、まことに不自然きわまりないと思うのです。

それでは、以下に掲示板に記した当方コメントを転載します。

//(以下転載)----------------------------------------------

以下はただの妄想、たわごとの類です。

もし、世界の基軸通貨(例えばアメリカUSD)と、世界のどこかの僻地の国で毎年財政は大赤字で、いつ国が革命や変乱等で消滅するかわからない状態で、かつ流通性が著しく劣っている通貨を取引するとしたらどうでしょう。

もしかしたら、USDを売って後者の国の通貨を買ってしまったら、明日デフォルトして、その通貨は紙切れになってしまうかもしれません。

この取引で、信用度の著しく低い通貨を売ってUSDを買う側と、USDを売って信用度の著しく低い国の通貨を買う側のリスクが同じとはとても思えません。

後者の人すなわち、世界で一番安全かもしれない通貨をわざわざ手放して、リスク満載の通貨を保有しなければならなくなる側は、より高いリスクを負う状態になる取引をすることに対して、その取引中で十分な見返りを求めたくなるのではないでしょうか?

すなわち、
  高金利通貨金利-低金利通貨金利≒将来為替変動期待値
ではなく、
  高金利通貨金利-低金利通貨金利≒将来為替変動期待値+(取引中のリスク大取引サイドのリスクプレミアム)

が成立しているのではないでしょうか。

すなわち、高金利通貨は一般に高リスク通貨であることが多く、より高いリスクのある通貨を長い間持つことの見返りが、取引中にリスクプレミアムとして内在されており、高金利通貨買い低金利通貨売りポジションを長い間維持すると、このリスクプレミアムが実現して、利益が発生するのではないかと疑います。

これは、株式を売る人がその株式を買い取る人に対し、確率的に将来、その株式が無リスクリターン超過スプレッドを実現させるであろう安い価格で売り渡さざるを得ないことと似ています。リスク満載の通貨からとてつもなく安全な通貨に乗り換えるには、相手側にその安全に見合った安全料を払う必要が発生するのではないでしょうか。

コーポレートボンド(公社債)でも、リスクを負う側が得る信用リスクプレミアムは、たいていその負うリスクがもたらす歴史的、統計的な実際平均損失幅の何倍ものスプレッドになっています。なので、そういった伝統的危険資産を長期的に保有し続けると、必然的に無リスクビークルリターンを明確に上回るリターン結果となるわけです。

デフォルトリスクは時間に比例しますので、通貨を持つ長さにかかわらず、この相対通貨信用度の差がもたらす信用リスクネットスプレッドは(もし存在しているとすれば)%あるいはbps(0.01%)単位で、表されることになるのではないかと思います。

とてもこれだけで説明できるとは思えませんし、正しいかどうかもさっぱりわかりませんが、もしかしたら高金利通貨買い低金利通貨売りで過去、長期的に利益が出てきた要因の1つくらいにはなっているかもしれません。

なお、DBVは高金利通貨買い低金利通貨売りのポジションを原則としてレバレッジ2倍で持ち続ける戦略のようです。(既出かもしれませんが念のため)

ちなみに、インフレ連動債の金利構造はざっくりいってこんな感じになっています。

インフレ連動債トータルリターン≒インフレ率ゼロの場合の当該債券利回り+インフレ連動債調整超過インフレリターン

すなわち、金利=期待インフレ率ではなく、金利=消費を先送りすることに対する超過プレミアム+期待インフレ率(正確にはインフレリスクプレミアム)となっています。

人はインフレ率ゼロの場合にも、将来まで消費を我慢することに対して見返りを求めるようで、米国のインフレ連動債ではこの消費先送りの見返りプレミアムは歴史的に1~3%程度で推移しているようです。しかしながら、もし上の理屈が正しければ、この1~3%程度の消費我慢プレミアムの中に、実は通貨に内在する絶対信用リスクプレミアムが含まれているのかもしれません。

//(転載終わり)---------------------------------------------

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2007年7月27日 (金)

今夜のUS市場は?

前日のUS市場、アジア市場、為替と大荒れですね。

ヨーロッパ市場も、なかなかすっきりせず、低迷しているようです。

さて、今夜のNYの天候は?あいかわらず暴風雨ですかね。

個人的には、急落に備えて投資資金を取っておくといったことは基本的にしないタイプなので、特段投資資金があるわけもなく、やることもないです。

http://finance.yahoo.com/charts#chart11:symbol=eem;range=20060724,20070726;compare=fxi;indicator=volume;charttype=line;crosshair=on;logscale=on;source=undefined

急落に備えて投資可能資金を取っておくことをしなくなったのは、このような軌跡を描く投資対象が多く、資金を取っておくと得られるべきゲインを失うという経験を結構したせいです。

ということで、興味があれば今夜のUS市場を見るかもしれませんが、眠くなればさっさと寝ちゃうかも。

こんな気楽な投資態度でいることができるのは、超長期の投資だけかもしれませんね。投資方法や考え方によっては、今はまさに、神経をすり減らし、胃をキリキリさせる状況なのかもしれません。

投資を成功裏に終わらせるためには、それを妨害する可能性の最も高い、自分自身の感情をマネージメントする必要があると思います。超長期の投資を指向しながら、このような場面で逃げたくなったり、リスク資産を処分したくなるようだと、ポートフォリオのボラティリティレベルか、心の持ち方、あるいは投資手法といった何かを見直すべきというサインかもしれません。

暴落時にものどかな気持ちでいることが可能な、長期国際分散投資のこういった利点を最大限満喫するために、ポートフォリオのリスクレベルと投資に対する考え方といったような部分を、ご自身に100%最適化されるのがよいと思います。

それでは、おやすみなさい。

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2007年7月20日 (金)

弱いドル

海の向こうにも、自国通貨の弱さに直面している国があります。

アメリカ人にとって、他の先進国通貨を持つと言うことそれ自体が、魅力的なリターンを得る手段となり得ます。どこかの国とそっくりです。

http://etf.seekingalpha.com/article/41597

他のエントリーのコメントでも書きましたが、USDは直近06/10~07/07までの期間で、3通貨を除いた世界中の通貨に対して弱くなっています。(週刊東洋経済7/21より)なので、リンク記事のように、他国通貨ETFへの直近の投資リターンがとても高くなっているわけです。

記事で例示された通貨のほかにも、オーストラリアドルやスイスフランといった通貨ETFに投資することが、米国市場では既に可能です。(日本円通貨のETFもあったりしますが、あまり意味は無いでしょう。USDより弱い、数少ない通貨の1つですので。)

国際債券ETFがSECfiling中であることも、とても頷ける話です。このままの流れが続けば、強烈なホームバイアスを有するアメリカ国民の間でも海外投資やFXが流行ったりするかもしれませんね。

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2007年7月15日 (日)

進む円安

本日は、円安関連で参考となるブログを紹介いたします。

http://mental-invest.seesaa.net/article/47731290.html

何だか、見事に現在の円安の構造の一面を言い表しているようにも思えます。こういったブログを読むと、あらためて、矢口新氏の名言「トレンドを作るのは投機資金ではあり得ない。」を思い出します。取ったポジションを短期的にクローズする短期投機家の市場に与える影響はゼロスクエアだからです。US$除く世界通貨に対し、6~7年も円安が続いているということは、円を売って外貨を買ったまま帰ってこない資金勢力が次から次へと現れて、その一大勢力が為替を一方向にずっと押し続けているのではないかということが疑われます。

こういった資金勢力は、安定した年金代わりの配当が欲しい団塊以降の世代がいる以上、容易には消えてなくならないのではないかと思えます。

通貨の購買力平価等の理論、理屈を頭から信奉して疑わない人は、6~7年続いている、このとてつもないフォローウインドを取り逃してしまうわけです。つくづく、相場や市場といったものは難しいものだと思います。

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2007年7月10日 (火)

為替市場の不思議

相変わらず、世界各国通貨に対する円安と、円建ての海外株式の信じられないほどの高パフォーマンスが続いていますね。

インドやカナダなんかがとてもよくこの現象を象徴しています。

http://finance.yahoo.com/charts#chart3:symbol=^bsesn;range=20070102,20070709;compare=inp;indicator=volume;charttype=line;crosshair=on;logscale=on;source=undefined

http://finance.yahoo.com/charts#chart2:symbol=^gsptse;range=20070102,20070709;compare=ewc;indicator=volume;charttype=line;crosshair=on;logscale=on;source=undefined

円建ての比較グラフを作るのが難しいので、それぞれドル建てのグラフになっていますが、それでも、現地通貨では対して高パフォーマンスというわけではないのに、ドル建てでは、高パフォーマンスになっています。すなわち、円建てであれば、このグラフよりも、もっと高パフォーマンスとなっているわけです。(今年は、円はUSドルに対しても円安になっています。)

国際分散投資を行っている人にとっては、まさにホクホクな状況ではあるのですが、果たしていつまでこんな状況が続くのか、日本国民としては不安になります。

言い換えると、今の円安がどこまで行ってしまうのか、日本国はこのまま斜陽化してしまうのかという不安です。

今の円安は行きすぎで、いずれ大きく円高へのゆり戻しがあるという意見もあると思いますが、昔、私が血縁者に「もう円のUS除く海外通貨に対する円安は5年以上も続いている。頼むから、資産ポートフォリオに外貨を入れてくれ。」と頼んだときから、もう1年半くらいは経ったはずです。いったい、いつ、そんな時が来るのでしょうか?

円の金利は世界通貨で最低であるほど低いので、高金利通貨に流れており、それで円安になるのだという、ある意味単純な主張があります。果たして、事態はそれほど単純なのでしょうか?

通常、国の信用力が低ければ低いほど、高い金利を払わなければならないはずです。それは、発展途上国の金利を見れば一目瞭然だと思います。では、日本の国家としての信用力は、世界一なのでしょうか?どうも、そうは思えません。日本政府のとてつもない大借金状態は変わらず、またプライマリーバランスもマイナスで、今もなお、事態は悪化し続けているようです。国の抜群の信用力による超低金利というわけではなさそうです。

では、低金利は不景気が原因でしょうか?確か、今は戦後最長の好景気の渦中ではなかったのでしょうか。そもそも、不景気で政策金利である短期金利は低くできても、10年国債等の長期金利は、国の信用力が低ければ、その高騰が免れないはずです。

もしかすると、国の需要不足が原因でしょうか?世界に誇る少子高齢化の国ですし、もうモノ不足の国でもないですから、モノへの需要が小さく、相対的にモノに対する円通貨の需要が大きく、構造的にインフレが進みにくい国の体質になっているのでしょうか?

そういえば、車の国内販売も、ずいぶん低迷しているようです。

米国も、ユーロも、イギリスも、カナダも、世界中であちこち利上げが行われているようですが、おそらく日本は、今のところ、インフレが進まず、金利を上げなくても実質金利がマイナスにならない、数少ない国なのではないでしょうか?

純粋理論的には、金利裁定を仮定しても、購買力平価を仮定しても、円安ではなく、円高に向かうべきであるように思えたりするのですが、実際はとてつもない円安に進み続けています。

ファンダメンタルからいって、円はどちらに向かうべきなのでしょうか?

以前、ご紹介した「日本経済のリスクプレミアム」という本では、相対購買力平価説に基づく長期分析では、なんと足元が円高すぎるという結論で、ファンダメンタルからいうと、さらなる円安への動きが妥当という、ある意味、びっくりする結論でした。

与六さんが以前ご紹介された記事でも、モデルによって円が割安であったり、割高という結論だったりして、理論的な正解が一方を指し示す形になっていないという結論になっていたようです。おそらく、学者を含む世界中の誰もが、確信をもって今の円が割高か割安かを証明することなどできないというのが、まぎれもない真実なのかもしれません。

http://yoroku.blogspot.com/2007/06/blog-post_23.html

学者が想定する、マーケットは合理的投資家で成っており、非合理な歪みは、瞬時に裁定されて本源的価値に収束するという美しい仮定は、為替市場においては、そもそも円が割安なのか割高なのか、誰一人正解を知るものがいないという、まことに情けない実態により、そもそも否定されかねない前提であるわけです。

もともと、その程度のまことに怪しい本源的価値であって、かつその本源的価値も日々変動し、どちらかの方向に動き続けているかもしれないとあっては、為替市場に対して、ファンダメンタルの立場から、どちらか一方向への方向の先にフェアバリューがあるという結論を持つこと自体が、まことに困難なことかもしれません。

ひとつ言えるのが、各国でそれぞれ存在する、強烈なホームバイアスによって、各国間の金利と為替においても、フェアな裁定が働いてはいないのではということが疑われます。

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/07/post_3a2a.html

この記事においても、各国の企業年金で軒並み極端に思えるほど自国資産を保有する行動が見られます。また日本国債の殆どが日本国民に保有されていることを見ても、日本国の信用力が、他国と十分裁定された上で、その国債金利水準が定まっているとはとても思えません。

大前研一氏によれば、日本人の資産保有行動は、全くもって非合理的とのことです。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/column/a/86/

たしかに、冒頭のように、他国に投資するだけで円安に背中を押してもらってとてつもなく儲かる現状で、日本国資産だけに固執するのは、合理的な投資行動には見えません。

それでも足元では、日本人の外国資産への投資(含むFX)は、どんどん加速してきているように思えます。今でも個人金融資産に占める外国資産の割合は3%とか、そういった水準だったように記憶しています。日本人の投資行動が、強烈に非合理的なホームバイアス満載の状況にあって、それでも、合理的となる方向へ資産が動いているのが今の状況だとすれば、この方向への動きは、何十年もかけて今後も継続していくのかもしれません。

イギリスの企業年金の自国資産への投資割合が60%程度であって、その他の先進国の80~90%超といったクレイジーな水準とは明確に一線を画しているのは、もしかするとただの偶然ではないかもしれません。過去、ホームバイアスによって、自国の斜陽化が進む中、強烈なポンド安と他国の発展による果実を取り損ねてきたという経験を積み重ねてきた国であるからこそ、そのホームバイアスの度合いが、先進各国中で一番ひどくないのかもしれないと、ふと考えます。

錯覚であるのかもしれませんが、日本人のホームバイアス、極端な少子高齢化、極端な低金利と、恒常的に進む異常な円安とが、互いに深い関係を持っているように思えてなりません。そして、そのホームバイアスは少しずつではあっても、確実に解消の方向に事態が進んでいるように見えることから、日本の低金利は長い目でみて解消していき、また異常に見える円安はさらにその加速度を増していくのかもしれません。

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2007年7月 9日 (月)

海外証券口座の為替リスク(その2)

以前の表題のエントリーに対して、ひいさんから以下のようなご質問をいただきました。

「海外投資における為替リスクがよくわかりません。自分で具体的な数字を当てはめて計算してみたりしたのですが、たとえば例題1の場合、なぜ円対中国元の為替リスクが存在し、円対ドルの為替リスクが存在しないのか、理解できないでいます。
もしよろしければ、具体的な数字で仕組みを説明していただけないでしょうか?」

http://max999.cocolog-nifty.com/blog/2007/04/post_8f8f.html

ということで、リクエストにお応えして、実際の数字で、このエントリーが示すことを表現して見ようと思います。

ただし、中国元のレートはちょっと個人的に把握していないので、以前のエントリー例1をちょっと変更して、以下の例1ダッシュを実際に数値で計算しようと思います。

1’.米国証券口座を開設し、円をドルに換えて送金。そのドル資金でドル建てのイギリス株式ETFを購入。この投資にドル円の為替リスクは存在する?

直近の関係する為替レートは以下の通りでした。

1USドル=123.31円

1イギリスポンド=247.89円

1イギリスポンド=2.010300USドル

ここで、3番目のドルポンド為替レートは1番目と2番目のレートからも算出できます。すなわち、

247.89/123.31=2.010299

となります。

まず、日本円で100万円をUSドルに換えて米国証券口座に送金します。

米国証券口座残高=100万円/123.31=8109.642ドル

このUSドルで、その時点で100の株価がついているイギリス株式のETFを買うこととします。すると81.09642株買えます。

ここで円USドル相場が変わるとします。1USドル=130円と大幅に円安になったものとします。もし、ここで円ポンド相場が変わらないとすると、為替レートは以下のようになります。

1USドル=130円

1イギリスポンド=247.89円

1イギリスポンド=1.906846USドル(=247.89/130)

イギリス株式市場が全く変化がないとすれば、ドル建てのイギリス株式ETFの価格は以下のように変化します。

以前のイギリス株式ETFの価格×(現在の1イギリスポンドのUSドル換算値)/(以前の1イギリスポンドのUSドル換算値)

=100×1.906846/2.010300

=94.8538

なので、USドル建ての米国証券口座資産は、イギリスETFの株価×株数で、

94.8538×81.09642=7692.304USドル

となります。最後に、このUSドル建て資産を円換算してみましょう。

7692.304USドル×130円=1,000,000円

ということで、当初の円投資金額の100万円となりました。

円ポンドレートとイギリス株式市場の変動がない限り、円ドル為替がどう変動しようとも、イギリス株ETFの円資産価値に変動がないことがこの例でわかります。

要は、円ポンドレートが変化ない状況で、円ドルレートが動いたということは、ドルポンドレートも動いたということです。上記の例では、円ポンドレートが動かないが、1ドル=130円とドル高円安となっています。すなわち、円ポンドレートが変わらないのですから、3通貨のうち、USドルだけが強くなり、ドル高円安、ドル高ポンド安が起こったことになります。

例えば、円をのびたくん、USドルをジャイアン、イギリスポンドをスネ夫とすると、もし、ジャイアンが鉄アレイで腕を鍛え、より強くなったとします。すると、ジャイアンはのびたよりさらに強くなり、またスネ夫よりもさらに強くなります。でも、いくらジャイアンが鍛えて強くなろうとも、のびたとスネ夫の力関係は、それだけではなんら変わりません。

なので、のびたからすれば、スネ夫の力が相対的に強くなったのか弱くなったのかを把握するには、直接スネ夫と自分の力を比べればそれでOKなのです。スネ夫とのびたの相対的な力関係に変化がないならば、相変わらずスネ夫とのけんかに勝てる可能性は以前と変わらないはずなのです。

のびたがスネ夫とのけんかに勝てる可能性を把握するのに、スネ夫と自分との力関係の変化を見れば十分で、ジャイアンの強さの変化が関係ないように、イギリス株式に投資した成果が円ベースでどうなっているか把握するには、円ポンドレートとポンドベースの英国株式市場の2つの動きを見ていれば十分で、円ドルレートは関係ないわけです。

こんな感じですが、いかがでしょうか。

ご理解の参考になりましたら、幸いです。

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2007年6月23日 (土)

為替に関する雑感

相変わらず、順調に世界通貨に関する円安が続いていますが、為替と世界株式市場の動きの連動の仕方が変わってきたように思いませんか?

2月末から、ずっと、

上海やUS市場の下落⇒円高

という連動の仕方を続けていましたが、昨日今日は、逆に、

上海やUS市場の下落⇒円安

という、最近にない動きをし始めているように思います。

単なる思い込みではありますが、世界通貨に対する円安現象に対する市場の解釈が変わってきたのではという気がします。

今までは、

世界株安⇒リスクテイク余力の収縮⇒キャリートレードの解消⇒円高

というストーリーを、市場は連想し続けていたように思います。なので、世界株式市場の下落と短期的な円高揺り戻しが幾度と無く同時に起こってきたと解釈しています。

しかしながら、最近では、大前研一氏も確か金融雑誌で、日本の国力の低下と円安についての記事を書いていたように思います。どんどん、世界通貨に対する恒常的円安傾向と日本の国力の低下の関係についての指摘を行う方が増えてきています。

矢口新氏ではないですが、短期投機資金には長期相場のトレンドは作れないのが、金融市場の力学でしょう。買ったものは売って、売ったものは買って早晩、ポジションクローズする必要があるからです。その一連の投資行動が市場に与える影響はゼロスクエアのはずです。

為替市場で、米ドル除く世界通貨に対して円安がもう6~7年も一貫して進んでいるということは、おそらく円⇒米ドル除く世界通貨(あるいは円⇒米ドル⇒米ドル除く世界通貨)という、一方向で反対売買されない資金のネット移動が恒常的にプラスであり続けていると解釈すべきだと思います。

例えば楽天証券や米国証券口座で、ETFのEFAに長期投資する資金が流入し続けることも、円⇒米ドル除く世界通貨への反対売買されない一方向の資金移動であって、これも間違いなく米ドル除く世界通貨に対する長期的円安の原因となると思います。

市場がこういった本質的な解釈をし始めると、ある意味短絡的な、

上海やUS市場の下落⇒円高

という、最近よく起こってきた特定の現象は、徐々に起こりにくくなってくるのではないかと思います。

「市場の長期的トレンドを作り出すのは、投機的資金ではあり得ない」のであって、「投機的資金はいわば市場の潤滑油でしかない」ことはおそらく真理なのだろうと思います。市場がそれに気づき、長期的な円安にはおそらく、それを生み出す根源的な理由があるのだという認識に至れば、このトレンドはより強化されていくのではなかろうかと考え、またそれを危惧します。

ここ数日の為替と株式市場の動きを見ながら、こんなふうにつらつらと考えをめぐらしています。

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2007年6月 2日 (土)

為替の懸念

為替がまた円安方向に放れはじめたような気がします。

http://quote.yahoo.co.jp/m3?u

ドル円が122円、ユーロ円が164円に乗りました。

また、いつのまにか、豪ドル円の100円超、ポンド円の240円超が定着しつつあります。

このブログで何度も触れている話題ではありますが、ブログの世界でも同じ懸念を表明される方が見受けられるようになってきました。

http://blog.goo.ne.jp/takekurabe/e/db4b0f0defa3a4e234800c689b393454

このような懸念が、単に思い過ごしであればよいのですが。私はとてもそうは思えず、ずっと前から身内の人間には、資産ポートフォリオに外貨エクスポージャーを必ず入れて、このリスクをヘッジしてくれとお願いし続けています。

http://www.shinseibank.com/fx_info/fx_sisanhozen_02.html#005

このような20世紀の英国ポンドの経験が、円で繰り返されなければよいのですが。

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